狭小間口の家 木造3階建て(ペントハウス付き) 建築計画と構造計算(間口3.4m 奥行14m 許容応力度計算)
狭小間口の家の計画と許容応力度計算による構造計算を行った経緯を記載していきます。
Contents
■内観パース
東側から見た鳥観図です。3階にキッチンがあります。
西側から見た鳥観図です。
3階のキッチンや食堂部分の開放性がデザイン上の売りとなっています。階段はシースルー鉄骨階段とします。
2階を北側から見た断面パースです。
2階を北西からみた断面パースです。
2階を南西からみた断面パースです。
2階を南東からみた断面パースです。
1階を南東から見た断面パースです。
1階の鳥観図です。
■計画概要
間口4m 奥行16mほどの東西に細長い土地の形状に木造3階建ての家を建てます。
狭小間口であり、3階建てでかつ、塔屋が存在しており、屋上ではBBQができるようにしています。
西の道路側からみた外観です。西側はバルコニーが、2,3階に存在しており、屋上は、屋根ではなく、デッキとなっております。棟屋(ペントハウス)からでて、屋上でBQQができる計画です。1階手前は、耐力壁が多く存在しており、道路側から入って、車庫となっています。
東側からみた図です。3階はバルコニーとなっており、その手前の部屋はリビングとなっており、屋根が勾配天井となっています。この部分は、吹き抜けのような空間になっており、気持ちの良い空間となるかと思います。
南側からみた外観です。1階は、東側が納戸の部屋で、南側にも玄関扉を設けて、外から入れるようにしています。
北側からみた外観です。北側は、斜線制限があり、棟屋部分の屋根が、急勾配の屋根とならざる得ない状況でした。
建物概要としては、棟屋高さ 11.25m 塔屋軒高さ 10.905m 建物最高高さ 9.755m 最高軒高さ 8.555m
です。
延床面積 130m2 1階床面積 44m2 2階床面積 47m2 3階床面積 40m2 塔屋面積 3m2 車庫 27m2。
木造準耐火建築物 容積率、建蔽率ともにいっぱいの建築物です。
1階床高さは 565 2階床高さは 2740 3階床高さは 2714 天井高さは2400ほどです。
1階平面図です。
間口が3.4mと狭い建物のため、とても壁の配置に苦戦します。道路側に682.5の狭小壁を5つ配置し、駐車場奥にも、2つ配置します。壁倍率は、3.3の壁(CN50@75)を使用します。一部、フロッキング構法という壁も採用します。(これは、長さ455mmの耐力壁でも壁倍率を6ほど確保できるものです。)偏心率の対応に苦慮しながら壁をバランスよくいれていきます。
階段下の壁(X10Y3-4)は、上部に階段がくるため、耐力壁にはならないので注意が必要です。許容応力度計算は、偏心率の計算とともに、水平構面のバランスも 耐力壁でみながら 配置していく必要があります。
2階平面図です。
浴室の横と、西側にバルコニーをふたつ設けています。今回バルコニーは200mmほど部屋からあげていくことになります。もし、バルコニーを室内床と同面にしたい場合は、浴室とバルコニー部分の下の梁を200mm下げなければなりません。しかしながら、浴室下には、柱がないため、200mm下げた梁を配置することはできません。西側のバルコニーは可能でしたが、今回は、室内から200mmあげた計画としています。洋室Aの西側の壁も、偏心や、間口方向の壁が存在していないため、とても苦戦します。X1‘通り壁は、Y0’-1間は、フロッキング狭小壁(455mm)Y3-4壁は、壁倍率3.3の構造用合板を2枚張りとしています。下部に壁があるため、計画は可能ですが、当初は、1階の壁はX1通りに存在しており、ずれているため、完全に計画がNGになります。その他、Y2.5X8.5の柱もとても重要な柱となっています。あと、X14-15通りのY3-4間は柱が2本近接していますが、これは、3階の二重耐力壁の下に柱が存在していたほうが良いため設定しています。壁倍率3.3と2.5は、どちらも構造用合板の耐力壁ですが、釘のピッチが@75と@150で壁倍率がことなります。これは、偏心率と水平構面の状況をみながら、設定します。基本的には、フロッキング壁の柱の下には、柱がある状態が望ましいようで、そのことを加味しながら壁を1,2,3階と設定していくのですが、とても神経をつかいます。
3階平面図
X11ーX15は勾配天井となっています。X8.5ーX11は、上部が塔屋です。キッチンから東部分は、ほとんど梁間方向に壁がないため、とても苦戦します。X14ー15で壁が二つ存在していますが、これは、室の邪魔にならないように、壁を付け加えて、梁間方向の耐力を保つ方法です。これで、室内では壁の邪魔にならない空間が出来上がります。X8.5Y2の柱は、上部に塔屋がのってくるためどうしても必要な柱となります。
■軸組図
軸組図です。1階は、耐力壁が西側に多く配置されるため、柱も多く配置されています。
2階と3階のバルコニーは梁がさがっていません。横の桁は、一直線にのび、こちら、構造的には良い構造になっています。2階の壁も西側部分をふかしているため、柱が追加で入っています。
東側のバルコニーは、450mm下げることにしました。上部の垂れ壁がくるため、下がりが必要です。
3階キッチンの東側のリビングは、勾配屋根になっています。ここは、登り梁で処理することにしました。これで、梁みせもできますし、屋根の水平剛性も確保することができます。
勾配屋根部分です。ここは、火打ちもいれています。
東側からみた軸組の様子です。
■鉛直構面について
(白が耐力壁が一番強く、青が次点で、緑がギリギリの耐力壁の状態)
鉛直構面をあらわしています。3階東西方向は 白くなっており、強いです。1,2階は青くなっており、若干3階よりはよわくなっています。東西方向は、構造用合板で耐力壁を作る方法もありますが、できるだけ、筋交いと石膏ボードにて対応して、予算を削減できるように考えています。偏心率を考えて、ところどころ構造用合板をいれています。
南北方向は、梁間となり、緑色となっていて、耐力的にはギリギリの状態です。
■水平構面について
(白が耐力壁が一番強く、青が次点で、緑がギリギリの耐力壁の状態)
水平剛性です。白くて問題ない状態です。2,3階床は、構造用合板24mmとして、剛床の仕様となっています。
水平剛性の状態です。耐力壁が多くつくところや、バランスの悪いところは、水平剛性もわるくなります。これは、耐力壁のバランスとともに見ていく必要があります。3階は吹抜けとなっておりその部分は水平剛性は、多少弱いです。
■横架材接合部について
横架材接合です。3階が多少弱いことがわかります。
■柱脚柱頭接合部の状態
柱頭柱脚接合部です。黄色が多く出ており、ギリギリであることがわかります。今回、1階部分で60KNまでHD金物を使用しています。筋交いが接合部には良い影響を与えないため、悪い箇所は削減します。
■屋根ふき材の検定
屋根ふき材もギリギリです。これは、ひねり金物ST-15というものを使用しています。くら金物にすれば、もう少し、良い値になります。
■必要梁せい(サイズ)について
梁の断面寸法全体を表現しています。赤い部分が一番梁せいの大きい箇所で、390となっています。これは、上階の耐力壁の壁倍率が大きいため、梁に負担がかかり、梁せいを大きくせざる得ないためです。その他、下の階に、受ける柱がない梁は、せいが大きく300mm以上のオレンジ表示となっています。一般的には甲乙梁で120mmぐらいの梁が多いですが、荷重が多くかかるところは梁せいが大きくなります。
橙色は240や270の梁せいの部材であり、それなりに存在しています。
オレンジ色の梁は、330,360のものであり、上に耐力壁がのっており、壁倍率が大きいため、それなりの梁せいが必要になります。
桁方向の梁も1本のためオレンジ色の330の梁せいとなります。
■柱と梁の負担荷重
さて、以下 柱と梁の負担過重の状況をみていきます。
1階の梁に、勾配屋根の荷重がのっていくのがわかると思います。
下に柱の存在しない、玄関手前上部の梁ですが、上階の荷重を多く受けているのがわかります。
塔屋下の梁は、やはり、塔屋の荷重をうけています。
先ほど記載した390mmの赤い梁ですが、このように上階のバルコニーと屋根の荷重をうけています。
柱の負担過重を示しています。
1階の柱というのはとても重要であるということがわかるかと思います。
1階の柱で、勾配屋根の荷重を受けています。
以上、間口の狭い土地に対して、細長い建物を計画した例をあげました。
これは、耐震等級3(耐震等級1)は難しい状況でしたが、施主の要望により、もう少し、1階や3階に 壁を加えることができたりすれば、耐震等級3も可能となります。
狭小壁を多く配置したり、壁倍率の高い壁を、バランスよく配置することによって、鉛直構面だけでなく、
水平構面や、梁のせん断と曲げにも適切に配慮することができるようになっています。
3階建ての計画で、ご検討の際は、ぜひ当社までご連絡ください。
この場合は、間口が狭いため、短期接地圧の検討が必要であり、コンクリートの基礎の設計の知識もかなり必要になります。
また、3階建ての建築物の建築設計と建築計画は、2階建てよりも、構造の知識が重要となります。構造計画と間取りやプランニングを同時進行できなければ、とても、計画は難しくなると思います。木造3階建ての計画をされておられるかたは、当社までご連絡ください。