構造計画を十分検討した戸建てリノベーション(築40年の住宅 延床面積約100m2)
1980年ごろに建てられた木造2階建ての戸建て住宅を構造補強を十分に検討して、リノベーションした事例を記載します。
南側外観です。
西側外観です。
北側外観です。
屋根は瓦葺きです。外壁は木ずり下地モルタルです。
規模:2階 52.17m2 1階 58.92m2
図面は、平面図のみ存在していたため、立面図と断面図は作成して、リノベーション計画にのぞみます。
基礎の仕様:無筋コンクリート布基礎 床の仕様:火打なし 接合部の仕様:釘 かすがい
地盤:第二種地盤 軸組:在来軸組構法
外壁:木ずり下地モルタル塗り+石膏ボード程度
内壁:石膏ボード程度
水平構面:火打なし 垂木(35×90)根太(35×90)@455
接合部:ほぞ差し 釘打ち かすがい程度
一階平面図です。薄いラインが二階が載っている所になります。一階の二重丸と丸の位置が離れていますが
これは、重心と剛心の位置が離れており、壁のバランスが悪いことがわかります。東側に壁が多く存在しており、西側に壁が少なく、補強するのであれば、西側に壁を多く配置するか、東側の壁の量を減らす必要があります。
建物の形状は悪くないですが、二階が一階に対してせり出して存在していることに注意が必要かと思います。
想定される建物のフレームです。南側からみた図
北側からみた図
耐震診断を行いましたら、1階の南北方向(Y方向)0.16 東西方向で0.41 2階の東西方向で0.38 南北方向で0.41 となります。
二階が一階に対して南側でせり出しており、さらに、一階西側部分に壁が少ないために南西にむけて二階の重みで、建物が倒壊されることが予想されます。
■リノベーション計画(構造計画含む)
リノベーションでは、平面プランで、生活が豊かになることを想定して、40年前の間取りを現在快適住めるように、計画を練っていきますが、構造的な整合性も重要なポイントになるかと思います。
構造計画の概要
・1階と2階の柱位置及び 耐力壁線のずれが多くみられるため、基礎梁の配置も考慮に入れながら、上下階の整合性を図るようにプランを変更していきます。
・屋根は瓦葺きから 金属葺きに変更し、建物の軽量化をはかります。
・耐力壁は筋交い、構造用合板、水平構面は 杉板張り 火打で補強します。
・構造評点が1.5以上となるような構造計画を行います。
・柱頭柱脚の接合部金物は、平成12年の告示によるものをN値計算にて使用します。
・基礎はべた基礎に変更します。基礎梁を格子状に配置して、鉛直、水平剛性を高めます。
既存の無筋基礎部分は、鉄筋の基礎をケミカルアンカーにて緊結します。
・軸組は、1,2階の柱位置を極力一致させて二階床梁の負担を軽減します。
・断面不足となる梁には枕梁補強を行います。
・大引き 根太 垂木 母屋は 必要に応じて撤去し新設します。
・筋交いは45×90のダブルを設置します。
・1,2階の耐力壁線を一致させ負担過重に応じた配置とします。
・二階の耐力壁線上及び棟木の下に小屋筋交いを設けます。
・野地板は杉板張りとし、小屋梁レベルに火打を設けます。
・二階床面は火打にて補強します。
・柱頭柱脚の接合部は引っ張り力に応じた金物で補強します。
・梁の継ぎ手仕口は短冊金物 羽子板ボルトにて補強します。
プランはだいぶ変わります。
二階平面図です。二階から考えますと X5Y5通りを主要な間仕切りとして耐力壁と柱を配置します。
一階もこのラインを中心に 耐力壁を固めるように検討します。ダイニングキッチンの部分は、南北に3640mm
の柱のない空間が現れます。ここの上部梁は補強をおこないます。
二階のラインと共に補助的なラインを付け加えています。
偏心率を補うようにダイニングの南側に壁を付け加えています。
偏心率は、重心と剛心の位置が近く問題ない状況です。1階梁間は2730までにおさえて、壁や柱を計画しているのがわかると思います。
Y5のラインは、改修において基礎をしっかりと新設します。柱と壁が載る範囲に、既存基礎に対して基礎を再設置します。またY5通りの梁は梁せいが足りない場合は補強、雲筋交いも小屋に設置します。
各所、柱と梁に金物補強を行い、適切に上部から下部へ力が流れるような計画とします。
赤丸部分は、下屋部分に耐力壁があり、野地板を斜め張りにして水平剛性を高めます。
南からみた補強図です。一階はかなり耐力壁で固めていることがわかると思います。二階は、今回は筋交いを入れて補強していますが、金物だけの補強で、壁の補強は最小限にする計画が良いかと思います。(予算的なことを踏まえて)
西から見た補強図です。
北側から見た補強図です。
以上、戸建て住宅をリノベーションする際には、間取りのプランの機能性だけでなく、構造計画がかなり重要な位置をしめるということがわかるのではないかと思います。