共同住宅 木造3階建ての計画(5m擁壁のある土地)(許容応力度計算による構造計算 含む)

5m擁壁のある敷地に共同住宅の計画を行いましたので記載します。

5mの擁壁が存在し、擁壁部分には、車庫が存在していました。この擁壁の上の土地です。以前は、2階建ての木造の住宅が4つほど建設されていました。平成10年に建築確認申請を通されているものもありましたので、2階建てに関しては、まず、この擁壁は問題ないようです。しかしながら、3階建てとなると、危険が伴います。車庫を潰して、埋めて、土地を地盤改良することで、擁壁に荷重を負担させない方向性で、計画を行います。

 

土地にアクセスするには、西側からの階段と、南側からの階段と東側からの階段にてアクセスが可能です。

西側から当該土地には、アクセスを行うのが段差が小さくよさそうです。

東側からの階段は お寺の参道になっているようでした。

鉄骨のベランダは除去する予定です。

東側から土地にアクセスするには、階段をあがり、階段の踊り場からさらに階段を2段ほどつける必要がありそうです。

 

実際の敷地状況です。地盤改良をしっかりと実施する必要がありそうです。

南向きの眺望です。3階まで建つと、眺望はとてもよさそうです。特に東側は1階でも眺望良好かとおもいます。

土地に関わる法的な規制の状況を調査しました。

①がけ条例により

擁壁から30度の角度で 基礎の根入れが必要なようです。

②街づくり条例により

高さは 12mまでに抑えられています。

③宅地造成規制区域

これに関しては、昭和37年以前に擁壁がつくられていたようです。

④第3種高度地区

(1) 建築物の高さは,20m以下とする。
(2) 建築物の各部分の高さは,当該部分から前面道路の反対側の境界線ま
たは隣地境界線までの真北方向の水平距離が8m未満の範囲にあっては,
当該水平距離に1を乗じて得たものに7mを加えたもの以下とし,真北
方向の水平距離が8m以上の範囲にあっては,当該水平距離から8mを減
じたものに0.6を乗じて得たものに15mを加えたもの以下とする。

 

第3種高度地区が建物の形状を決めていくかと思いましたが、神戸市に確認すると、真北方向からなので、この土地の境界線に沿ってではないため、それほど脅威ではないということがわかってきました。

 

土地の状態を表しています。 前面が道路境界線であり、東西に階段が存在し、南側にも階段が存在しています。

 

西側からアクセスし、北側の道を通り、各部屋にアクセスします。階段室型の共同住宅、木造3階建てです。

34m2の住戸が12戸 入る計画となります。

北側の通路は、敷地内避難経路として、1500mmは最低必要となります。

片廊下型の共同住宅にしても、計画上問題はないですが、2,3階住戸ののプライバシーが階段室型よりも阻害されるのと、2,3階にあがる階段の設定がやりづらく、費用もかかり、あまりお勧めできません。

延べ床面積は400m2、各階面積は133m2です。共同住宅は、300m2を超えると耐火建築物にする必要性があります。

また、耐火建築物ですと、バルコニーを計画する必要はないのですが、神戸市の条例で2,3階にバルコニーが必要です。バルコニーには避難器具600角が二つ入る場所が必要になります。

プランに関しては、ABCDと4通り設けています。

ABは、寝室も南側に設けています。南側の眺望がしっかりとれ、明るく開放的なプランとなっています。

ABともにカウンターキッチンですが、Bのほうが、収納は多くとれます。

CDは、北側に寝室を個別に設定し、室を分けています。Dは、トイレが個別に設定されており、こちらのほうが望まれる形式なのかもしれません。そのぶんCのバルコニーは広くなります。

土地の価格が5000万近くあり、建設費は、1億ほど。賃料収入は、8万円×12部屋×12か月=1200万ほどでして、だいたい、利回りは、8 %ほどの計画になるかと思います。

土地に対してのボリュームチェックプランもいれますので、また何かお力になれることございましたら、ぜひともご連絡ください。

 

 

 

木造3階建て共同住宅の全体像です。南側から見ています。リビングと寝室の間仕切りはガラスの間仕切りで仕切られているのがわかると思います。

 

各階の全体像となっています。各室の状態がどのようになっているのかわかるかと思います。

再度こちらを 眺めて頂ければわかりやすくなるかと思います。A,B,C,Dと4つのタイプがありますが、どの部屋のプランがお気に召すでしょうか?

 

プランA部分のリビングと寝室の状況です。

 

 

こちらも少し方向を変えてプランAをみています。南側に対して開かれた明るい部屋ができているのがわかるかと思います。

■構造的安定性と経済性を考えたプランニング

さて、今までは、各住戸のプランの面白さを鑑みて、違うプランをA、B、C、Dとあげましたが、経済性という観点からみると

全て同じプランのほうが経済性がよく、構造的にも安定することが予想されます。そのことを検証していこうと思います。

この赤いラインを見て頂ければ、壁のラインがずれており、架構体が綺麗にそろわないと思われます。

ここで、構造計算ソフトを使い、構造体の確認と壁量 筋交いの量の確認をしておきます。

許容応力度計算による構造計算を行い、耐震等級3を満たす 架構体の設計を行います。

■壁の仕様の確認

構造体です。筋交いが多く入っているのがわかるかと思います。壁は、構造用合板を用いずに、石膏ボードだけの構造計算としています。筋交いと石膏ボードで、大きな地震力にも耐えることのできる構造体となることがわかります。このことは、構造用合板を多数用いることがないため、工事費を 安くすることができます。構造用合板の値段は、通常の石膏ボードの値段の3倍以上します。

△部分は筋交いの位置を示しています。偏心率は、中央の緑の丸と緑の二重丸を見て頂ければわかるかと思います。少し壁の量は北西が多く、そちら側に二重丸の位置が寄っていますが、問題ない範囲で、緑の丸の中に納まっているのがわかるかと思います。耐震等級は3となりました。風圧力の計算も行っていますが問題ない構造設計となりました。

■基礎床伏図

基本的に1階の耐力壁の下には基礎が存在します。その他 人通口を設けて、耐力壁の柱廻りにはアンカーボルトを設置しています。

▲はM16であり、●はM12です。階段廻りは多くなります。

■1階床伏図

基本的には南北に、材を通し、東西方向にその後、小梁をかけるという形式をとります。南北の材は、木材が4m材を使うため、途中、継手によって対応します。

■3階、2階床伏せ図

基本的には1階と同じ仕組みです。階段部分は、頭が当たらないように、梁は一部存在しなくなる箇所もあります。

■小屋伏図

 

垂木の状態と束の状態を表しています。

■鉛直構面の荷重状態

 

赤色となっている部分は存在せず、耐力自体は 筋交いと石膏ボードで 検定は問題ないとしています。

■風圧力による鉛直構面の状態(東西状態)

 

検定に関しては、白部分ばかりで、全くもって問題ない状況といえます。

■風圧力による鉛直構面の状態(南北状態)

 

風圧力による鉛直構面の検定として、南北方向は、1階部分が緑色となっており、1階南北方向にはそれなりに、風による負荷が生じることがわかると思います。構造耐力的には、東西、南北方向共に問題ない状態です。

■地震力による水平構面

水平構面を検定しますと、水平部分は、検定比でみて、白部分となっており、全く問題ございません。

■柱脚柱頭接合部

検定比をみると 構造体の隅角部分は、緑色となっており、負荷がかかっていくことが予想されます。今回は、ホールダウン金物50KNと60KNのものを使用しております。その状態であれば、構造体として問題ないようです。

■土台アンカーボルト

土台アンカーボルトも検定比でみると隅で青となっており、緑の部分も所々見受けられますが、基本的には問題ないです。

■横架材の曲げ

■横架材のたわみ

 

 

 

■横架材のせん断

■耐風梁

 

階段の所の梁が一部 対象となるようです。

■梁の部材寸法

 

大部分が、梁のサイズは、青色の120もしくは105であります。一部180のものも見受けられます。

梁のサイズが270のものや、下図により300のものも見受けられます。

これらは、平面図で 柱の下に耐力壁が存在せずに寝室と食堂の間仕切りが存在している箇所となります。下に柱が存在していないため、多少 梁せいが太いものが存在することになります。

 

構造体としても 負担が少ない 建物であるといえるかと思います。

■まとめ

今回、土地の形状や、建築基準法等の条件からどのような建築が可能かを模索し、構造計算も行いながら、プランニングを決めていっています。構造用合板を使って構造体を作ると、工事費が割高になりますが、構造計算で確認しながらプランニングをしていくことで、石膏ボードと筋交いによる構造体の補強でも、十分な地震に耐える構造体とプランニングが出来上がります。構造用合板を全体的に用いるとなると、m2数が大きいため、それだけで多くの工事金の増額になることも予想されます。費用を抑えながら、設計を行うことが重要であり、構造と一体となったプランニングを考えることが肝要かと思います。

 

 

 

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