■費用概要
延べ床面積 | 170.9m2 |
---|---|
計画策定費 | 35万円 |
耐震工事費 | 310万円 |
合計費用 | 1000万円 |
補助金 | 157万円 |
実質負担額 | 約850万円 |
■リノベーション工事概要
■費用概要
延べ床面積 | 170.9m2 |
---|---|
計画策定費 | 35万円 |
耐震工事費 | 310万円 |
合計費用 | 1000万円 |
補助金 | 157万円 |
実質負担額 | 約850万円 |
■リノベーション工事概要
神戸市北区にて古民家の再生を行いました。明治36年建築の茅葺屋根の古民家である。改築前は、ご家族がとなりの離れにすんでおり、おばあちゃんが一人でこの古民家におすまいでした。座敷は、快適であるが、基本的には、冬寒く、室内は暗いというイメージがありました。耐震性も心配でした。アライグマが屋根裏に家族で住みついていました。冬場茅の空間というのは暖かく、動物がすごすのに適しているようです。
意匠的には、キッチン、ダイニングの天井を取り払い、大きな梁をみせて、開放的な空間計画とした。また、杉を中心に自然素材による床の内装材の選別をおこなった。
杉の床材は、厚みがあれば空気層を含んでいるため、断熱効果があり、床は冬場でも、冷たさを感じません。
玄関の入り口はいったところの写真である。
現場監理が始まると 蟻による食害で建物の被害がかなり存在することが判明した。
特に大黒柱が、床から1mほど食害を受けていたため、1mほどを 地盤面よりカットし、新たな新材を継ぐことにした。伝統的な大工の手法で、金輪継にてやりかえた(写真)柱が途中で、色が変わっていることに気づきます。
家屋の配置の仕方が、山の傾斜の麓のような平地となっているため、山の伏流水がおりてきて、建物を湿らせるという配置計画になっており、その水をふくんだ木を、蟻がどんどん食べていくようです。山の中の建物は、配置に注意することが重要だと思います。今回は、配置換えを行うことはできないため、木材に蟻対応の薬をうっています。
北区は寒いため、暖炉を設置して、暖かいダイニングを目指しました。
既存の座敷は、とても風情があるため、こちらは、壁等できるだけいじらない方向で、他の部屋の壁を耐震補強することによって家屋を持たせることにしました。
キッチンの前には簡単なカウンターをつくり、食事がカウンターでできるようにしました。
■クライアントの要望
要望としては、耐震改修とクライアントが高齢なため、寝泊まりして、トイレや水廻りに負担なく行け、快適で暮らしやすい家であった。
■改修計画について
計画としては高齢者に優しい住まいを目指した。
具体的には、布団からベッド仕様の和室へ。「寝室からトイレ、洗面、浴室などの水廻り」「居間などの広いオープンスペースから直接寝室や水廻り」。スムーズに楽な移動ができるように計画した。また、滑りにくい床仕上げ、ゆったりした幅の通路や出入り口、引き戸の多用、明るい照明計画とした。
部屋と部屋の温度差が激しい場合は、移動の際に、心筋梗塞になる可能性が高くなります。できるだけ温度差の少ない部屋とするために、壁、床に断熱材を入れたり、窓をペアガラス化したりして、冬でも暖かい家をめざした。
昔の家は、現代人には、寒く感じ、また、間取りが現代的ではないのでそれをどのように現代的にするのかが課題である。
耐震的には、壁が少ないので、耐震要素が少なく、構造的に、強く補強をしてあげるべきです。
■予算について
設計料含め、全体予算は1000万円ほどであった。耐震の補助金は150万円。
耐震で150万円、介護で100万円ほどの助成金を場合によっては受けることができます。この制度を積極的に利用されて家のリフォームを検討されては如何でしょうか?
昭和56年度以前建築の建物の図面作成 耐震診断は無料。その他助成金の無料相談も行っております。
平成20年度改修 延べ床面積 170.9m² 計画策定費 35万円 リフォーム設計料 85万円 耐震工事費 850万円 合計費用 970万円 補助金 137万円 実質負担額 860万円
■改修前の様子
西側からみた外観です。茅葺屋根に瓦を葺いています。
西側からみた外観です。西側にむかって、傾斜のある土地でして、山の伏流水が西側から 当該住宅の敷地に流れ込む状況となっていました。
南側から建物をみています。東側には、蔵が存在しており、北側にはさらに、建て主の子供夫婦が住まわれていました。
東側からみた状況です。玄関横には、たまねぎを干すのどかな状況が存在しています。
北側からみた建物の外観です。ガラス戸の向こう側が台所が存在していました。
下の間6畳 の 部屋です。柱と柱の間の梁は、大きな差鴨居が存在しています。
北側の台所の状況です。当時は、天井をはっており、梁等はみえません。
上の間8畳の状況です。壁がなく開放的にはなっておりますが、耐震構造的には、問題があります。
床下を調査したところ、大引きや、柱が蟻による食害にあっていることが判明しました。
大引きがかなり食べられています。
柱もかなり食べられていました。
大引きの上に根太が敷かれ、その上に板がのるという昔ながらの構造です。
屋根はサス構造となっていました。
木が縄で縛られているのがわかるかと思います。
縄で緊結されています。
■工事中
①解体工事
上の間の床板をはがします。大引きの上に根太がのっている状態です、
よく蟻に食べられているのがわかります。コンクリートを打設するため、大引きと根太を取り去り、スケルトン状態にしていきます。
どんどん解体します。
家屋の全体の基礎をべた基礎とするため、大引きや根太を 各室で取り除いています。
②基礎の工事
建物の床下にコンクリートを流し込み べた基礎を形成していきます。
上部が耐力壁になる部分は、壁から上の荷重を基礎から地盤面に伝えなければならないため、鉄筋を密にいれます。
上の間の床下です。
鉄筋が密に入っている状態です。
いわゆる石場建の建物の基礎の設置ですが、石廻りをコンクリートにてしっかりと固めていきます。
ポンプ車にてコンクリートを打設しているところです。玄関廻り、建物外部のため、それほど鉄筋はいれていません。メッシュにて対応。
コンクリートをまんべんなく打ちます。
コンクリートがどんどん打たれていきます。
土をすきとって、防室シートを敷き、鉄筋を組み立てます。地中梁部分の鉄筋はD13@150をダブルで配筋します。
礎石廻りもしっかりと配筋します。またコンクリートを流した後、建物外周部から外へ、コンクリートが出ていかないように、外周部もコンクリートを打ちます。厚みは150㎜です。
③躯体工事
大黒柱が蟻に食べられて このような状態になっていました。一大事です。
木はボロボロの状態です。
床下の大引きや、柱が蟻に食べられているため、それをうまく取り去り、かなりしっかりと建物をジャッキアップして建物が落ちてこないようにしています。
大黒柱の廻りの梁を支えて、大黒柱を途中で切断し、新材とつなぎ合わせて柱を新たに設置します。
金輪継の技法です。真ん中の空いている場所に込み栓をうちます。しっかりとした柱ができあがります。
これは、伝統的な建物を扱う優秀な大工がいなくては、できない仕事になっっています。
既存の切断された柱です。外科手術を行いました。
大黒柱と小黒柱を補強している様子です。腐食部を切断して、ヒノキ材にてねつぎを金輪継をおこない、
添え木ボルト締め、及び根がらみ貫を新設して、しっかりと固めます。
べた基礎が敷かれたため、作業がしやすくなりました。床を新材にてつくっていきます。
束や大引きを新設し、根がらみで接続して、しっかりとした床下の構造体をつくります。
根がらみがしっかりとはいっているのがわかるかと思います。
大引きの上に、300mm間隔で根太をしいていきます。
頑丈な床下の構造体です。
上の間です。
白蟻駆除をして、二度と、蟻にたべられないようにします。
柱に金物をいれていき、壁をつくります。
継手部分は短冊金物をいれます。
床下の腐朽部を取り払い、新材で補強しますが、土台と柱は ほぞとボルト引きにて緊結します。
■中の間の改修
耐震壁をつくります。壁となる構造用合板は、上部梁と、柱と 土台に釘で緊結されていないといけません。よって、天井をはがして、梁をあらわにし、柱や筋交いと金物で接合します。合板は、N50釘を150㎜間隔でうちます。天井に断熱材を敷き、天井も構造用合板をはり、梁と緊結します。
柱は杉でも問題ないですが、土台は、ヒノキのほうが食害に強いです。床は、断熱材を敷き、構造用合板で固めます。
これで、構造体として堅固なボックスができあがります。赤〇部分はしっかりと金物をいれています。
■奥の間の改修(老人室)
老人室を解体して、構造補強している様子です。柱の根元部分を取り去り、添え柱をしてボルトにて補強しています。根の部分も、土台と柱をしっかりとボルトにて接合していることがわかると思います。押入とクローゼット部分を合板にて補強しています。
外部も地をつくって、防水シートを張り、その上から焼き杉板を張っています。古民家の外壁が仕上がります。
便所部分も構造補強して、金物と構造用合板を取り付けます。
戸袋部分は、構造用合板をはると、使えなくなってしまうため、筋交いにて対応して戸袋として使えるようにします。筋交いは90×90をダブルで使用します。重なる部分は金物にて補強します。既存の柱と筋交いは、M12ボルトにて緊結することにしています。
台所部分の工事です。キッチンを撤去して、コンクリ基礎をつくり、スケルトン状態にして、構造体をつくり、構造用合板をはります。
天井をとりさると、よい梁がみえてきたため、これが意匠上の大きなポイントになると確信できます。そのほか、どんどん構造補強していきます。
今回は、建物の中をできるだけ、壁を作らずに開放的にしたいために、建物外側にバットレスとして、控え壁を設ける手法をとっています。基礎からつくり、土台と柱を立ち上げ、金物を敷設して、壁をはり、焼き杉板の外壁とします。準耐力壁として、扱い、建物を補強します。
以上で 構造体の補強は終わります。