古民家再生の意義と手法

当方の会社は、建築設計 工事監理を 事業の主体としていますが、昨今、古民家の再生を数多く行ってきておりますので
その意義と手法を記載していきます。

 

■民家再生の意義

日本の民家は地域に根差した暮らしの知恵と、地球環境に優しい木の文化を持ち、また美しい景観をかたちづくっています。民家は日本の住文化の結晶であり、一度失われたら再び取り戻すことはできません。民家を今日の暮らしにあうように再生し、人が住み続けることにより次代に引き継いでいく必要性があるように思われます。

素材の特性を活かしながら緻密に組み立てられた技術と美しさは世界に誇る建築文化であります。民家は日本の自然とともに魅力ある街並みや農村風景を作り、地域固有の自然と共生する文化を作り上げています。 民家は森に育った木を使い、一度使用した木材は繰り返し次の家の材料として再使用が可能であり、最後は土に返りまた次の森を育てる。民家では、ほとんどの材料が同じような自然素材で構成されています。また伝統建築は解体が容易な仕組みになっており、モデュールをもつ構成は軸組のほか、建具や畳などの部材まで転用が可能なものになっているという極めて現代的な構法といえます。

■失われていく民家
民家は、現在どんどん壊されていくという深刻な状況にあります。要因として、主なものは4つあげられます。

① 過疎化、少子高齢化、地域経済の衰退という社会的な問題があげられます。過疎化はこれからさらに深刻化するといわれています。後をついで住む人もいなくなり、荒れるに任せた民家は山村のいたるところにみられます。
② 農山村では、大きな家に何世代もの家族がすむということが少なくなり世帯構成の変化、農業や伝統産業が営まれにくくなってきているという産業構造の変化に民家の規模や形式が合わなくなってきている。
③ 民家は、現代生活の機能的要求や耐震性、防火性能、その他の基準など社会的要求に適応できていない。古い、暗い、寒い、不便という問題は、地方で民家に住み続けようという若い世代、高齢者にとぅても不便なものである。最近の頻発する地震被害により、古い家に住み続けることに不安を感じている人は少なくないと思います。民家を維持するためには耐震性の問題を解決することが不可欠の課題となっています。
④ 建築の産業構造の変化により、伝統的構法による民家再生を実現する人材と技術 生産システムが心補足なっていることも要因として挙げられます。

これらの要因を踏まえながらも、耐震性や機能的な面を現代的な技術で解決し、その土地特有の技術や素材を使用した民家を再生していくこと、また再生後も、現在の情報技術の発展を利用して、その土地と気候風土から生まれた古民家と地域の魅力をアピールしていくことは、とても意義のある仕事だと考えています。

設計手法としては、
① 間取りやデザインなど現代の生活形態に対応した民家再生の計画手法
② 温熱環境、水廻り等の現代の生活機能の要求に応える手法
③ 耐震、防火 その他の基準など社会的要求に応える技術
④ 伝統技術の継承と現代の民家再生技術
⑤ 素材、材料と構法

■調査
調査には、「基本調査」と「詳細調査」が存在する。再生の可能性を見極め、基本設計に必要な情報を得るために行う調査を基本調査という。実施を前提として実施設計のための詳細情報をえるために行うものを詳細調査という。調査はそれなりに手間のかかる作業であり、契約を行って始めることが必要である。
再生では、所有者の要求を実現するうえで、現状の建物の構成や架構の状態を把握することが主要な目的となる。古い建物では、腐朽や耐震性などに問題を抱えているものが多く、再生は、今後長くその建物を使うとすれば、現状の建物の問題点を把握しておくことが大事である。老朽化や耐震性を解決することが主たる目的となることも少なくない。

■基本設計
基本設計では、利用する民家、敷地、建築基準法などの条件を踏まえ、空間、機能、予算などの建築主の要望をまとめる。設計概要書、平面図、立面図、断面図などを作成する。ここで実施への方針を固める。実施設計に移り、手戻りを少なくすることが重要である。古民家再生では、機能改善など、建築主の要望のほか、建物の状態など、個々の条件で大きく異なってくる。予算的な制約も少なくない。使い方に対する要望と建築として維持するうえで必要なことをどう扱うかがポイントとなる。腐朽部分の対策や耐震補強などの目に見えない部分の改修も住み続けるためには重要な課題である。色々な制約条件の中で優先順位をつけ、どこまで改修するのかといった調整を建築主と十分に行い、方針を決定することが基本設計段階でのポイントとなる。基本方針を決定するうえでは、予算が大きな要素となる。移築再生はおよその目安はつくが、現地再生のコストは実際に見積もらないとわからない場合が多い。方針決定前に、見積もりをとり、検討することも必要である。

■実施設計
基本設計の確定後、詳細設計を行い実施設計に入る。この段階では、各部詳細設計のほか構造設計 設備設計を行う。実施設計においてもコスト計画は重要な要素である。予算と大きく乖離していては建築主の要求に応えているとは言えない。設計者はコストに関する知識を持ち設計することが求められる。

■解体
解体は、使用する部材と不要な部材を決定するために原則的には詳細設計が完了してから行うことが望ましい。しかしながら、待てない場合でも、詳細調査は行っておきたい。調査図面の作成と材料の見極め、番つけなど。

■施工
現地再生では、現状の民家の特質を損なわない施工方法に留意する。施工期間は、再生の程度により工期には大きな幅がある。施工で大事なことは、設計図書の意図を正しく実現すること、品質の確保、工期の遵守、コスト管理である。民家の再生が、昔のように完成時期や費用もできるまでわからないというようなものでは、安心して頼みにくい。伝統工法には、標準仕様書なるものはなく、個人の力量におうところが大きい。品質確保の上から伝統と現代の技術 双方をよく理解し、正しく施工する意識が求められる。
工事は、部材のくせや特徴を見極めながらの手仕事や仕口加工があり、また既製品を使う部分も少ないため時間がかかるなど、新築工事に比べると工期が長くなる要素が強い。

■工事監理
工事監理は、設計した内容が正しく施工されるような専門技術者として建築主を代行して工事の確認を行う業務である。古材を扱う古民家再生では 現場での判断が多くなり、、工事監理は重大な業務である。工事監理者は、建築主に状況を報告し、変更が生じた場合などは必要な内容に関して決定を仰ぐ。施工に伴う詳細の納まり、材料の最終決定などもこの段階で行われる。大きな設計変更は、確認申請が必要になることもあり注意が必要である。つづく

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