住宅の設計手法②(中間領域)
快適な境界部を作ることは建築の大きなテーマであります。名建築には、たいてい内外の境界部に工夫や魅力が凝縮しており、境界部には内と外がまじりあう中間領域が作られています。中間領域は、間取りが決定された後につくることは困難です。よって、中間領域は 屋根を考えると同時に考えていけば、建物のシルエットと内部空間が決まってきます。
人は、長時間閉じた箱の中に閉じこもっていることはできませんが、家に居ながらにして外を感じる落ち着いた空間であれば快適に生活をおくることができます。開口部の廻りには、外と内がなめらかにつながるグラデーションをつけるのもよいでしょう。
開口部を大きく取れば、室内は明るくなります。しかし、外と内とがガラス一枚で分断されただけの家では、人が長時間そこにいたくなるような落ち着きというのは得にくいといえます。
開口部周辺にボリュームの凹凸をつくり開口部周辺に奥行きをもたせると、内外の境界が曖昧になり、外と内が緩やかにまざりあう空間がうまれます。
中間領域は、環境に対して建物を開く場所ですので、家の周囲で一番環境の良いところ、魅力あるところにむけるのがよいです。建物の周囲に公園や、眺望の良い場所があればそちらに開く。周囲に魅力的なものがなければ、上方向の空に開くというのもよいです。
中間領域は内外の中間の明るさになるように格子やパーゴラなどで外から入る光の量を調節しましょう。
まどの上に袖壁があります。
窓は壁際天井に寄せ、袖壁や下がり壁をなくしたほうがよいでしょう。できる限り存在感をけして、フルオープンとし、建具が完全に見えなくなるサッシであれば室内外のつながりを強調できます。
家の外に壁を設けると、屋外の部屋のような空間ができます。暗くなる可能性もありますが、都市部で有効なこともあります。
壁を格子状にすれば、外から目を隠しつつ、窓を開放して室内に光や風を導けます。格子、ルーバー、メッシュ、パンチングメタルなど。
家の輪郭線を延長するフレームを廻すだけでも、外部空間は領域化されます。但し、プライバシーには注意が必要です。
奥行きが1820mmあれば、家具を置くこともでき、食事をしたり、読書したりなどの活動が可能です。
都市部で縁側が作れない場合は、室内に縁側的に使えるベンチを作るのも良いでしょう。ベンチを設けるだけで人が佇める場所となります。
中庭は外部空間を室内空間のように活用できるプライバシーが守られた中間領域です。ただし、人が快適に暮らせるように、中庭の大きさと屋根の高さの設定には注意が必要です。中庭を団らんの場所として使うならば、最低でも4畳半、できれば8畳ぐらいの大きさがほしいところです。
石、モルタル、タイルなど 外でも使える素材を内部床に使うだけで、外の雰囲気がでます。
窓の存在感をなくして、床仕上げを内外で連続させていきます。
冬季に日射を取り入れ、夏季に日射を遮るには、軒高さの30%の奥行き庇が適切です。高さ2m前後の窓の前に奥行き1間の庇をだすと庇が出過ぎです。その場合は、軒の出が半間の空間と1間のたまり部分を併存するというのもひとつです。
軒の出が1間でも、先端半間をガラスにするという手もあります。
その他、高い位置に屋根をかけるという手もあります。
中庭は軒高さの1.5倍程度の広さがあれば、明るく心地よい空間となります。