神戸市北区 耐震診断と構造補強
神戸市北区において 少し大きめの住宅の耐震診断と構造補強を行いました。
■調査と耐震診断
2階建て木造住宅です。開口部廻りに 外壁亀裂が生じており、劣化事象としました。
平面図的には、東側に浴室食堂の水廻りが集中しており、それ以外は 玄関と和室が3つという構成です。和室では、お寺さんをよんだり、年に数度、人が集まる場所になるとのことでした。
二階が存在していますが、どうも、登記簿をみていますと、平屋を二階建てに したようでした。
床下は乾燥しており、問題ない状況です。基礎は、無筋コンクリートと考えられます。
耐震診断を行いました。
南東部からみた建物の図です。西に倒壊するのがわかると思います。西に倒壊します。これは、東西方向の評点が低く、0.3となっています。南北方向は0.7ぐらいであり、二階は0.5ぐらいの 評点となっています。(評点は1以上あれば いちおう倒壊しないという基準です。)
■構造補強計画
さて、補強計画を検討しました。
緑色の部分を補強します。ぎりぎり評点は1.05です。これをさらに強化するとなると、食堂部分や和室2,3をほきょうしなければならず、予算的にもこのあたりが妥当であるという判断です。
・今回は、見栄えをよくするために、真壁の耐力壁をもちいいたり、準耐力壁を用いることで工夫した設計としています。よって、Y4の軸を強めて 東西方向の壁量の強化をはかること、和室1の壁の耐力を高めることが最も重要でした。
・また、南北方向は玄関部分の南北方向の壁を補強する計画にしました。通常、耐力壁を用いると、構造用合板を梁まで到達せねばならないために、和室の天井を切る必要性がありますが、そうすると、和室2の内観がだいなしになってしまいます。和室2の壁を補強する部位は、天井を切らずに、梁まで到達しない準耐力壁という 手法で補強します。
・また、和室1の壁は、真壁の耐力壁にて施工することで、和室の趣をいかした内観になります。
二階部分は、1枚だけ南北方向の壁を補強しますが、それ以外は、金物による補強にて 費用を抑えています。
北側の和室2の様子です。綺麗な和室が存在しています。
和室3の様子です。
和室2と和室3は、天井も綺麗に貼ってあり、できれば、この和室の趣を変更せずに、床の間の空間と仏間の空間を残したいという考えが存在しています。よって、和室2と3の壁は極力変更しないで 他の部屋の壁を補強する事を考えます。また、上記の倒壊の様子から、東西方向の壁が弱いため、東西方向を中心に壁の補強をする必要性があることが必要と判断されました。また和室1の床がふかふかしていたため、和室1を中心に補強していくことが検討事項として考えられます。また食堂や、浴室はすみながらの工事になるため、極力いじらないでほしいという依頼主のお話でした。
■耐震工事
実際に工事に入りました。
・和室1の施工
和室1の南側隅の壁です。25KNのホールダウン金物を使います。ここが一番地震力を負担する部位になります。
解体している状況です。
25KNのホールダウン金物を取り付けています。
構造用合板をはり、N50の釘を150ピッチにて打ち付けます。
内側の壁も補強して真壁造にて対処します。
外部は構造用合板の上に防水塗装をして仕上がり、建築士確認とします。
この壁は 準耐力壁仕様です。
土壁を計算にいれていましたが、施工上 取り払ったほうがよいとのことで、取り払い、急遽 筋交いダブルにて 補うことにしました。評点は変わりません。
金物設置の様子です。筋交いにも金物をいれます。
筋交いがダブルで入っています。
構造用合板をはり、釘をしっかりと打ち付けます。
釘のピッチも150幅にてはります。
■玄関の耐震工事
玄関部分の壁の改修前の状況です。
合板をはがすと土壁があらわになります。
天井をめくりますと柱の上に梁が載っていない状況が存在しています。これは驚きました。
こちらも載っていない です。急遽打合せを重ねて 対応することにしました。
この場合、柱を取り換えることも難しいため 柱の上に束をたて、ビスや金物で上部梁と柱を緊結します。
こちらも柱と梁が金物で緊結されている様子がわかると思います。これで荷重の流れが上部から下部に伝わる仕組みが出来上がります。
柱には45角の枠を取り付け、N75の釘を150mm間隔で柱にとりつけます。
構造用合板をはり、構造体が出来上がります。
■和室2の耐震工事
この建具を取り去り構造壁をつくります。和室1と和室2の間の壁です。
撤去状況です。
計画予定の壁の下に 基礎が 存在しているのかを確認する作業も重要です。
アンカーを土台と基礎に打設して結節します。
ホールダウン金物を敷設している様子です。
枠の状況です。こちら側は、構造用合板を梁まで到達させる耐力壁の仕様です。廻り縁を一度撤去して
梁と構造用合板をつなげ、また廻り縁をつけます。
真壁仕様の構造体ができあがります。
和室2からみた様子です。こちらは準耐力壁であり、構造用合板は梁まで到達させません。和室2の天井を削ることなく構造体をつくる手法です。準耐力壁は耐力壁に比べ耐力は落ちますが、それなりの耐力となります。
耐力壁の仕上げの状況です。
準耐力壁の仕上げの状況です。
同様にして二階も仕上げ、耐震改修工事は終了します。
平屋を二階建てにした構造体であったために、いくらか力の流れの不整合が見受けられましたが、それなりに構造体としては、強くなったと考えています。