平屋を二階建てに増改築した事例 古民家の間取り
古民家平屋の住宅を、二階建てに増築した事例を記載していこうと思います。
規模:床面積1階 165.62m2 軒高さ 3m 最高高さ 6.5m
東側の洋室 ダイニング 水廻りは段階的に改修済み 南側に玄関と広縁
基礎:のべ石基礎と布基礎 内部:玉石基礎
内部:玉石基礎 中央にピット状の土間コン
耐力壁:西側は土壁 東側は 石膏ボード
水平構面:天井下地は無垢板張り 垂木@455
接合部 金物なし 床の仕様:火打なし
東側は 建築当時は土間部分だったところを、順次時代の生活にあうように、床を作って、水廻り空間をととのえる間取りになっています。西側は田の字型4間取りの 民家によくあるプランで、南側二室は、接客の空間になっています。
耐震診断を行いました。X方向Y方向 ともに0.7以下の評点となり、倒壊する可能性が高いとなっています。
壁のバランスは、重心と剛心の位置が近くに存在し、よいようです。全体的な壁の強度が足りないという解釈でよいみたいです。
■改修
平屋を二階建てにしています。西南側から見た外観です。
一階平面図
補強計画として、まずは、通し柱に付随する壁を補強します。あとは、二階の耐力壁が線状でのってくる
Y7とY9の 耐力壁線を中心に固め、重心と剛心の位置が離れないように検証します。
・座敷廻りは、既存材をできるだけ残します。
・台所の水廻りは撤去して新築します。
・2階を増築します。
・屋根は全て改修し、銅板葺きとして、建物の軽量化をはかります。
・雨水の建物への侵入を防ぎ、強い基礎を作るため、全面的にRCのべた基礎を作ります。
外周部は立ち上がりを設けるほか、土間コンも打設して、排水処理を徹底します。
(北側は、山の伏流水が溜まりやすい地形となっており、年中湿った状態です。)
・耐力壁、水平構面ともに面材を用います。(構造用合板、Jパネル厚み36)
床は根太レス構法、構造用合板24mmを用います。
・柱頭柱脚には、平成12年告示の金物をしっかりとしようする。
・柱脚部は殆ど腐朽しているため、切断し、土台をもうけます。
・二階の外壁線の直下には柱を設置します。
二階平面図です。二階は、剛床にして、外部耐力壁にて、耐力をもたせる構造にしています。
二階がのってくる建物の位置を示しています。Y9 Y2 X1 X13 の通りが重要であるとわかるかと思います。
また、二階の荷重をうまく一階に流すためにX01 X12-13 Y1-2 Y9-10の 範囲の下屋部分の水平構面がしっかりしていることがのぞまれます。水平構面がしっかり固まっていないと、二階妻面が過大変形し、倒壊する危険性があります。具体的には 4周釘打ち相当の水平剛性を確保するため、面戸板で垂木間を埋めて野地板を釘止めします。野地板は構造用合板24mm厚さです。また、耐力壁線となる軸組の接合部はDボルトなどでしっかりとつなぎます。二階の構造用合板は、下屋部分の垂木掛けにN50@150で釘止めする等、二階の荷重が一階に流れるような工夫を各所に備えます。
南側から見た補強の計画の三次元モデルです。
北側から見た三次元モデルです。
基礎の状態です。基本的な一階の壁のラインには、下に基礎が存在している状況になります。
また、耐力壁線として重要な、主鉛直構面の下には、しっかりと基礎のラインを築く必要があります。
軸組図です。Aの部分が既存の差鴨居になります。束がない場合は、全荷重が既存の差鴨居にかかることになります。差鴨居のみでは断面不足なので、新規床梁で荷重を処理します。スパン4550では過大断面となるため、新設柱位置に束を設置します。これはしっかりと金物で上部下部をつなげる必要があります。
既存の建物で、平屋を二階建てにしたものが それなりに多く存在していますが、一階と二階の構造体が十分に結節されていない例も、いくつかの改修実績において確認しています。二階と一階下屋部分の整合性や、1階の柱と2階の柱のしっかりとした緊結を考えて、構造計画を行うことが重要になります。