多元世界の建築
概要
先日、多元世界の建築と題する 有意義なトークセッションの場に居合わせましたので、感想を記載していきたいと思います。西洋近代と植民地(帝国)主義の延長線上で、現代資本主義のもとにおいて、建築の設計等の業務も含め、全ての生業を我々現代人は、行っています。しかしながら、石油を中心に天然ガス等による化石燃料を採取して成立するこの経済形態では、特に、プラスチックという循環が不可能な素材が存在し出したことにより、人間以外の生態系も壊れていき、今日の大災害等が表れだし、持続可能な社会の限界がきているように思います。その中で、デザインの理論を組みなおす作業が必要と考えられ、建築の設計も含めて、仕事を見つめなおす必要があるのではないかというトークセッションでした。
そこで、実際にそのようなことを踏まえながら、どのような建築を作っているのかという事例が二つありました。
一つは、ベトナムのチャドウィックという場所で、メコン川の下流、河口に位置する場所に住宅を設計するという事例。もう一つは東京の渋谷にテナントビルを作るという事例。
事例1
ベトナムチャドウィックの住宅の設計に関しては、川がよく氾濫するため、周辺の住宅は 高床式になっており、基本的には、2階より上で寝ている。調査をしてみると、既存の住宅は窓が少ないのではあるが、2階の床が隙間のある透けた床で床自体が大きな窓となっており、1階より空気がうまく2階、3階まで流れる換気の床となっっていました。通常の壁にある窓は明かりとりの窓です。また、洪水がおきると1階が浸水するため、それを2階から見て、状況を観察するための床でもある。そのことをしっかりと踏まえて、その場所で、床の在り方を考えながら建築の設計を行っているとのことでした。
事例2
渋谷のテナントビルは、7階建てのRCのビルであるが、3階以上に大きくベランダを張り出し、屋上緑化をし、土壌と雨水の流れを考えて、うまく大雨の時にも水がはけるような設計を行っている。また、周辺環境の生態調査を行い、その屋上庭園にどのようにして、鳥をうまく呼ぶことができるかを考えて建築設計を行っている。といった設計事例でした。
まとめ
どちらとも 自然との相互依存性を取り戻しながら、アクターの再編成を行い、自然と資本主義の間をどう見つけながら建築設計をおこなっていくかという疑問に 多少なりとも回答しているように思われました。やはり、建築の設計とは、そのもの単体で考えるのではなく、周辺環境の調査を通して、考えていくべき話となってくるのであろうという感想を得、大いに刺激を受けたトークセッションでありました。