伝統的木造建築の構造特性と計画

伝統構法の構造特性と計画に関して判明していることを 記載します。

 

伝統構法による建築物の水平加力実験結果から、伝統構法は、耐力が小さく大きな地震に対しては強度が不足することがわかってきています。「伝統的な建物は柔構造で剛構造の現代構法とは違う」という意見があります。しかしながら、伝統構法すべてが、柔構造ではないです。例えば土壁は必ずしも変形能力が大きいわけではないです。実験で判明していることですが、比較的変形が小さいうちに強度が低下し、大変形時には自重が大きいので脱落しやすくなります。土壁の構造は柔構造とはいえません。

 

伝統構法の特徴

伝統構法の特徴は、大変形領域での靭性にあります。大変形領域でも強度が落ちないことが最大の特徴です。

 

耐震要素

差鴨居 貫などの軸組要素 土壁や板壁等の壁要素 継手仕口等の接合部 礎石版築等の基礎 地盤の構法 石場建て等柱脚の納まり

 

伝統的建築物の自重と必要耐力

伝統的な建物は、一般の木造建築物よりも、自重が大きくなる可能性があります。阪神大震災においては、土壁や、土葺き瓦屋根の建物が多く倒壊しました。設計においては、そうした建物の重さを考慮して、必要耐力 壁量を十分に確保しなければならないです。

 

・土壁と貫

貫の段数は、関西では2,3段、関東では5段が通常であります。貫で構造をもたせようという考えでは施工されていない実例も多く存在するようで、構造的に有効な貫かそうでない貫かを選別する必要があります。土壁の荷重変形曲線は、初期の剛性は高いが、大変形になると強度は急激に低下します。一般的に、伝統構法は粘り強いといわれていますが、必ずしもそういうわけではないです。逆に板壁は、初期剛性は小さいが徐々に強度が増し、大変形領域でも強度は落ちません。

 

・小壁と柱の損傷

小壁の脇の柱が折れる例が多く存在した。土壁の強さと周辺軸組材の強さには適度なバランスが必要です。壁の強度があがっている今日では、柱の径が重要性を増してきています。柱には、傾斜復元力があり、建物の変形をもとに戻す働きがあります。

 

・水平構面

伝統建物では、水平構面の強度や剛性はほとんど意識されてこなかったといってよいでしょう。負担面積に応じて柱を配置しているので、柔床で負担面積に応じて壁や柱が配置されていたということでしょう。平屋では、それほど問題がないのですが、2階建てとなると水平構面の重要性は大きくなります。水平構面と鉛直構面は、力学的には向きが変わっただけであるため、水平構面も重要な要素であると認識したい。

 

・接合部

建物が倒壊するときのきっかけは接合部のはずれ、おれと考えられる。金物は緩んでしまうので意味がないという意見もあるが、建物が大変形して接合部が外れかかっているときには、金物は有効に働きます。接合部が相当の大変形まで外れず、せん断力を負担できなければ、伝統構法は成り立ちません。

 

・伝統構法と限界耐力計算

2000年以降、伝統構法は、限界耐力計算で建てられてきました。まだ設計手法は確立されていませんが、柱脚を固定するもしくは、固定せずとも、設計が可能となっています。限界耐力計算の損傷限界、安全限界の基準値を検討しながら、構造計算を行っていくのが通常ではあるが、層間変形角1/120を上回って1/60程度で設定することも検証されているようですが、基本的には1/120以内に収めることが損傷限界状態における変形の定石であるようです。

 

 

 

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