RC 鉄筋コンクリート造 3階建て(地下1階)店舗 耐震工事 (大阪市)(工事状況を中心に)

従前が 住宅としての用途で使用されていたRC造の建物を耐震工事を行いました。

■改修工事の概要

大阪市の商業中心地に位置するため、30年前までは、住宅として利用されていましたが、その後、店舗として活用されていた建物です。ただし、天井の高さが低く(2400)店舗としては、開放的でないため、所有者に無断で、2階の梁と床を切断しており、建物自体は開放的でありましたが、構造的には 非常に危ない状況でありました。WEBSITEより大阪府建築士事務所協会などをあたられて、様々な建築士事務所を探されましたが、「どこの事務所でも対応してくれるような事務所はないでしょう」といわれ、対応してくれる事務所がなかったというクライアントのお話でした。その後、インターネットにて 検索で 当社を 探されて、ご依頼を受けて、現地調査に参りました。弊社は、既存の図面が存在しない場合は、調査後、図面を作成します。規模が小さく、建物の形が整形をしている場合は、1次の耐震診断にて診断が可能なため、1次診断にて補強もさせて頂きます。

 

 

 

 

北側の状況です。間口4mほどですが、梁が切断されているのがわかるかと思います。

西面の内観です。梁が切断されています。

2階に上がる階段の周辺の床とそれを支える梁は一部 残していました。

2階部分は床が存在していないことがわかるかと思います。

地下の状況です。鉄骨の階段が地下に下りるためには存在していました。地下の天井高さは 高いです。

■耐震工事

①床梁の型枠の設置とアンカーの打設

 

逆梁にして鉄筋を組んでいます。

 

2階の梁を設置しています。北側入り口付近に近いため、梁で 来客者が頭をうたないように 逆梁にしたのが今回の工事の特徴となっています。

 

 

2階床をつくるために周囲梁にアンカーを打設しています。

床に鉄筋を入れていきます。ピッチは200で、ダブルです。

 

中間の梁の鉄筋を組んでいます。

鉄筋が組みあがりました。フープもしっかりとしたピッチで入っています。

②2階床のコンクリートの打設

さて鉄筋が組みあがったため、コンクリートを打設します。

逆梁部分へコンクリートを打設します。

 

打設しながら、まんべんなくコンクリートがいきわたるように職人さんが対応しています。

 

その他、床へ打設し、床が水平になるように対応しています。

コンクリートをならしています。

水平になるように機器で対応しています。

ほぼ水平な床が仕上がってきています。

③2階のコンクリートの仕上げとアンカー打設

2階の北側逆梁をした部分です。コンクリートが仕上がってきており、もう歩けます。

1階部分から逆梁をみています。1階の耐力壁のアンカーを打設しています。

こちらも1階から2階逆梁部分をみています。

2階のコンクリート打設後の床の仕上げ状況です。綺麗に水平に床が仕上がり 床面積が増え、オーナーも喜んでおられました。

 

2階の梁を受けるために、小壁をつくるため、アンカーを打設しています。

アンカーを打設するために、穴をつくり、掃除機で埃を吸いながら作業中です。

ドリルであけている様子がわかるかと思います。

こちらは、スパイラル筋です。これを耐力壁となる部分に配筋します。

2階の床は、コンクリートを打設したばかりのため、まだ、サポートを存在させて工事をしています。

④階段の配筋

階段の配筋です。アンカーの打設の数が多くて、階段の配筋に だいぶ職人さんは苦労されていました。

2段配筋で組みあがっていきます。

 

⑤耐力壁の配筋

1階北側からみています。耐力壁の配筋です。スパイラル筋も設置しているのがわかるかと思います。

 

1階北側部分です。

2階北側部分の耐力壁の配筋状況です。

平面上の真ん中の柱につく耐力壁の配筋状況です。こちらもスパイラル筋を設置しています。

南側の壁です。便所が存在するため、こちらは、一部耐力壁の厚みを100とし、シングル配筋として施工します。他の南側の耐力壁の厚みは200mmとして、ダブル配筋で設置します。

 

鉄筋がダブルであることがわかると思います。

ダブル配筋としてスパイラル筋を設置しています。

⑥耐力壁のコンクリート打設

北側の道路にポンプ車を駐車して、コンクリートを流し込みます。

ポンプ車よりコンクリートが出てきています。

階段部分にコンクリートを流します。

下部までコンクリートが流し込まれます。

階段の踊り場部分を左官しています。

コンクリートを型枠内に流し込んでいます。

 

南側の耐力壁にコンクリートを打設しています。

梁受けの壁に対しても、型枠内にコンクリートを流し込み、トンカチでたたいて、全体的に コンクリートがいきわたるようにします。

⑦コンクリート打設後の階段の仕上げと耐力壁上部に無収縮モルタルを注入。

地下に下りる階段が出来上がってきています。

階段が綺麗に出来上がってきています。

踊場です。

室内の耐力壁が立ち上がった状態です。これで、構造体として頑丈になりました。3階建ての重量を、地震時に1階の耐力壁はうけて、その力に耐えるものとするため、1階の耐力壁は特に重要となります。

北側の耐力壁です。

耐力壁上部には、無収縮モルタルを左官しています。

2階の耐力壁です。

南側の耐力壁の仕上がり状態です。下部に穴をあけているのは、地下の排気配管を通すために必要なため あけています。

2階のスラブを打設した状況です。

奥の北側が 逆梁になっており、壁が増設されています。

1階から2階にあがる階段です。CPにより、6点で既存の階段と結節し、補強しています。

1階の様子です。壁と梁が増設され、上部にスラブが作られているのがわかると思います。

1階北側の壁の増設です。

逆梁の受けを増設しています。

2階の増設壁です。

南側の増設壁です。

地下からの排気をするために新たに作成しています。

1階を北から南に見ています。1階の仕上がりの状況です。

地価のコンクリートの打設の状況です。

階段

工事のことを上記では記載していますが、以下 調査 耐震診断 補強計画 として記載していきます。

■調査

既存図面が存在していましたが、現状と異なるところが存在していましたので、しっかりと調査を行う必要がありました。

地階、1階、2階平面図です。2階の床を取り去り、吹き抜けになっているのがわかるかと思います。その他梁を取り去っているのもわかるかと思います。

梁も2箇所取り去り切断されていました。驚きものです。

今一度現状を写真で振り返りますと、梁とスラブが大きく切断されていたことがわかります。

梁の切断面です。上端筋でD22が6本 下端筋でD22が4本となっており、丸鋼でした。

スラブの切断面です。スラブの厚みは150 鉄筋は D10@200という形で入っていました。補強時はこれを復旧し、厚みも揃えます。

東側の壁の位置がずれていました。が、これは、耐震の数値には影響を与えることはないです。

3階は がらんどうの部屋となっており、屋上はペントハウスからあがって、陸屋根の状態でした。

 

断面図です。天井高さは2550となり、西側面には窓が存在していたようですが、現在は、ブロック等で埋めていました。

地階、1階、2階の伏図です。これで、各柱と梁のサイズをはかって、状況を確認します。

切断された梁は、400×650のものでした。

3階屋上の 伏図も 作成します。

東西方向に切断した軸組図です。

これを見ると赤の部分と黄色の部分の階高さが異なることがわかりました。赤の正方形の部分には、近接して2階、3階に桁が2つ存在していることがわかります。所有者に聞き取りを行いますと、以前は、隣に同じ建物が存在していて、それを解体してしまったため、桁が2つ存在しているようでした。ということで、以前は、存在していた建物を撤去して、片側だけ存在する建物で、なおかつ、床と梁を切断しているという建物を構造補強するという業務になることが発覚しました。

赤の梁と黄色の梁が同一階に存在しています。

 

その他、通りに沿って、南側も軸組図を作成します。

南北方向の軸組図です。こちらの東側桁行方向の軸組図をみれば、2階、3階に梁が2本通っているのがわかるかと思います。

以上

調査では、軸組図と伏図と部材寸法をとり、建物の現状を正確に把握します。

■耐震診断

①建物概要

昭和42年築のRCの建物です。建築面積は45.80m2 延べ床面積は141.56m2(2階がないため実際は180m2程存在)地上3階 地下1階 塔屋と屋上が存在しています。RCラーメン構造となっております。意匠図は、所有者が保持されていましたが、現状と異なり、構造図、構造計算書は、もちろん存在しません。よって、耐震の1次診断にて、壁の厚みとサイズと、柱のサイズにて耐震診断を行い、補強計画を検討することにしました。

地盤は良好、地形は平坦地です。経年劣化は、築60年の建物のため、外壁部分はだいぶ劣化していますが、それほど、大きな損傷はないです。不同沈下や柱、壁のひび割れも存在していません。

②構造床面積

 

 

 

1階の壁柱図です。南北方向は、壁がしっかりと存在していますが、東西方向は1階に壁がありませんので、柱の断面積を計上して計算します。

X方向が東西方向、Y方向が南北方向となります。南北方向には、北側に片方だけ柱につく壁が存在しているため、その部分のみAW3としています。X方向は柱の断面積にて計算します。X方向で0.32となり、NGとなるのがわかります。Y方向は4.22と強い数字がでています。(0.8以上が最低限の評点を満たすとされています)

2階壁柱図です。

2階もX方向は 柱の断面積にて耐震要素を計上して計算します。一部、南側の壁は計上できます。X方向は0.49 Y方向は3.35となり、2階も1階と同様に耐力要素が足りていないことになります。

 

3階壁柱図です。

こちらは、X方向に壁は少ないですが、ほとんど上階の重量の負担がかからないため、X方向は0.89という数字がでており、最低限の耐力が存在するということになります。Y方向は、5.71となり高い評点がでています。

集計表です。1階と2階のX方向でNGが出ているのがわかると思います。

壁の量と柱の量の判定によるグラフです。赤部分をみてもX方向の黒丸が足りていないことがわかるかと思います。

 

よって、3階は、最低限の強度は満たしているため、1階と2階のX(東西)方向の壁量を増やしてあげれば、NGは解消されると考えればよいかと思います。また、切断された梁と2階の床の復旧をする必要があります。

これで耐震診断が終わりましたので、補強計画を考えます。

■構造補強

補強の計画を示します。

 

耐震診断により、1階の東西方向の壁の量が足りていないことがわかりましたので、図面の赤部分に耐力壁を増設します。また撤去されていた梁を復旧し、2階のスラブを打設する計画とします。

 

耐震改修前の1階2階の評点は、X方向で0.32と0.49でしたが、

改修後は、1階で1.04 2階で0.8となる計画をしています。

 

グラフとしても。安全値によっており、問題ない数値となっているのがわかります。

赤の部分が1階の耐力壁の量です。柱と柱の間にある大量壁のため、AW2として、厚みと幅を検討し、入力しています。

現場で、南側トイレ部分の壁が 厚み100㎜とせざる得なかったため(トイレの位置の関係)当初の計画を少し変更して計算しなおしており、そのため、変更前と記載しています。1階は、壁量を計算しても問題ない範囲となるのがわかるかと思います。

 

 

 

2階も壁量を増やします。

 

数値としては、X方向で、1階、2階ともにIs値0.8以上を確保できたことになり、補強計画としては、NG→OKとなります。

壁率、柱率による判定グラフとしても、安全値に、評点がよっており、数値上問題ない範囲となりました。

補強の詳細図です。逆梁にしています。その他、梁と壁を増設しています。

 

地下に下りるコンクリートの階段と1階から2階に上がる階段の補強詳細図です。

既存階段に関しては、チェッカープレートを作成し、6点で既存階段に補強し、幅を広げています。

以上

耐震強度の足りないRC3階建ての建物の 調査 耐震診断と補強計画と補強工事でした。

所有者様は、他で色々と探したけれど、対応先が見つからず、弊社を探して ご連絡を頂いたものです。

このような古いRC 鉄筋コンクリート造の建築物を所有されていてお困りの方は、弊社まで ご連絡ください。

 

 

 

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