2020年 建築士 定期講習
先日、義務付けられている建築士の定期講習に行って参りました。
なかなか盛り沢山の話がありましたが、関係しそうな情報をあげます。役所も、時代に適合させるべく、法律を改正していっているのがわかりました。
建築基準法の改正は 大きくは3つの事柄をみながらおこなっているようです。
①建築物 市街地の安全確保
糸魚川大規模火災 埼玉県三芳町倉庫火災などの大規模火災による甚大な被害の状況を踏まえ、建築物の安全性の確保を図ること、密集市街地の解消を進めることが課題
A)維持保全計画の作成が必要となる建築物の範囲が、拡大
改正前 多数の物が利用する施設(劇場 ホテル 店舗)
改正後 倉庫 工場などに範囲を拡大
B)防火 準防火地域における延焼防止性能の高い建築物の建蔽率の緩和
改正前 防火地域内の耐火建築物は 建蔽率を1/10緩和
改正後 現行に加え、準防火地域内の耐火建築物 準耐火建築物 の建蔽率を1/10緩和。
②既存建築ストックの活用
空家の総数はこの20年で1.8倍に増加しており、用途変更などによる利活用が極めて重要
こうした変化に伴い、建築士に期待される役割は、新築主流の建築活動に対する専門性の発揮から、空家を中心としたストック建築をいかに活用するかといった
利用の時代における建築の専門職能の領域へと転換せざるを得なくなっていると考えられる。これまでの新たな建築をつくりだすといった専門性とは大きく異なる「利用の構想力」
を支える専門家としての職能が期待される。
一方でその活用に当たり、建築基準法に適合するにあたり大規模な工事が必要となることが課題であり、それを順次改正していっている。
A)3階建ての戸建て住宅を多用途に変更する場合の規制の合理化
改正前は、3階建ての場合、壁、柱などを耐火構造とし、非常用照明の設置とする必要性
改正後は、3階建て200m2未満の場合壁柱を耐火構造とする改修は不要。宿泊福祉施設は、避難の警報設備の設置義務と非常用照明の設置義務が必要となる。
B)戸建て住宅から多用途への手続き不要の対象を拡大
改正前は100m2以上は確認申請必要 改正後は 200m2以上なら 確認申請必要
C)老人ホーム等の容積率規制の合理化
共同住宅から老人ホームなどへの用途変更をしやすくし、既存ストックの利活用の促進を図るため、老人ホーム等の福祉施設における共用の廊下階段について、
共同住宅と同様に、容積率の算定基礎となる床面積から除外する。(改正前は、エレベーター面積だけ、除外)
D)宅配ボックス部分の面積の容積率規制の合理化
ネット通販の影響で、宅配便の取扱件数が増加。宅配ボックスの設置促進は、再配達の減少につながることから法律を改正。
E)]高齢者障害者等の円滑な移動などに配慮した建築設計標準の改正の概要
トイレがバリアフリー化されているものが少ない→既存トイレの改修を促進
既存トイレを多機能トイレ(車いす使用者用回転スペース 汚物流しオストメイト 乳幼児オムツ交換台等)
F)建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律
改正前 2000m2以上届け出必要 300‐2000m2 届け出必要
改正後 2000m2以上 適合義務 300-2000m2 届け出義務
G)住宅宿泊事業における安全確保のための措置
届け出住宅は、180日以下の宿泊日数となるものの、最低限の安全確保のための措置が必要
家主が同居する場合は措置不要。家主が不在の場合は、ホテル旅館と同様の措置が必要
非常用照明の設置、複数グループが複数の部屋に宿泊する場合は防火の区画 自火報等の設置
規模構造に応じて、自動火災報知機 誘導灯の設置 防炎カーテンの設置
H)階段基準の合理化 戸建て住宅をグループホームやシェアハウスに用途変更するニーズが拡大
改正内容 両側てすりかつ滑り止めの追加の安全措置を施した場合階段の寸法基準を合理化する。
住宅の基準 片側手摺 蹴上23cm以下 踏み面 15cm以上
寄宿舎の基準 片側手摺 蹴上22cm以下 踏み面 21cm以上
改正 合理化基準 両側手摺かつ滑り止め
蹴上 23cm以下 踏み面 19cm以上
個人的には、宅配ボックスの容積率緩和が面白かったです。ネット通販の時代をよく表していると思いました。
➂木造建築をめぐる多様なニーズへの対応
必要な性能を有する木造建築物の整備の円滑化を通じて、木造に対する多様な消費者ニーズへの対応、地域資源を活用した地域振興をはかることが必要
日本は、木材の国内消費の約70%を輸入しているが、実は日本の山は木で溢れている。「毎年の成長量の1/4しか利用していない」と言われ、毎年8000万m3ずつ蓄積量が増えている。
その結果、現在では蓄積量は50憶m3以上に達し、江戸時代以降、最も気が充実しているといわれるほどになっている。山は木で溢れているのである。
一方、木材には、一部を除き関税が全くかからない。すなわち、完全に海外と価格競争している。国内の林業が厳しい経営を迫られていることは容易に想像できる。
出荷しても経費が回収できないことから、伐採量は低迷している。そのため、樹木は太りかっては、小径材の使い道が模索されたが、現在では、大径材の使い道が課題。
また、樹木は、たんなる用材としての利用にとどまらない環境保全機能を有している。木材は、日本の数少ない天然資源である。毎年の生長量は、日本の木材需要と拮抗しており、数字だけからいえば
自給できる資源でもある。森林は、日本の国土の2/3を占める。森林があれるということは、国土の2/3があれるということである。木材を活用し、森林を保全していかなければならない。
←このような発言がありましたが、個人的には、国は、関税の問題をどうにかするようにしなければならないと思いましたが、CLTを活用した非住宅の大きめの木造建築物がこれから増えると思われます。
住宅も8割は、木造でできていますが、基本的に、カナダ産の米杉を大量に扱っているのが現状のようです。国産材をうまく活用することを考えていかなければなりません。