耐震1次診断と構造補強計画(鉄筋コンクリート造 7階建て 共同住宅 神戸市中央区)その他耐震工事補助金の概要(神戸市)
神戸市中央区にて 鉄筋コンクリート造 7階建て 共同住宅の 耐震診断を実施しましたので記載していきます。(1次診断)
まずは既存の建物の調査を行い、建物の現状を把握します。
Contents
■建物調査
構造体がどうなっているか、しっかりと調査を行い、現状を把握し、正確な図面を作ることが最も重要な任務となります。
外観です。6階建てで、7階部分が塔屋と屋上と小さいながらも居室が存在しています。
建築面積119.96m2 延べ床面積 804.72m2
構造種別 RC ラーメン構造 地形地盤:良好
ピロティの有無:なし 平面形状:良い 立面形状:良い
不同沈下:認められない 柱や壁のひび割れ: 認められない
鉄筋の膨張亀裂:認められない コンクリートの劣化:特になし
平面形と立面形のずれ:特になし
立面図です。間口は狭く奥行きが長い形状となっています。
外観をみても、南北方向は、壁の量がしっかりとあり、梁間方向は少ないのではないだろうかと予想されると思います。
1階平面図です。住居部分の入り口と店舗部分とが分かれています。黒く塗った部分が耐力壁となっている部分です。
東西部分の壁が少ないことが印象として挙げられます。
2階から6階部分の居室と階段、廊下廻りです。南北方向は壁が多いと思いきや、ブロックの壁も存在していました。灰色部分がブロック壁です。東西部分は、居室の中には、全く耐力壁が存在していません。
R階部分の平面図です。こちらも、階段室、EL室以外に居室が2つ存在しており、壁はそれなりに存在しています。これらの壁の厚みとサイズ、また梁の位置とサイズを確認していきます。
地下部分の図面です。壁の厚みは調査します。図面がある場合は、図面から採取しますが、ない場合は、上階との整合性をみながらどれぐらいのサイズの壁と柱が存在しているのかを確認します。AC65 65→ 650mmサイズの柱です。AW 40 207とは、400mmの厚みの壁が2070mm存在します。
■耐震診断
RC造の耐震診断を行います。診断の第一歩は、調査をして、図面を完成させることです。
所見:
本建物は、鉄筋コンクリート構造の建物で、簡易診断による耐震指標値(Is値)の最小値は0.37でした。南北方向(X方向)で2階で耐震判定指標値(Iso=0.8)を満足していません。東西方向(Y方向)では1~5階で耐震判定指標値(Iso=0.8)を満足していません。1次診断は断面積にコンクリート強度によるコンクリー トのせん断強度を乗じて地震力に対する抵抗力を算出する方法で形状指標、経年劣化を含めています。本建物のようにラーメン構造(フレームで地震力を負担する構造)の建築物となると柱・壁の断面寸法の他、鉄筋の部材寸法及び強度、基礎の形式その他さまざまな建築構造的要因により耐震性の評価は大きく異なるため、今回の診断でこの診断法ではIs値算定表においてNGの階で、柱・壁の断面積が不足している結果となっていますので壁の追加・柱のせん断補強等の補強案について建築士に相談されることをおすすめします。
①構造床面積算定
地階平面 45.6m2
1階床面積 店舗76.95m2 住居 43.01m2 1階延床面積 119.95m2
2~6階床面積 住居 119.96m2
7階床面積 住居 39.36m2
面積算定を行いました。
②壁柱断面積の算定
例として 地階の耐力壁を計算します。
耐力壁のタイプは3つに分かれます。AW1:両端に柱のある壁 AW2:片側に柱のある壁 AW3:両端にも柱がない壁
X方向
AW1:40×555=22200cm2
AW2:20×210=4200cm2
AW2:40×620=24800cm2
AW3:30×120=3600cm2
Y方向
AW1
X1:40×472=18880cm2
X2:40×200=8000cm2
X2:40×514=20560cm2
AW2
X1:20×235=4700cm2
AW3
X1:20×220=4400cm2
と、このように 壁の量を集計していきます。
1階壁柱伏図です。柱は650角 1階階高さは 2750mmとなります。
1階部分の耐力壁と柱の断面積を集計して表にしていきます。柱の断面積は、Y方向で検討します。
2階壁伏図です。柱は650角。
2階の壁と柱の断面積を計算して表にしています。AW1とAW2とAW3をしっかりと見分けながら 図面と照合させて入力を行います。
6階も同様にして計算していきます。
7階壁柱伏図です。7階は柱がないため、すべてAW3となります。上部に重量となる階がないため、問題ないです。
7階の壁の断面の集計表です。全てAW3です。
壁の量が計算出来たら、床面積(㎡)建物重量 断面積の総和 柱断面積の総和 コンクリート強度補正係数
壁の強度指標 形状指標 経年指標 から 耐震判定指標である Is値を求めます。
壁の集計から、階による補正係数、コンクリート強度補正係数、形状指標、経年指標などを検討して、壁量が足りているのか検証を行います。X方向は、2階、Y方向は1階から5階でNGがでています。基本的に、X方向は、南北方向で壁量が多いため、2階のみNGとなっています。Y方向は、予想された通り 間口が狭く壁量が少ないため、2階から5階までNGとなります。6,7階は、それほど上階の重量がのってくることがないため、OKとして、壁量をみたすことになります。0.8以下であればNGとなります。
診断結果を表した表です。
南北方向(Y方向)は、2階のみ0.72という数字がでて、NGとなりました。
東西方向(X方向)は、2階で0.37と非常に低い数値になっています。
壁率柱率による判定ということでグラフ化しています。
αAW/∑AfとαAc/∑Afとの対比にて グラフ中の丸の位置を決め、バランスを提示しています。水色の中に〇があればそれなりにバランスがいいといえますが、X方向2階は外に存在しており、状況は良くないことがわかるかと思います。
■補強計画
①1階の壁の増設について
1階がNGがでていたため、壁を増設します。X2通りに厚み30cmの幅204cmの壁、X4通りに厚み30cm幅310cmの壁
1階平面図です。この1階部分の赤ラインのところに 壁を増設します。
②2階から5階の壁の増設について
2階から5階も壁を増設します。X2通り 厚み60cm幅204cm (AW1)厚み30cm幅170cm(AW3) X4通り 厚み 40cm幅290cmの壁(AW3)
2階から5階の平面図です。赤ラインに壁を増設します。
Y方向に壁を増設したことにより、Y方向のIs値がどの階も0.8以上となり、NG→OKとなりました。またY方向の壁を増設したことにより、X方向の2階のNG→OKとなりました。これは、バランスがよくなったことにも起因しています。
これで、補強計画の計算は終わります。これから図面を作成し、工事をしていくことになります。
■調査時の内観写真
道路側から1階店舗部分を見ています。間の壁はブロック造となり、耐力壁とはなりません。
店舗部分から道路側をみています。ところどころに開口部が存在しています。
1階 共同住宅のエントランス部分です。奥の扉は地下に行く階段です。南北方向に壁が存在しています。
2階から6階の廊下部分です。これらの壁は、耐力壁としては基本的にみなせません。この辺りを図面と現状をよく調査することが、業務としては求められます。
こちらも廊下内の壁ですが、基本的には耐力壁となりません。
階段室の状況です。この壁は、耐力壁としてみなして計算していきます。
地下部分です。浄化槽が存在しています。
■神戸市の 耐震補助金の概要
今回のような規模の共同住宅の耐震工事を行う場合は、神戸市では 戸当たり50万×16戸=800万の補助金がでます。
補強計画の補助金 戸当たり 12万×16戸=192万円の補助金がでます。
なお、耐震診断は無料となっています。
各自治体より補助金が出る場合が多いですので、ぜひ利用されることをお勧めします。
その他、神戸市においては、以下のような耐震の補助制度が存在しています。詳しくはお問い合わせください。
耐震の補助金とともに工事にもかなり補助金がでることがわかります。昭和56年度以前の建物は、できるだけ、耐震診断を行い、耐震工事をされることをお勧めします。その旨は、特殊建築物の定期調査の時に、耐震診断を推奨される旨が記載されているかと思います。
緊急輸送道路の場合は、さらに、追加して耐震工事に補助金がでます。
対象物の規模です。