木造構造物の構造設計のプロセス

木造構造物の 構造設計のプロセス等を記載していきます。

 

■構造設計のプロセス(構造計算)

構造計算とは、具体的にどのようなことをするものでしょうか?前回ブログ「木造建築物の構造の基本的な考え方」におきまして、軸組 鉛直構面(耐力壁) 水平構面(床 屋根)と 部材の接合部から、その力の流れやまとまりを考えて計画をすることが構造計画上重要であるということを解説しました。計算では、実際に数値を入力して計算していくわけですが、①鉛直構面 水平構面 その接合部とバランスの検討(壁量計算 配置バランスの計算 柱頭柱脚の接合方法の計算) ②部材の検討(柱梁の設計 垂木母屋棟木の設計 土台の設計) ③地盤基礎の検討(地盤調査 地盤補強 基礎の設計等) ということが大きくわけて あげられます。

①鉛直構面 水平構面 その接合部とバランスの検討

・鉛直構面である耐力壁の検討の仕方

検証1

筋交いなどをいれ、構造用合板等で耐力壁をつくり、その量を決めます。

 

耐力壁の配置バランスをきめます。

ここで4分割法と偏心率による計算方法が存在しています。(後のブログに記載)

柱の上下の接合金物を設計します。

②部材の検討(柱梁の設計 垂木母屋棟木の設計 土台の設計)

軸組を構成する柱 梁の組み方やサイズを決めます。

梁のサイズを決めます。

柱 梁が支えている家の重さ(固定荷重 積載荷重 積雪荷重)があり、これらに対して、梁が曲がったり、柱が座屈したりしないか計算して、安全な組み方やサイズを決めます。

水平怪獣を負担する柱や梁の設計をします。上階の耐力壁がとりつく柱の下に柱がなく、梁で受ける場合は、梁がたわむだけ変形量が大きくなります。できるだけ下の階にも柱を設ける必要があります。

③地盤基礎の検討(地盤調査 地盤補強 基礎の設計等)

 

地盤と基礎は家を支える大切な場所であり、足元が最も重要と言えます。

流れとしては、

スェーデン式等の地盤調査を行い、地盤の状況を把握します。→建物重量を算出し地盤の強さを比較します。→

地盤が軟弱な場合は地盤を補強します。→建物と地盤に最適な基礎の形状を決めます。(布基礎 べた基礎等)

これに関しては、またどこかで詳しく記載します。

以上が 構造設計のプロセス概要となっています。

構造計算の方法は、その3項目をどのように計算するかで大きく分けて3種類存在しています。

■構造計算の方法

 

木造2階建ての建物の構造計算の方法は大きく分けて 3つあります。①仕様規定(簡易構造計算 最低限の建築基準法を満たした計算方法)②性能表示の規定(品確法に基づく計算方法)③許容応力度計算です。1,2,3と順に構造の安全性が高く、計算方法は複雑になります。

①仕様規定(簡易構造計算 最低限の建築基準法を満たした計算方法)

必要な検討項目

・壁量計算は簡易計算(XY方向) ・壁バランスは 4分割法 ・水平構面は計算をしない。

・柱の座屈は小径と有効細長比の計算 ・接合部の検討は筋交い端部とN値計算 ・横架材の検討は計算しない

・基礎の検討は計算しない

・仕様規定の計算

仕様規定は主に4号建築物に求められます。

4号建築物とは、2階建てまで、延べ床面積500m2以下 最高軒高さ9m以下 最高高さ13m以下 です。

また、仕様規定には 3つの簡易計算と 8つの仕様ルールがあります。

3つの簡易計算とは ・壁量計算 ・壁の配置バランス ・柱頭柱脚の接合方法

8つの仕様規則 ・基礎の仕様 ・屋根ふき材等の緊結 ・土台と基礎の緊結 ・柱の小径等 ・横架材の欠き込み・筋交いの仕様 ・火打ち材等の設置 ・部材の品質と耐久性の確認

②性能表示計算(長期優良住宅 耐震等級 耐風等級 耐雪等級 品確法)

・壁量計算は簡易計算(XY方向)+α ・壁バランスは 4分割法 ・水平構面は床倍率の確認。

・柱の座屈は小径と有効細長比の計算 ・接合部の検討は筋交い端部とN値計算+α ・横架材の検討はスパン表から求める ・基礎の検討はスパン表から求める。

・性能表示計算

耐雪等級、耐風等級、耐震等級があります。

耐震等級のレベルは、1が建築基準法レベルの耐震性能であり、2が建築基準法の力の1.25倍、3が建築基準法の力の1.5倍の性能となります。長期優良住宅は 耐震等級2を確保する必要があります。横架材の検討や基礎の検討は、スパン表から求めるため、詳細に設計していない分 経済的にならないことも多いです。柱の座屈や横架材、基礎の検討は少し物足りないところもあります。仕様規定に比べて、床倍率の計算があり、これは計算の精度が上がりとても重要です。

③許容応力度計算

検討項目

・壁量計算は詳細計算 ・壁バランスは 偏心率 ・水平構面耐力の計算

・柱の座屈は許容応力度以下の確認 ・接合部の検討は許容応力度以下の確認 ・横架材の検討は許容応力度以下の確認 ・基礎の検討は許容応力度以下の確認

・許容応力度計算と 適正な構造計算

木造3階建てなどで必要となる計算であり、全ての項目において詳細に計算を行うため、許容応力度計算をクリアできれば、家はとても安全で丈夫なものとなります。構造計算書は数百~1000ページ近くにも上り とても分厚いものになります。許容応力度計算で 壁量の検討、部材の検討、地盤基礎の検討を行えば、一番安全ではありますが、性能表示の計算や、仕様規定をうまく組み合わせて計算することが コストやかかる時間を考えた場合に 適正である 状況が存在するかと思います。例えば、壁量の検討を仕様規定か性能表示の計算で行い、部材の検討と地盤基礎の検討を許容応力度計算でおこなう等の方法があります。

基本的には

のように 複雑な形をした家や建築物は 許容応力度計算にて計算したほうがよいです。

さて、仕様規定や性能規定、許容応力度計算によって詳細な計算を行うのですが、構造計画を行う際に おおまかな構造のイメージというものをつかんでおく必要があります。ある程度の架構をイメージして計画を行うことが大切です。

■架構計画と構造ブロック

 

柱や梁の寸法は、スパン表というものを用いて求めることも多いですが、柱や梁が負担する荷重を正確に計算(許容応力度計算)して、寸法を算出する方がより正確といえます。柱と梁の位置が揃っている例と、ずれている例です。柱と梁の位置がずれていると、荷重がスムーズに流れません。よって梁が大きくなります。

部材の検討で重要なのは、骨組みとなる柱や梁の組み方です。柱や梁がシンプルに組まれていると、荷重の流れはスムーズになり、柱や梁寸法は小さいもので済みます。複雑な架構になれば、柱や梁が大きくなります。できるだけ、プランと架構を同時に考える必要があります。

プランを考える場合に、柱梁を検討しますが、構造ブロックという考え方が重要です。

構造ブロックは柱と梁で組み立てられたもので、平面的、立面的に組み合わせてプランを考えます。

流通している木材が、4mか6mの長さが大半であるため、構造ブロックの大きさは、3.64×5.46もしくは、3.64×4.55を最大とすればよいでしょう。柱は、3m、6mが流通していますので、まずは、3mとして考えます。

 

 

プランを考える時に、各階の構造ブロックをイメージします。

一階部分のイメージです。

二階部分のイメージです。これですと、ブロックの上にブロックがのる構造のため

整合性がとれており、構造的に強いというイメージをもてます。

 

これだと、1階と2階のブロックがずれているため、柱を追加する必要があります。

このように1階と2階の構造ブロックがずれていては、構造的に弱く、おすすめのできない構造体となることがいえます。

 

 

これらの考え方は 住宅等の木造建築物を設計する際に 有効な手法となると考えています。

■ 2000年の法律の改正について

鉄骨造や鉄筋コンクリート造は、間取りを考える時、柱の位置や梁のスパンを考え、意匠設計者は 構造設計者に、構造計算を委託します。一般的に木造の場合は、小さくて軽いし、建築確認申請の 省略もあり、あまり、今まで 詳しく構造計算を行ってきませんでした。木造は設計者や施工者が、構造計算によって安全性を確認する意識が低い状況が存在しています。しかし、1995年の阪神淡路大震災の影響を受けて、建築基準法が2000年に改正され、木造建築物の仕様規定が大きく改善されてきています。1981年に 新耐震の基準が制定され、それ以前の木造建築物の構造基準は改善されましたが、その後、2000年に 木造建築物の構造基準がさらに改善されたということになります。一般的には、1981年以降の新耐震基準で、建築物は構造的に安全であるという認識がありますが、2016年の熊本地震では、200棟もの木造建築物が倒壊しました。当社の見解としても、1981年以降から2000年までの木造建築物は、構造計算をしてみると、劣化具合を加味して、評点が0.7ぐらいのものが大半であるという認識です。

従来は、壁量計算といって、地震力と風圧力に対して、耐力壁の量を確保する計算がありました。2000年の改正によって、壁量計算による耐力壁の量だけではなく、配置のバランスを考えた設計手法(4分割や偏心率を加味した設計手法)が必要となりました。

N値計算 として、柱頭と柱脚に発生する 浮き上がり金物を算出する計算が、2000年以降 必要となっています。2000年以前の木造建築物では、ホールダウン金物等のすぐれた金物を使っているものは稀であり、基本的には、柱頭と柱脚には金物が存在していません。

布基礎の鉄筋の状態です。

べた基礎です。2000年以前は無筋コンクリートの基礎でも問題なかったですが、基礎は鉄筋コンクリートとすることが決められました。

よって、2000年以前の木造建築物は、上記の構造計算の手法を今一度検証して、構造計算されることをお勧めします。

また、2022年時点での木造2階建ての建築物も以下のような問題が生じています。

■4号建築物確認特例(木造2階建てまでの建築物等比較的小規模な建築物の建築確認申請の特例)

現在、木造2階建て建築物等比較的小規模な建築物の建築確認申請で求められている建築基準法の仕様規定は、簡易計算で計算項目が少ないものです。確認申請では、構造の安全性について、建築主事の確認を省略しているので、構造計算書の提出義務がなく、明確に 構造の安全性を担保しているものではありません。確認の特例とは、確認申請を省略することで、木造2階建ての建物が少しでも早く着工できるようにと設けられたものでした。

 

構造を誰も確認していない状況であるため、4号建築物は、構造的には 不安定なものであっても、確認申請が通っているものも存在している可能性があります。基本的には、建築士は、特例の内容を理解し、構造計算をしっかりと行う必要性があると考えています。2025年に4号特例がなくなり、木造2階建てでも構造計算が必要になります。

■瑕疵保険の穴

地震が存在し、建物に何かあった場合でも瑕疵保険があるので大丈夫と一般的には思いがちですが、瑕疵保険の根拠となっているのは、住宅の品質確保の促進等に関する法律であり、建築基準法に適合した住宅の瑕疵が基準となっています。構造計算をしていなければ、保険をかけてもいざという時に保険金がでない恐れもあります。既存の構造計算書が存在していない4号建築物は、今一度 構造計算をされたほうが良い可能性が高いと思われます。

以上 構造設計のプロセスと、2000年以前と 2022年時点での木造建築物の構造計画の実情を記載しました。

それでは、計算の具体的な内容や注意点を見ていきたいと思います。

■構造計算(仕様規定 性能規定 許容応力度設計各々)の中の 壁量計算

壁量計算とは 耐力壁がどのくらい必要であるかを計算で決めます。

A 仕様規定による壁量計算の確認の仕方

①必要壁量を算出②存在壁量を算出③必要壁量<存在壁量の確認

①必要壁量を算出

必要壁量とは、計算する建物が負担する地震力 風圧力に抵抗するために必要な耐力壁の量です。

床面積×床面積に乗じる数値(地震力)により求められます。

床面積は、見下げの面積として、建築基準法の床面積を採用しますが、小屋裏収納やバルコニー、ポーチは面積に含まれません。地震力は建物の重さに影響するため、建物の重さとして影響するところは全て面積として算入します。重い屋根、軽い屋根、で床面積に乗じる数値が変わりますし、積雪も考慮する必要があります。

②存在壁量を算出

存在壁量とは、設計上建物に配置する耐力壁の量です。

存在壁量の計算例として

1階X方向の計算例

・壁倍率2倍×壁長さ2.0m×2カ所=壁量8m

・壁倍率4倍×壁長さ1.0m×3か所=壁量12m

合計 壁量20m となります。

B 耐震等級による壁量計算

仕様規定と基本的な考え方は同じであるが、雪の重さ、屋根の重さ、建てる地域、1,2階の面積などを考慮して 必要壁量を算出します。

C 許容応力度計算による壁量計算

A、Bは 床面積×床面積に乗じる数値(地震力)で求めたわけですが、許容応力度計算は、建物の重さを正確に算出して、必要壁量を計算するという計算です。

地震力=CI × ΣWI

CI=Z×Rt×Ai×C0

CI:地震層せん断力 Z:地震地域係数 Rt:振動特性係数 Ai:層せん断力分布係数 C0:標準せん断力係数

 

地震力に対する必要壁量は 建物の重さで決まり、重量が大きい建物は 必要壁量が多くなるため、耐力壁を多く配置する必要があります。

耐力壁は、壁倍率で強さが表現され、倍率が高いほど、強い壁といえます。壁を強くすれば、柱や梁の接合部も頑丈にする必要があります。

③必要壁量<存在壁量の確認

X方向 必要壁量<存在壁量 が余裕でOK

Y方向 必要壁量<存在壁量 がギリギリOK

計算上はOKですが、XY方向の壁の配置バランスが悪いと考えられます。

充足率=存在壁量/必要壁量 であり 1.0以上が必要です。

また 小さいほうの充足率/大きいほうの充足率 >0.5となり、できる限り1.0に近づけることが必要です。

合わせて上下階のバランスも考えることが重要です。

充足率は、耐震等級の指標となります。

充足率が1.1ぐらいですと、耐震等級1です。充足率が1.2以上だと 耐震等級は2です。充足率が1.5 以上ですと耐震等級は3になります。

・壁倍率について

壁倍率が高くて長さが短い壁と壁倍率が低くて長さが長い壁です。

 

 

壁倍率が高くて長さが短い壁は簡単に倒れます。

よって、壁倍率の高く長さが短い壁の柱単には、強度の高い金物を設置する必要性があります。

設計としては、壁倍率の低い耐力壁を沢山設けるほうが良い設計であるといえます。

2階の耐力壁の下に柱や耐力壁がないことがあります。この場合は、梁がおれてしまう危険性もあります。この場合は、許容応力度計算に基づき床梁を大きくしたり、下に壁を設けたり、柱をたてたりする必要があります。

・高さの異なる耐力壁について

高さの異なる耐力壁は、高さが低いと硬く、高いと柔らかくなる傾向にあります。その構造上の特徴を理解して、許容応力度計算は 剛性を考慮した設計となります。

また、平面的な斜め壁や高さ方向の斜め壁もきちんと整理して計算をおこなう必要があります。

スキップフロアのある住宅というのが存在していますが、水平構面となる床に段差をつけているため、整理して考える必要があります。具体的には、段差部分でブロックごとに分割して計算するようにします。

構造用合板大壁仕様です。面材を柱や間柱 土台 梁に 釘止めします。

注意点としては、面材は梁まで届くようにする。外周部には石膏ボードを使用しない。ということがあげられます。外周部は雨水などでぬれる可能性があり、水に弱い石膏ボードは使用できません。

真壁仕様です。和室に用いられます。真壁仕様の耐力壁は、柱や梁、土台に面材を釘止めしにくいです。そのため、柱、梁、土台の内側に受材を取り付けて面材を貼ることになります。

 

これが真壁仕様の平面詳細です。

N75の釘をピッチ150ぐらいでうつ場合が多いです。

大壁でも 土台に受材を設けることで床勝ち仕様とすることが可能です。

耐力壁のバランスをみた配置

耐力壁を内側中心に配置したものと外側中心に配置したものです。内側よりも外側中心に配置したほうが、建物は安定するといえます。

・耐力壁の配置バランスの計算

配置バランスの計算には、4分割法と偏心率があります。4分割法が簡易計算、偏心率が詳細な計算となります。

4分割法です。

側端部分の必要壁量と存在壁量を計算し、壁量充足率と壁率比を算出します。

偏心率の設計です。南側が全面開口であっても、中の壁の配置を工夫して、重心と剛心の位置が近づくように検証することで、建築可能となる場合がある設計手法です。偏心率を検証することで設計の自由度があがる場合もあります。4分割法よりも優れた設計手法と言えます。

■柱頭柱脚の接合方法

柱頭柱脚に接合金物を取り付けて、柱の浮き上がりや抜けを防ぐ必要があります。

金物の決定の仕方は、2通りあり、告示の仕様とN値計算法です。告示の仕様は計算をしないため、N値計算法に比べて大きくなりますので、一般的にはN値計算法を用いて金物を決定します。

金物は以上のようにとりつけます。

 

柱に二つ取り付けることも可能です。

,

 

上下階の金物の整合も見落としがちですが、重要です。

 

 

毎日無料相談実施しています!

弊社では住宅診断、耐震リフォーム、デザインリフォーム、新築注文住宅等、幅広くご相談に対応させていただいております。相談は一切無料です。また弊社では、個人のお客様だけでなく、リフォーム等される法人の工務店様へ構造的な側面からお力になれます。お気軽にお問い合わせ下さい。