空き家活用に関する建築士の役割等 講座受講
建築士会の空き家活用のための講座を受講してきましたので、その中で気になったことを記載していきます。
講座の内容は、以下。空き家活用に関する行政の考え方や法律 補助制度等を学ぶことができました。
①神戸市の空き家の現状とその取り組み
②兵庫県の空き家の現状とその取り組み
③空き家など対策関連法
建築基準法
④空き家など対策関連法2
相続 民法
⑤空き家などに関する不動産の税制
⑥空き家などの相談会の内容
⑦まとめ
⑧実地研修(南あわじ)
①神戸市の空き家の現状とその取り組み
神戸市の空き家の現状としては、住宅数11万戸の約13%程度となっています。空き家のうち7万戸が賃貸用、売却用であり、それはそれほど問題ではないが、賃貸用でも売却用でもない空き家が約4万戸あります。そのうち共同住宅が15000戸、戸建て長屋が20000戸。著しく腐朽があり、役所が問題としているものが5000戸あるようです。相談における築別の割合ですと、築40年から80年ぐらいの住戸が圧倒的に多くなっています。売買が成約したとしても、0から100万円の範囲のものがほぼ半数を占めます。腐朽しておらず、流通していない空き家は、約3万戸程度と考えればよいでしょう。
区別でいうと、長田区と兵庫区が多いですが、絶対数でいうと垂水区が住宅の数が多いため、多くなるようです。
西区、北区も地域単位で空き家ばかりのエリアが存在してき始めています。
空き家の神戸市への相談件数は毎年6000件ほど存在しているようです。そのうち建築に関わるものが24%その他マンション管理、財産処分などがあるようです。
使える空き家 空地を売却 賃貸 地域利用等の活用を神戸市は促し、使えない空き家は解体し、土地の活用を促進しています。
解体には、戸当たり60万の補助金をだしており、昨年度は700件の実績があるようです。
空き家に対しては、すまいるネットを中心に相談窓口を設け、専門員の相談や所有者への広報啓発活動を行っています。また活用に関しての補助制度を設け、空き家を地域の賑わいの拠点となる施設への変更も促しています。
令和4年度は 建築家との協同による空き家活用推進事業として、戸当たり500万円の補助金をだして、20件の採択をおこないました。令和5年度も事業は継続し、戸当たり200万円の補助金を出す予定のようです。
②兵庫県の空き家の現状とその取り組み
兵庫県の住宅総数は2013年までは増加していたが、そのあと減少してきています。空き家の数は36万戸で、空き家率は13.4%と全国の空き家率とほぼ同等といえます。空き家率は、淡路では20%を超えてきており問題としています。腐朽破損がなく利用できるにも関わらず流通していない空き家が11.3万戸存在しており、それはもったいないものとして、兵庫県として問題としています。
兵庫県では 倒壊する危険性のある特定空き家に関して、十分な取り組みを行っています。税金の軽減措置を取りやめにしたり、解体等の助言 勧告 命令等を行う仕組みを作っています。
その他 利用できるにも関わらず流通していない空き家が11.3万戸存在しているため利用を促進。
・既存住宅の流通促進にむけた取り組み(インスペクションの費用を補助)
・空き家活用支援事業 改修工事の補助金を最大500万円まで
・古民家再生促進支援事業
古民家を地域資源として再生し、地域の活性化につなげるとともに、伝統的木造建築技術の維持、継承とまちなみ景観の維持、保全をまもるため、古民家の再生に関わる専門家派遣や改修費の一部を最大1000万円まで補助する仕組み。
・空き家を活用した移住促進地域の活性化
・空き家の活用に関する法律の規制緩和措置
市街化調整区域内の住宅の用途変更等が容易にできるように規制緩和
敷地が道路に接する長さが短くてもホテル等の建築が可能なように、地区を重点整備地区として設定。4mから2mに緩和。
③空き家など対策関連法
これに関しては、2025年に法律が変わり従来4号建築物といわれていた確認申請で構造確認が必要でなかった建築物も、確認申請が必要になります。
木造2階建ての空き家をリノベーション(大規模修繕)する際には、建築確認申請が必要になるという認識を持って、我々建築士は対応していかなければなりません。
④空き家など対策関連法2
空き家の管理 活用を考えるうえで所有権の理解が必要。
空き家は、複数人で所有する場合があり、活用を考える上では、同意が必要となります。各共有者の持ち分に従い、その過半数で、方向性を決定していく必要があります。遺産分割が未了の場合や、相続人がいない場合など様々な状況が考えられますので、紛争に巻き込まれないように証拠としての書面を残し、何かあれば弁護士に相談する体制をとることが肝要です。
⑤空き家などに関する不動産の税制
空き家にかかる税金は、大きく 所有時 売却時 賃貸時 相続時 と分けられます。
A)
所有時→固定資産税と都市計画税が納税通知されます。
売却時→譲渡所得税(所得税 住民税)が確定申告する必要があります。
賃貸時→所得税 住民税が確定申告する必要があります。
B)
空き家にかかる税金とは?
不動産を所有
固定資産税 =固定資産評価額×1.4%
都市計画税=固定資産評価額×0.3%
住宅用地
200m2までの部分
固定資産税 固定資産評価額×1/6×1.4%
都市計画税 固定資産評価額×1/3×0.3%
税制上の空き家が増える理由
土地3000万 建物1000万の物件
3000万×1/6×1.4% +3000万×1/3×0.3%=10万
1000万×1.4%+ 1000万×0.3%=17万 合計27万円
もし 取り壊すと住宅軽減措置がなくなり
3000万×1.4%+3000万×0.3%=51万円
大きく税金が増えることになります。
C)空き家対策特別措置法(特定空き家)
①倒壊の危険が著しく保安上危険な状態のもの
②著しく衛生上有害となる恐れのある状態のもの
③著しく景観を損なっているもの
特定空き家に指定されれば、住宅の軽減措置がなくなり、所有者にデメリットになります。
D)売却時空き家にかかる税金
譲渡価額‐ (取得費 + 譲渡費用)=譲渡所得金額
取得費は購入した金額+改良費
税率は 長期(5年以上)譲渡所得 20%
短期(5年未満)40%
E)相続空き家の3000万円特別控除
被相続人が居住の用に供していた家屋でその人の死後、空き家状態になっていたものを相続人が売却したときは空き家に関わる3000万円特別控除適用可能です。
譲渡価額‐ (取得費 + 譲渡費用)-特別控除=譲渡所得金額
空き家特例を受けられる要件
・なくなる直前まで被相続人が一人で住んでいたもの
・建物は昭和56年5月以前に建築されたもの
・土地と建物はセットで相続すること
・相続から譲渡まで事業用 貸し付用 居住用でないこと
・相続開始から3年を経過する年の12月31日までに譲渡すること
・額が1億円以下
・建物を取り壊すまたは取り壊さず(要耐震改修)売却のどちらかであり、これは売却者でも購入者でも可能
※従来は売却者しか制度にあてはまらず、売却者は取り壊しも耐震改修もしないため、空き家の流通上支障となっていた。
F)相続税
どれぐらい財産があれば相続税がかかるのか?
基礎控除額は 3000万+(600万×法定相続人の数)
財産が基礎控除以下なら申告も納税も不要となります。
具体例として、子供一人の場合
1億円→1220万円の相続税の発生
2億円→4860万の相続税の発生
⑥空き家などの相談会の内容
神戸市のすまいるネットに来る相談件数は年間約6000件です。
そのうち、専門員の相談まで至るのは500件ですが、多いと考えてよいようです。神戸市の空き家の相談窓口の対応のレベルは、全国でもトップクラスをほこり、相談があってから、問題解決に至るまでの 相談シート その後の法律や不動産、税金、建築の専門家がそろっており、依頼者に対応しているとのことでした。
ただ単なる相談に終わらずにしっかりとした問題解決に至るように、日々、仕組みを更新しているようです。
⑦まとめ
空き家問題は、神戸市はかなり積極的に取り組んでいます。実際は、空き家を再生して活用するよりも、解体して空地にするほうが需要はあるようです。その後の空地の活用方法というものが重要になりそうです。兵庫県全体では、使えるのに流通していない空き家が11万戸もあり、もったいないのでなんとか活用していく方法を考えないといけないと思います。淡路は特に、空き家率が高く、さらに空き家だらけになっていく印象です。淡路島の空き家の活用方法は、今後さらに考えていかなければならない問題だと思います。歴史的建造物となる古民家は、県が助成金を多く出していますし、その古民家を地域交流施設にしたり、道の駅的な建物にしたりして空き家を再生していく試みはとても地域社会に意義のあることだと思います。その他、2025年に建築基準法が変わり、木造2階建ての大規模改修に確認申請が必要になります。これは大きな変更だとは思われますが、昨今の地震被害により木構造への意識の高まりを受けての国の対応かと思います。当社も今までの培ってきた木構造の知識や経験を活かして、空き家の再生に取り組んでまいりたいと思います。
⑧2日目 実技講習
実技講習を受けに 南淡路市までいってまいりました。
江戸後期に建てられた古民家で現在空き家になっているものを実測して、実技講習を行い、1日目のペーパーテストが行われました。
ついが邸と呼ばれる瓦ぶきの建物です。淡路は、二階を設けて、倉庫に使っているような民家形態が多いようです。
開放的な南西の室です。
メインエントランスを入ると、豪壮な梁が出迎えてくれます。
玄関土間部分から西側を見ますと、南側が客間となっています。
南側の室は、開放的になっており、客人をもてなす場所のようです。
とても開放的な室で縁側がついているのが特色です。また古い時代の建造物なので、1間ごとに柱が存在しており、建物を支えています。これは古い形式をよく表しています。
床の間のある南西の暖かい部屋において、講習が行われました。
1時間ほどで実測を行いました。建物が大きすぎて、西側下屋部分は入りきりませんでしたが、今回は主屋の図面をとることが目的でした。6間取りの格式の高い民家となっており、南側が接客の空間、北側が住人の生活の空間となっていました。
緑色の部分が二階がのっているところです。北側の二階がのっているところは壁が少なくて、多少心配ではありますが、
下部には、差鴨居が存在したり、部分的に梁を補強したりして、なんとか力の流れを作っていました。耐震的には、壁は少ないですが、軸組が明快で、綺麗に屋根がのっており、美しい形をしていると思います。
古い図面が存在していました。建物北側には酒蔵が存在しており、豪商もしくは、豪農の住居だったようです。
風水を考えて家が作られていたようです。とても興味深い図面となっています。
なんとか、筆記試験もパスして、修了証を頂きました。
これで、役所が推奨する 法律や補助金の仕組みもある程度は把握しましたので、その知識をベースとして、
空き家の活用も 今後、行っていく予定です。ぜひお問い合わせください。