鉄筋コンクリート造 戸建て住宅 耐震診断と構造補強計画(神戸市垂水区)

神戸市垂水区にて 鉄筋コンクリート造2階建ての 延べ面積210m2の戸建て住宅の 耐震診断と構造補強計画を行いましたので記載します。

 

■現地調査

既存の図面が存在しない建物であったため、最初から 図面を作成していきます。

南向きの外観です。典型的な鉄筋コンクリート ラーメン構造 の2階建て 戸建て住宅です。柱のサイズ、壁の厚み、サイズ、柱の位置、2階がどのようにのっているのか、劣化状況、床下の様子等、数多くの情報を調査にて調べ上げていきます。

1階平面図

2階平面図

南立面図

東立面図

北立面図

西立面図

1階平面図 耐力壁 壁伏図

X1通りのY方向の壁は、柱と柱の間に耐力壁が存在しているため、AW1の壁となります。この壁の厚みは120mm 長さは435と380となっています。その他、柱が1本の耐力壁はAW3となり、厚み120mm長さは161cmの壁となりました。Y1とY2 方向に耐力壁がなく、スカスカな状態であることがわかるかと思います。基本的には、柱の断面積で、持たせているということになりますが、この東西方向が 弱いのではないかとの予想がつくかと思います。Y3通りに関しては、外壁面にそれなりに、耐力壁が存在しています。柱1本に対して、耐力壁がつく、AW2の耐力壁です。その他X4通りよりも東側の壁は、柱が横につかない状態で、壁が存在しているため、AW3として、耐力壁として、計上します。

2階平面図 耐力壁 壁伏図

X2通りのY1ー2の壁は、柱と柱の間に壁が存在するため、AW1となります。その他、外壁廻りは、AW2もしくはAW3となり、その壁の厚みと幅を測定して、総計して耐力要素の計算をします。

 

■耐震診断

①柱率、壁率集計表

 

先ほどの壁柱図より、1階と2階の 柱の断面積と、AW1(柱と柱の間にある耐力壁)、AW2(柱が1本だけ側面にある耐力壁)、AW3(両側に柱のない耐力壁)の長さと厚みをもとめて、総数を計算していきます。

②構造床面積の算定

1階の求積図です。これで1階の面積がわかります。1階の面積は152.11m2

2階の求積図です。2階の面積は58.55m2

構造床面積の計算をしています。面積を表にしています。

③壁 柱 断面積の算定

 

1階のX方向とY方向の耐力要素を すべて掲載しています。AW1とAW2とAW3と柱の断面積を確認しながら入力していきます。

 

2階のX方向とY方向の耐力要素をすべて掲載しています。1階と同様です。

④Is値の算定

 

建物の床面積と重量と 耐力壁と柱の断面積により、耐震要素が十分なのか計算して判定を行いました。

1階X(東西)方向で、Is値が0.63となり、NGとなりました。 NGとならないためには、0.8必要になります。

ちなみに、Y方向の壁量もIs値0.81と  ギリギリOKなため、少しでも 補強されることをお勧めします。

 

1階東西方向でNGは でていますが、それなりに、バランスがよいことがわかります。

⑤その他の要素

・経年劣化

不同沈下は認められない。柱や壁のひび割れは、1階東外壁面で特に見受けられました。

鉄筋の膨張爆裂は、認められませんでした。コンクリートの劣化は特になしです。仕上げ材の剥落は認められました。

経年指標は、築年数が30年以上のため、0.8として計算することとした。

・平面形状

ラーメン構造。耐震壁の均等配置は、おおむね、均等に外壁廻りに存在していました。

平面形のずれは存在していないです。平面的な凹凸は存在せず。

・立面形状

ピロティは存在せず。上下階の壁量の差は、ある程度大きいといえるかと思います。

地盤面の段差は存在していませんでした。

・形状指標は 0.81としています。

 

■耐震診断まとめ

・本建物は、鉄筋コンクリート構造の建物で、簡易診断による耐震指標値(Is値)の最小値は0.63でした。

・東西向(X方向)1階で耐震判定指標値(Iso=0.8)を満足していません。・東西方向(X方向)2階及び南北方向(Y方向)では1~2階で耐震判定指標値(Iso=0.8)を満足しています。・今回の診断は柱・壁の断面積による、あくまで簡易診断です。簡易診断は断面積にコンクリート強度によるコンクリートのせん断強度を乗じて地震力に対する抵抗力を算出する方法で形状指標、経年劣化を含めています。

・この診断法ではIs値算定表においてNGの階で、柱・壁の断面積が不足している結果となっていますので壁の追加・柱のせん断補強等の補強案について建築士に相談されることをお勧めします。

・また、調査により現況では外壁・屋根防水共に劣化が確認されましたので、今後補修をお願い致します。2階は、屋上が存在しており、建物は総2階ではないです。

■補強計画

 

先ほどの診断書の1階X 東西方向でNGがでていることがわかりましたので、ここを補強すればいいことがわかると思います。

例えばですが、Y2通りの東西ラインをみると 赤のラインを引いていると思いますが、厚み200幅900の壁を4つこの位置にもうければ、1階の東西方向の壁量を満たします。これは、南面は開放的にしたいがために、Y2通りで、計画しますが、Y3通りの壁の厚みを増やして補強するという手法もあります。

 

壁量を増やしています。

 

耐震診断では 0.63でNGとなっていた数値が0.99となり、NGが解消されました。

壁量を確保して、改修します。

これですと、それほど費用が掛からずに、耐震補強を行うことができます。

なお、外壁部分や、防水による劣化は必ず改修して、保全することが条件となります。

■外観内観写真 劣化状況

西側外観です。

 

2階は 防水に勾配がとれておらず、雨が溜まっていました。劣化とします。

外壁部分は、クラックが存在していたようで、補修はされていますが、だいぶ以前のものです。東側外壁

基礎廻りに亀裂がみられました。

RCの建物ですが、内装は木で仕上げられています。室内に壁がほとんどないことがわかるかと思います。

南側の室の内観です。

 

浴室もタイルの割れ等 存在していませんでした。

 

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