東京たてもの園見学記⓶(大正編)
田園調布の家
大正時代になると、日本人建築家も成熟し、小規模ながら温かな手仕事の味わいをもった作品がつくられるようになります。住宅では、明治期の主流だった上流階級の大邸宅から中流階級の住宅へと視線が移り、住みよさの探求が行われるようになります。
建築年代:大正14年
田園都市株式会社によって開発された郊外住宅地、田園調布に建てられた住宅で、設計は岡田信一郎事務所
洋風の瀟洒な外観も魅力的ですが、最大の特徴は間取りにあります。居間を中心に食堂、書斎、寝室を直結することにより従来の中廊下型住宅からの転換をはかり、家族の豊かなコミュニケーションを実現する意図があるようです。すみよさが探求されることになる大正後期ならでの作品です。
広い玄関ですが、西側から入ります。
玄関のライトも天井の納まりも凝っています。
西南の部屋です。(書斎)
窓が隅に両面に存在しており、開放的です。書斎部屋のような用途です。
南側真ん中の部屋です。居間、ピアノ室です。アメリカにならって、出窓が用いられています。
玄関を入るとすぐに居間が存在し、それを中心に食堂、寝室、書斎が配置されています。居間中心型プランと呼ばれ、大正後期に成立し、昭和初期に浸透していく平面形式。各居室は、雁行に配置されることにより、二面採光が得られている。
南側東の部屋です。さらに南にはパーゴラが存在し、内外を一体的に使える部屋となっています。
パーゴラ部屋です。
北側の食堂まで、出窓を作っていました。台所も明るい空間とされ、食堂との間に設けられたカウンターにより食堂、居間との連続性が配慮されている。応接間などの接客空間よりも家族の団欒や住みやすさ、主婦の家事のための空間を重視する大正期の生活改善の理想をプラン化しているようです。
耐震性的には、部屋の四隅を開放的にするよりも壁にしたほうが強いですが、開放性と合わせて、プランを検討していく必要性があるかと思います。
小出邸
建築年代:1925年 大正14年
設計:堀口捨己
巨匠 堀口捨己のデビュー作です。オランダで起こったデステイルの抽象美が外観、内観に表されています。外観は宝形屋根と庇の水平ラインが対照的な建築となっています。
玄関まわりのアプローチです。丸窓がすかして存在しています。
模型です。水平ラインと屋根の対比がよくわかると思います。
玄関は西入りです。
西入の玄関です。開口部廻りの枠を強調してデザインにしています。
開口部廻りと天井のラインをしっかりとつくったデザインになっています。明らかに構造材としての柱ではない縦材がそのまま天井へと連なり、格子状に分割された天井面と壁面が存在しており、抽象的な美を表現しています。家具は建物と合わせて設計されたようです。
ラインがうまく入り瀟洒な内観です。
奥の部屋を見ています。襖が入念にデザインされているのがわかります。
一階食堂から茶の間を通し、寝室をみています。
襖のデザインです。対称形を崩して取っ手に遊びが存在しています。
壁に存在する明り取りの窓です。
障子もいろいろとデザインされているのがわかります。