「コラム」大阪北 グラングリーン
遅ればせながらグラングリーンに参りましたので、簡単に感想を記載したいと思います。
①概要
JR大阪駅前で、敷地の約半分を緑地とする異例の大規模再開発プロジェクトです。
建築とランドスケープを同時に考えてデザインし、環境効果をデータで可視化しながらコストがかかる緑地の計画の意義を発信している重要な試みだと思いました。ランドスケープは、建物の計画の後に 余った部分で従来は考えがちなのですが、この計画は、ランドスケープを主役にすえて計画されていました。地区内の緑地面積は8万m2にも上ります。
②サウスパーク
最大高低差3mの盛土を帯状に配置し、その高低差をいかしながら、JR大阪駅に近い南側は芝生広場を備えたサウスパーク、新梅田シティの自然に近い北側は、より自然豊かなノースパークとしていました。その間に2つの公園をつなぐ段状のステッププラザを設けています。建物のボリュームを公園に近いほど小さく、遠いほど、大きくし、全体をすり鉢状の空間にしていました。さらに、ビルの角度を振って配置することで、建物の間に居場所を生み出すなど、建物とランドスケープを一体にする工夫がなされていました。
サウスパーク入り口です。木が生い茂り、奥に建物が主張せずに存在していることがわかります。
建物の高さが抑えてあることがわかります。
サウスパーク入ると芝生広場があり ラジオ体操を皆さんされていました。
鉄骨で大空間をつくっていました。設計は SAANA 西澤さん
広場から 遠目にスカイビルがみえます。
高層ビルの隙間がいい感じになっています。都心の緑地空間。
③ノースパーク
森に入っていく感覚です。
ノースパークよりサウスパークをみています。樹木と高層ビルが うまく存在しているのがわかるかと思います。
ノースパークです。
安藤忠雄さん設計の グランキューブです。建物の高さを抑えて地下空間をしっかりつくって、そちらで展示を行っているようです。残念ながら 安藤さんの展示は 終了した直後でした。
③緑化の意義を可視化
総事業費は6000億ということです。緑の環境効果を可視化していました。その指標は、①温暖化ガスの削減②樹木による空気の浄化③温熱環境の改善④雨水流出の抑制⑤生物多様性の促進 ということでした。樹木データを3Dモデルに落とし込むことで、年間のCO2固定量は約35.9トンと算出されました。このCO2固定量を元に、空気の浄化作用を導き、二酸化窒素の固定量を年間10.7kgと算出していました。緑は温熱環境の改善にも貢献し、現計画は高木と水面がない場合に比べて、日中の体感温度は最大5度、表面温度は最大15度も低いことが分かったそうです。緑地により浸水被害の緩和も期待され、年間降水量の25%にあたる3万4500m2を緑地に浸透させることが可能です。環境効果は人だけでなく生物の視点でも検証され、高次捕食者であるシジュウカラが生息しやすい環境を整備し、緑のネットワークができてきているようです。事業者にとって、緑地開発にコストを割く試みは簡単ではないですが、今後この事例を検証しながら、中小規模の緑地開発がなされることが期待されているようです。
実際、訪れてみて、真夏にも関わらず、よく風が通っており、日影は涼しく過ごしやすい状況でした。ぜひ訪れて都会のオアシスを体験ください。