持続可能な社会のための建築都市(省エネ法改正)
昨今話題になっています 脱炭素化、SDGS、異常気象などありますが、建築都市と絡めて記載を試みました。
(1)近年の異常気象と災害
近年、世界各地でこれまでの記録を更新するような異常気象が報告されています。集中豪雨、極度の乾燥、高温など、多くの地域でこれまでにない異常気象が発生しています。日本でも、地域によっては 大雨 高温 大雪などで深刻な被害を受けています。
①異常気象と気候変動
異常気象とは、人が一生の間にまれにしか経験しない現象をさします。干ばつ、極端な冷夏、暖冬 大雨 強風などです。
気候変動とは、気温及び気象パターンの長期的な変化を指します。大規模な火山噴火等による自然現象の場合もありますが、1800年代以降は主に人間活動が気候変動を引き起こしており、その主な原因は、化石燃料(石炭、石油、ガスなど)の燃焼です。化石燃料を燃やすと温室効果ガスが発生し、地球を覆って太陽の熱を閉じ込め、気温が上昇します。主要な温室効果ガスは二酸化炭素、メタンなどであります。
世界では、2000年からの20年間で、気候変動による災害が82%増大しました。気候変動は、世界中の人々の安全を脅かす問題となっています。異常気象の一因として考えられるのが、二酸化炭素排出量の増加です。
現在の地表の平均温度は、人口の増加に伴って1800年代後半(産業革命以前)と比べて約1.1度上昇しており、過去10年間で最も気温が高くなっています。過去10年間(2011~2020)は観測史上最も気温が高い10年となり、過去40年のどの10年をとっても、最も気温が高いです。このままであれば更なる気温の上昇が予測されます。
②気候変動による国内外の動き
IPCC(政府間組織)評価報告書では、地球温暖化の進行に伴う気候変動によって極端な気象現象の頻度や強度が既に増加しており、今後さらに増加すると予測されています。国連のグレーテス事務総長が、「地球沸騰の時代が到来した」という言葉で強い危機感を訴えました。IPCCの見通しとしては、向こう数十年間の間にCO2及び温室効果ガスの排出が大幅に減少しない限り、21世紀中に、地球温暖化は1.5度から2度を超えます。地球温暖化が進むごとに、熱波 豪雨などの極端な現象の強度と頻度が増加します。
③気候変動の今後
今後、温室効果ガスの排出が高いレベルで続く場合、1日の降水量が200mm以上となる日数や短時間豪雨の発生頻度は全国平均で20世紀末の2倍以上になると予想されています。近年、日本国における熱中症による死者は年間1000人を超えています。年平均気温の上昇、猛暑日、熱帯夜の日数の増加、日本沿岸の海面水位の上昇、激しい雨の増加、台風の強度の強まりが予測されています。
④都市化の進展とヒートアイランド現象
地球温暖化に加え、都市化に伴い、ヒートアイランド現象による気温上昇も生じています。大都市圏では、都市化の影響の比較的小さいとみられる地点に比べ、長期的な気温上昇幅が大きく、都市化の影響によるヒートアイランド現象がうかがえます。例えば、1927年から2021年の100年間において、都市化の影響の比較的小さい地点では、気温が100年あたり約1.6度上昇していますが、東京では、約3.3度上昇しています。今後、気温上昇、猛暑日、熱帯夜の増加が見込まれる中、都市化によるヒートアイランド現象が顕著な都心部において、芝生化や緑化などにより、涼しく快適な空間の創出を図ることが必要であります。
⑤気象災害リスクへの適応策
気候変動による災害リスクに対応するため、脆弱性に対するインフラ計画(治水計画 高潮対策)ハード ソフト一体となった流域治水の取り組みなど防災 減災対策の重要性が増大しています。治水計画を見直すなどの対策の推進が進められています。
(2)カーボンニュートラル実現に向けた国内の動向
2011年に発生した東日本大震災以降、温室効果ガスの排出量が増加し、2013年には、過去最高の排出量を記録しました。これを受けて、日本政府は2030年までに2013年度比で46%の温室効果ガス削減を目標として掲げています。この目標は他国に比べても非常に高いものです。化石燃料からの脱却を 国際的な成長の機会ととらえ、経済と環境の好循環を作っていくことを目指しています。
住宅建築物に関係する動向
1)建築物省エネ法の改正と適合義務基準の段階的な引き上げ
1970年におきたオイルショックを契機に1979年に制定された省エネ法から建築関連分野を分離独立する形で、2015年に建築物省エネ法が制定された。2017年には、大規模非住宅建築物(床面積2000m2以上)の省エネ適合性判定基準が始まり、これまでも段階的に強化されてきました。そひて、2025年よりすべての建築物に省エネ適合基準が義務化されることになりました。2039年以降、新築される建築物について、ZEH ZEB基準の水準の省エネ性能を確保するという政府目標を踏まえ、建築物の省エネ適合基準が今後も段階的に引き上げられていきます。
2)住宅の断熱等級の引き上げ(外皮性能の強化)
3)住宅トップランナー制度の拡大と基準の見直し
4)省エネ性能表示の施行
以上の 動きの中で
2025年に 省エネ適合基準が義務化され 建築基準法に反映されて、建築士事務所等が対応していくことになります。