とらや京都 鳩居堂 鹿猿狐ビルディング 内藤廣建築見学

兵庫県建築士会神戸支部にて、4月に建築家 内藤廣講演会を企画しているため、士会の皆さんと

内藤廣先生の建築の見学をしてまいりました。

 

■虎屋菓寮 京都一条店

室町時代から続く 有名な 羊羹の虎屋の茶寮です。屋根型は単純な切妻屋根ですが、外観には素材にこだわり味わいがありました。アプローチも引き込まれるようなアプローチです。

内藤さんの外観のスケッチだそうです。前川国男設計の熊本県立美術館を思い出しました。

・切妻屋根の棟部分にトップライトが存在し、庇部分もガラスで作られています。

・屋根にはいぶし瓦を用い、外壁にはレッドウッド材を採用することで、控えめながら存在感のある外観になっています。

・アイストップとなる外壁には、2種類の大きさのタイルをランダムにはることで、柔らかな印象となっています。

・入り口から東側をみた写真です。水盤とウッドデッキが敷いてあり、内外を緩くつないでいます。

・屋根の庇がしっかりとでているため、先端で2000mmとなります。庇は木の格子天井のようになっています。

もともとは待合場所としていたところを、コロナ禍で、室内の延長のような空間にしたとのことでした。

北側の外観です。こちらもウッドデッキが敷かれ庭をみれる設計となっています。この建物の主役は庭のようです。井戸水を水盤として取り込んでいました。

 

実際に座ってみると、とても居心地の良い空間になっていました。

・中央部の天井高さは3900mm。庇部分は2000mmのため、ゆったりとした木の勾配天井が、人を包むように設計されています。

・室内開口部は、大きく外部をみる障害物もないため、内外に流動する空間が設計されています。

・妻側の鉄筋コンクリート壁に水平力をすべて負担させて、その間を鉄骨(南北7200mmのスパン)とスギ集成材を組み合わせた架構で屋根を支え、壁のないつくりとなっています。庭を眺める空間は可能な限り軽快につくられており、柱も視覚的に最小限になっています。スパンを飛ばすための鉄骨、空間を柔らかく包むための木というハイブリッド構造です。風が吹き抜けるような空間、それでいて、人を包み込むような空間になっています。

・庇を片持ち梁で大きく張り出し、軒先を可能な限り低く構え、軒の下に庭の空気を引き入れる中間領域がもうけられています。抜けを意識しながら可能な限り軽快につくられています。

こちらは北側から南側をみています。水や光が庇天井に反射しており、とても気持ちが良い空間となっていました。

・屋根25×75mm角の登梁@450mmと水平ブレースで構成された鉄骨と幅85×65mmの断面を持つ吉野杉の集成材(@150)を複合した小屋組みとなっていました。水平力は妻側のコンクリート壁で負担し、鉛直力は柱で負担している。主構造は鉄骨で構成し、集成材は3m以上はねだした軒を持つ屋根の変形を制御する二次的な構造材としておおうことで可能な限り繊細な部材による架構となっています。

 

上部天井は天井裏でつられているのですが、建具の枠との間に隙間ができるためアクリル板で波打つ隙間をうめていました。ガラスではこの加工はとても難しいと思われます。

柱も細いです。ギリギリまで技術的なことを検証していることがわかります。

 

ドアノブも味がありました。

 

 

 

裏方のサービスヤード周辺ですが、外壁は木材で仕上げ長い年月で傷んではおりましたが、味わい深いものがありました。

軒裏はコンクリートですが、型枠の木の表現がでていました。

技術的なことをギリギリまで検証して、なおかつ、空間の居心地の良さを追い求めた設計でした。とても濃密な空間で贅沢な建築でした。

■鳩居堂

最近の内藤さんの作品。京都市内の商店街の通りを挟んで店舗が存在しています。江戸時代からの香と和文具の鳩居堂というお店の建て替えです。むくりのついた瓦屋根で、一見木造のように思われますが、鉄骨造で作られています。

夜間は、この格子のシャッターで閉じるようです。

 

傘立ても凝っていました。

木造では、防火の兼ね合いと大空間ができないため、鉄骨造ということになりました。二階部分は柱が存在していますが、張弦材にて構造設計されていました。柔らかなむくりをもつ切妻屋根の広がりある空間をどのように緩やかにつくれるかが重要のようです。

・必要最低限の耐火構造体を作ったうえで十分な屋根性能を確保するために補剛材を加えています。第二店舗は、非対称な切妻形状であり、棟梁を支柱でささえています。背面の鉄筋コンクリート造のブロックに水平力が集中します。屋根架構についてはむくり屋根形状に対応して下凸の引張材を組み合わせ、繊細な弦材を細かく分散して配置しています。

ここでもぎりぎりまで、技術的なことを追求していく設計姿勢がうかがえます。

二階分は、お香の教室に使ったりされているそうです。壁天井の木ルーバーの間では吸音をしているようです。

ここでご当主のお話をききましたが、虎屋をみて、ネットから内藤さんに設計の依頼をされたそうです。

床と天井のラインがうまく揃うように設計されています。

車が商店街の通りに侵入した場合に、お店側に突入することがあるらしいので、その止めとして、設置したとのことです。石の素材も床と同じものにしていました。

商店街の通りを挟んで反対側の店舗です。

こちらは2棟からなり、西側の二階建ては、一階がお香の和室で二階が打合せ部屋とのことでした。

東側が店舗です。トップライトが存在しているのがわかります。屋根もむくりが存在しています。

塀で囲まれた部分が庭です。

とても清潔な庭でした。

こちらは、全く柱のない構造となっており、上部トップライトから光がおちてきます。梁下端を引張材でつなぎ梁上部も相互につなぐことでトラスの変形型となっています。

和室です。黒い壁で、床の間の設えは以前のものを踏襲したとのことです。

天井高さは2100mmと建築基準法ギリギリでしたが、庭と開口部が存在しているため、明るく広々とした空間となっています。

天井は格子をはりめぐらし、和紙をはっていました。

■鹿狐猿ビルヂング見学

外観は瓦屋根ではありますが、鉄骨造となっています。大通りから少し離れた路地に面する敷地に存在しています。道路幅が狭いため、高さ制限が厳しくぎりぎりで設計したとのことでした。

敷地奥に導かれる細い道が存在し、奥には中庭が存在して、建物の奥行きを感じさせます。奥に魅力邸な場所が存在していることをうまくほのめかしている設計だと思いました。

 

 

中庭です。この奥に中川政七商店の以前からの木造店舗と蔵、ギャラリーなどが存在します。

建物の概要図です。中庭を中心に建物が存在するため、現在地と書かれた場所から中庭にむかう小道がとても重要であることがわかります。

3階にきました。3階はコワーキングスペースになっており、東側の窓から興福寺の塔が見えます。眺望が開ける場所で新しいことを考えるのに適した場所であるかと思います。

ここは、JIRINといって、このエリアを元気づけるために行う街づくり会社のオフィスとなっています。中川政七商店の会長がリーダーとなって動かしているオフィスです。

その会社は、伝統工芸を元気にするというコンセプトから発して、現在は奈良を元気にするというビジョンで取り組まれています。この建物の周辺のお店をプロデュースして、自分たちが住みたい街の実現を企画実践されている企業とのことでした。

明治時代から続くトップダウン型の街づくりではなく、ボトムアップ型の街づくりの実践をされています。スモールビジネスが元気になれば街が元気になる、自分たちが魅力的な暮らしをすれば、都会や他の場所から人が集まってくるというのが観光の本質だと考えられているようでした。街の味をつくるべく、行動していくとのことです。

 

鉄骨造7.2mスパンで無柱空間になっています。構造の選択肢としては、木造、鉄骨造、RC造が考えられますが、50年、100年後もフレキシブルに使える空間とするため、鉄骨造としたとのことでした。木造では7mのスパンでは、確かに間に柱を必要とする構造になります。

二階部分です。鉄骨は丸柱となり、架構は隠さずにどのような骨組みの中に、人が存在しているのか認識できるようになっています。

構造体を覆って見えなくするのは簡単ではあるけれど、こういう骨格の中でくらしているのだというのが、できるだけわかるように設計を心掛けているとの内藤さんの話でした。

軽やかでありながらも品のある建築を内藤さんは目指したとのことでした。鉄骨という素材で、軽やかさと未来に向かう表現になっているのかとも思いました。

鉄骨の柱は細いためとても軽やかな印象を与えます。耐震ブレースは、見えにくい場所に、機能上も問題のない場所に、うまく設置されています。通りの奥側に多くのブレースを設け、表通り側は最小限に抑えるということみたいです。

梁はC型のものを抱き合わせてボルト止めされていました。通常のH型鋼を使う構造とは違います。ここでも高い構造技術を使用していることがわかります。柱のサイズは、1階が太く、2,3階は細くなり、サイズを異なるものとしていました。

奥の中川政七商店の店舗です。江戸時代から続く麻の織物の産地だったようでして、幕府や朝廷におさめていたそうです。現在は、その麻を使った商品を売られていました。

■まとめ

以上 所有者側の説明もあり、有意義な見学会となりました。

構造等技術的なことをギリギリまで考えながらも居心地の良い空間を作ることに焦点をあてている設計姿勢に深く感銘した次第でした。なんらかの形で我々の仕事に活かしていく予定です。

講演会に備えて、内藤建築の学習も行っていく予定です。

 

 

 

 

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