神家昭雄氏 建築訪問(建築士会神戸支部 建築セミナー)
所属する建築士会神戸支部で 来年度予定している 神家昭雄先生の講演会に先立ち、実作をみせてもらうべく、士会の人や、有志と岡山までいき、見学して参りました。神家先生は、古民家再生で全国的にも有名で、学会賞をとられたこともあるかたです。
順路は 牛窓のVILLA→神家昭雄建築研究室→里山サテライトオフィス→みかわてらす
というものでした。
①牛窓のVILLA
工務店が自らビラを作り、所有し、運営するというスタイルのようで、工務店の人が基本的には一人で作っておられるようです。まだ、途中でしたが、大枠の構成を見せて頂きました。
敷地に降り立った瞬間から、南の海の絶景が待ち受けていました。神家さんと施主が土地をだいぶ探したらしいのですが、ここに勝てる土地が見つからなかったそうです。ただし、既存の建物の基礎だけが残存していて、基本的には、それに沿って建物を構築せざる得ず、当初の設計はあまり気が進むものではなかったようですが、やってみると意外にうまくいったとのことでした。
デッキからみる絶景です。デッキ下は雨を通したくないので、折版を敷設していますが、樋を見せたくないということで工夫がなされていました。写真をみれば 樋をうまく隠していることがわかるかと思います。
1階も軒下の良い空間になるだろうと思います。
玄関入った部分の西側は、ワインセラーとバーのようです。天井に木を貼るのがいい感じになっています。
床はタイル敷。巾木はなかったです。廻り縁もないですね。
大開口のリビングです。屋根の架構は登り梁形式でした。
この部分は構造体を化粧あらわしとして、北側の屋根との間に隙間を作り、ハイサイドライトで、光をとっていました。北側からは、眺望の要素のほうが強そうですね。
こちらは、デッキにバーベキューできる場所をもうけていました。
海をみながらのバーベキューは楽しいでしょうね。
バーらしいです。
垂木も化粧みせをしていました。
下階におりて、浴室にいきます。
広くて海を眺めながら 浴室につかるという贅沢ですね。
1階部分の寝室です。立体的で面白い空間でした。
夏場はベッドが暑くてむすため、下にすのこ敷ができるベッドとするようです。
排水がこないため、大きな浄化槽が必要で、苦戦されていました。
眺望と既存基礎をいかした設計でいい感じでした。 予算的には、苦労されているかと思われ、既製品をうまく使っているようでした。
②神家昭雄建築研究室
岡山市内にある先生の事務所を訪問。左半分は大スパンで車庫とするため、鉄骨造としており、木造と鉄骨造の混構造となっていました。外壁は2階部分、焼き杉板。屋根はガルバリウムで、上部にトップライトが存在しています。
事務所入り口部の建具は木製建具で、ガラス貼り。道から人が事務所に来やすいように、街に事務所が開いている設計となっていました。少し奥まったポーチになっているのもいいですね。
車庫と玄関の間はブロック積とし、ブロックの隙間には、白く意匠されていました。
中庭です。株だちの良い木が植えてありました。枕木を敷いて、神家さんの小屋が左手にあります。
書庫もかねているようです。垂木と垂木の間にもガラスが存在していました。ガラスを入れてから屋根をはめるようです。
中庭から事務所棟をみています。
道路側入り口からです。道路からとても入りやすい雰囲気に設計されていました。天井ははらずに架構みせです。
2階から1階をみています。暖炉がありますね。
吹抜けの良い空間になっていました。
2階は、大きな丸太の梁で支えられ、トップライトが存在。夏場は暑いとのことでした。
事務所は、人が訪れやすく、街に開いた設計であるということが印象的でした。
③里山田サテライトオフィス
役所が運営するシェアオフィスということです。公民館的な位置づけで、地域の人が集まる施設ということでした。
外観です。
もともとは、写真左手にも建物が存在していましたが、雨漏りがひどく、ボロボロであったため、撤去して、コンパクトにまとめたとのことでした。土間玄関に、土間キッチンがあり、開放的なコワーキングスペースと北側にブーススペースといったところです。間取りは以前の民家の間取りを踏襲してプランされていました。これが回答としては正解だと思います。架構に沿ったプランニングを行うことが重要かと思います。
下屋部分のスレート屋根は残念でしたが、撤去したぶぶんの屋根は、垂木をみせてうまく意匠されていました。
玄関です。伝統的な素材を用いて、モダンさを感じさせるのが先生の手法らしく、確かにモダンさを感じました。腰掛けがあるのもいいですね。玄関は、かなり気合いれて意匠されています。枠を左官で幾重にも作られていますね。玄関土間部分は、石貼でした。
玄関入ったところの梁みせです。柱は、新建材をそのまま使い、改修の履歴を感じさせるという主旨で、問題とせず、新建材をどんどん使うということでした。
先生が説明してくださっています。玄関からコワーキングをみています。床がとてもいい感じです。
玄関奥の土間キッチンです。壁には、木材を貼って木の温かみを感じさせます。対照的に、キッチンはステンレスを使い、新旧の対話ということでしょうか。
キッチン上部のトップライトです。ためらいなく、新建材を使い、モダンさを感じさせるということでした。
こちらも既存の黒い柱に対して、新建材をあてています。天井は、葦を貼った天井としています。
縁側空間です。建具も、アルミサッシの既製品を使っていました。下屋部分の屋根は瓦で、このサッシも木製でと言いたいところですが、予算の兼ね合いもあるかと思います。
縁側部分の柱と梁は込み栓で処理されていました。金物は基本的には使われないそうです。
天井を木で貼っていますね。
空調は、なじんでいました。こういう色の既製品があるようです。
北側のトップライトです。
構造的には、ベタ基礎を全体的にうち、耐震はしっかりされているとのことでした。
予算の制約があるなか、優先順位をつけて、新建材をどんどん使い、古民家再生をしていることが印象的でした。
その場合、細部にこだわり過ぎないという手法も必要なのかもしれません。
③サテライトとみかわてらす
こちらも人が集まる施設として、古民家を再生されています。1階が食堂と2階が土産物屋です。
外観が良い感じです。新しい木建具が、なじんでいます。
木製建具が、いい感じでアクセントになっているかと思います。
平面図です。こちらも里山田と同様に、架構に沿ってプランニングされていました。構造的には座敷1の床の間部分に柱がないため、不安ではありますが、それも、梁等うまくしょりされているかとは思います。座敷1は天井高さが少し他の場所よりも高くなっているため、2階平面図で吹き抜けの表現となっています。ゾーニングとしては、北側がサービスエリアで事務所や厨房があり、南側部分は、お客さんが食事をする場所となっています。
庭が整備されて綺麗な庭でした。
座敷1部分の床の間廻りが意匠的には見せ所で、脇床部分の外壁側壁を撤去して、雪見としていました。
和室で 椅子式の家具です。
縁側部分はタイル敷となっていました。
縁側部分の枠廻りです。旧材に新建材をどんどん使っています。
書院です。
空調は、うまく隠されていました。
こちらも置床式の空調が隠されています。
2階は、トラスとなっていました。
2階はギャラリーですが、土産物売り場となっていました。
ミカワテラスも、耐震はきちんとされているようで、ベタ基礎を打設されているとのことでした。
こちらは、旧材と新建材がなじんで、意匠的には いい感じだと思います。
古民家再生という手法も、結局最終的には、設計者の感覚的な部分が大きいのだなという印象です。
架構や構造体をきちんと大切にして、そこを元にしながら、遊びをいれて、自分なりのモダンに仕上げるという手法かと思います。あとは、予算的な制約が大きいため、どう優先順位をつけてデザインしていくのか。やはり基本が大切だと思った次第でした。