木造住宅の設計④(架構)

昔の民家には、必ず、屋根の棟木を支え、四方から梁がささる太くて大きな大黒柱がありました。大黒柱は、家のほぼ真ん中に象徴的にたっています。間取りはこの大黒柱を中心に構成されてきました。

現在のすまいでは、こうした大黒柱はもうけません。建て主の望む間取りを実現させることを優先して、架構と間取りが整合していない状況が多く存在します。こうした構造体は、力の流れが不自然で、無理をしており、耐久性や、その後のリフォームにも悪影響です。

そういったことを解決していくために、できるだけシンプルな架構で考えていきたいものです。

間取りを描く前に、古い民家の大黒柱にならい、屋根の棟木を支える1,2本の柱を1階までまっすぐに通します。ただし、架構は、梁勝ちで組みます。そうすれば、大黒柱ほど太くない柱でよくなります。さらに耐力壁を外周部でとると、どんな間取りにも対応できる架構ができあがります。

 

材料

材料は3,4m材で、土台は檜(赤身杉、薬注したツガ)柱は、杉か檜。梁は米松。間柱垂木根太は、杉が一般的です。

屋根や中間領域の検討で屋根のシルエットがきまれば、その輪郭に沿って、構造体を配置します。屋根の稜線を支える柱を1階までまっすぐおろします。広々とした架構体をつくれば、どんな間取りにも対応していけます。中央にたつ柱の本数は、基本的には、2間角=8畳以内として考えていきます。8畳のブロックが6つの構造体は、2本の内部柱でもたせることができます。

最初から耐力壁の分散配置を考えると、間取りの制約になるので、基本的には、外周部に耐力壁を廻し、その後、内部耐力壁を加えていくという方法をとります。

 

床や屋根は厚物合板で固め、極力水平剛性を高めます。2階床は910mmピッチに甲乙梁を入れる根太レス工法とし、屋根も登り梁形式+厚物合板ではり、床倍率を高めます。所定の倍率がでれば、小屋梁や火打ち梁は不要になります。

梁の上に24mmの構造用合板を直接貼ります。

内部柱の位置を決めます。平面を縦横に2~4等分して、分割線上に内部柱を配置して、構造体の骨格を作ります。できるだけ、等分割しましょう。等分割して、等スパンにすると、構造的にも明快になり、部屋の上下左右の反転、入れ替えなどが容易になります。

田の字のライン上に、極力重なるように間仕切り壁を配置し、部屋にLDKBRと名前を付けていけば

間取りが完成していきます。

耐力壁は、外周部に回しますが、内部は耐力壁線にそって、配置します。

X方向Y方向ともに、等ピッチが理想的です。梁のせいが揃えられ、間取りのバリエーションも増えます。左右対称もお勧めです。

田の字の平面に収まらないときは、田の字の総二階のボリュームに下屋をつけて平面をまとめます。

 

大屋根の建築は、総2階田の字ボリュームをまず作り、片側の屋根をふきおろして下屋をもうければ

美しくまとめていくことができます。

土台 大引きを敷き、柱をいれます。

柱下端のほぞで、柱は自立が可能となります。

2階の床の横架材を架け、2階の柱をたてます。柱の端部や梁の接合部には、あらかじめ、仕口加工がしてあります。敷地奥から順にかけ渡していきます。

 

 

 

軒桁、小屋梁、火打ち梁をかけて、直方体の基本フレームできます。その後、束、母屋、垂木をかけると、主要な架構は完成していきます。

 

垂木をタルキックなどの専用のビスで母屋に固定します。野地板を千鳥貼りして、アスファルトルーフィングを敷、タッカー止めしたら、建て方は終了します。

図のような力の流れをシンプルに流してあげるのが、美しい架構をつくるポイントとなります。

間取りを優先して、計画を行うと、柱や壁の位置が2階と1階でそろわず、力の流れが美しくないです。荷重を負担する梁の大きさが、過剰に大きくなったりすることもあります。無駄のない構造となるように、計画していきたいものです。

基礎の計画

防湿と白蟻対策として、布基礎を施工した上に、防湿コンクリートを施工する必要があるならば、最初からベタ基礎で計画したほうが良いという流れに現在はなってきています。しかしながら、傾斜地や寒冷地では、布基礎が有利な場合もあります。ベタ基礎はシングル配筋として、コストを抑えましょう。

基礎の立上りの設け方は、断熱の仕方により、床断熱の場合、基礎断熱の場合で異なります。

床断熱なら、玄関と浴室は立上りを設けます。耐圧版スラブは、3640×5460mm以下にします。立ち上がりは梁のため、原則人通口は設けませんが、やむを得ない場合は、補強をします。外周部は、全体的に立上りをもうけます。

耐力壁のある部分、柱のある部分には、基礎立上りをもうけます。

建物外周部と、柱のあるところには、基礎立上りを設けます。玄関、浴室部分も基礎断熱となるため、玄関やユニットバスの周囲は立上りを設ける必要はない。

基礎断熱で床下エアコンを採用する場合は、極力地中梁形式とし、床下に 暖気がいきわたるようにします。

和小屋です。和小屋は、水平に組んだ小屋梁の上に束をたてて、勾配屋根を支えるのが大きな特徴です。垂木、火打ち梁、筋交い以外の主要な軸組は、すべて水平垂直の部材で構成されていますので、加工が容易です。壁と屋根の間に小屋梁を挟むため、間取りと関係なく切妻、片流れ屋根、寄棟等様々な屋根に対応可能です。

登り梁の小屋組みです。主要な架構を勾配なりに組むのが特徴です。そのため力の流れが明快な、すっきりとした美しい架構にすることが特徴です。水平剛性は、勾配なりに野地板で確保することが可能なため、耐力壁の間隔を大きくとった大空間を作ることが可能です。これからの主流となるようです。

外張り断熱で、垂木の上に通気垂木を載せた場合の和小屋の架構です。

上から

棟換気→野地板(構造用合板12)→通気垂木→野地板(構造用合板24)→垂木@455→母屋@910→束→小屋梁→柱

 

和小屋切妻の架構

和小屋寄棟の架構

和小屋で寄棟にするときは母屋が等高線状に配置されるので、コーナー部の束を支える小屋梁が必要。

登り梁の架構

外張り断熱で登り梁の上に通気垂木を載せた場合の登り梁の架構です。棟木を支える数本の柱だけのキレイな構造体になります。

登り梁の切妻の架構

 

登り梁の寄棟の架構

登り梁で寄棟屋根にする場合は、登り梁を受ける大きな梁せいの隅木を配置する。この部材の加工は、難しい。

屋根部分に断熱材を施工して、かつ、構造材を見せたい場合には、登り梁外断熱の架構形式を採用するとよい。天井がないため、金物の隠し方や、電気配線の通し方は検討しておく必要があります。

 

和小屋の軒

和小屋で軒を出す場合は、垂木を伸ばして片持ちにします。

 

野地板が1枚なら、屋根通気は、段ボール製スペーサーなどをいれて確保します。

野地板2枚で間を通気層とする場合

桁と野地の間に面戸をいれられるため、屋根剛性があがり、気密もあげられる。

和小屋のけらば

 

和小屋でけらばを出す場合、母屋を伸ばして片持ちにします。しかし、延焼ラインにかかれば、母屋は露出不可能になるし、母屋を隠すために破風の大きさが大きくなりがちです。

横垂木としてケラバ側は片持ちとし、けらばを薄く見せる方法もあります。

登り梁の軒の出し方

内断熱の場合です。

1層目野地の上に直接通気垂木を並べて片持ちをつくると、垂木間は通気層で利用できます。

通気垂木のサイズは、軒の出に応じて決定します。登り梁のピッチが910mm、通気垂木ピッチが455の場合、登り梁の間に通気垂木を受けをいれておく必要がある。

外張り断熱の場合

断熱材の上に通気垂木を並べ、垂木間を通気層で利用します。

登り梁で、けらばを出す場合は、1層目の野地上の垂木を横垂木とすることで片持ちをつくります。隅は2方向の片持ちとなるので、部材をダブル使いにしたり、45度方向に通気垂木をいれるとよいです。

 

 

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