西脇小学校耐震工事等(重要文化財)見学とシンポジウム

平成26年度より、議論が始まり、最近改修工事が終わり、学校として使われている西脇小学校へ見学にいき、シンポジウムにも参加してきました。改修工事と工事後の状況がみれるということで、見学会に参加。

■見学会概要

南棟のエントランス前

 

西脇市は、江戸時代から播州織の産地としても知られ、産業の隆盛もあり就学人口が増加し、1934年から37年にかけて、現在3棟の2階建ての木造校舎とその付属建物が新設されました。3棟の校舎と渡り廊下、東西の便所は、2017年からの工事により保存改修され、現在も、現役の校舎として使われています。

第一校舎こそ、中央に腰折れ屋根を有し、半切妻破風の下部には、車寄せを設けるなど瀟洒な洋風の校舎の構成をとっていますが、背後の2棟は、、この時期にたてられた大規模校舎と同様の標準的な外観となっています。

白色の下見板張りのスレート材の外壁を青色に塗られたつけ柱と窓を縁とる水平材を規則的に繰り返して、外観のアクセントとしています。内部の教室や廊下、階段は、塗装を施さず、素地のままの木材が多く用いられています。内部は全国の木造校舎に近い形をしています。

3棟の校舎を結びつける東西と中央に位置する3列の渡り廊下も魅力の一つとなっています。渡り廊下に挟まれた中庭には、瓢箪池や花壇が作られ、植樹された様々な木が存在し、子供たちの憩いの場となっています。

見学会にて、役所の人からうけた説明です。

■改修基本計画

改修工事の基本計画としては

・建て替えの話があったが、3棟とも残し改修を行う。

・耐震補強工事

・多様化する学習ニーズに対応→教室内の設備の改修

・障害のある子どもも問題なく学習できる施設→バリアフリー化 二階渡り廊下 EV設置 スロープの設置

・アスベスト材は撤去

・内装については木のぬくもりを継承 →室内改修は木をベースにした改修。

ということでした。

・外壁スレートはアスベストが含まれていたために、手バラシにて撤去を行い、構造用合板を下地になり、構造を強くして、またアスベストの存在しない材でもとと同じような状態に戻す。

・つけ柱のグレイは、色を採取して、かなり検討を行い、以前とほぼ同色のもので塗装を行うことに成功した。

・手摺は南面だけ 当時の状況に復元している。

・バリアフリーを実現するために廊下はウッドデッキ敷とした。奥が段差があるが、スロープとして処理している。

天井材は以前のものを再塗装してなるべく残している。床は劣化が激しいため何度もやり替えている。

梁をそのままみせている。

窓は、二重窓にはできなかったが、1.5重窓として、寒さを緩和するものとした。

教室は、以前の状態になるべく近いものとしている。耐震補強をおこなった壁のみ新材を用いたが、それ以外は基本的に旧材を使用している。

教室の横にトイレが存在していなかったため、トイレを敷設したとのことです。

外構は既存の外構をもとにバリアフリー化を中心に整備を行っている。中庭は芝生をはり、快適な居場所となっている。

 

各棟をつなぐ渡り廊下です。廊下からも良い景観となり、子供たちの交流スペースとなっているとのことでした。

 

10cmほどの隙間が橋と棟の間に空いており、エキスパンションジョイントとして機能しています。

今回、各棟1200m2が3棟となるため、合計で3600m2となります。3000m2を超えるため、建物を現行の建築基準法では耐火建築物としなければならないのであるが、そのための改修を行うと、以前の建物と違うものになってしまいます。よって、この渡り廊下の鉄骨を特殊耐火塗料にて施工することにより、特別な申請を行い、耐火建築物でなくとも、問題ない申請を行ったということでした。

その後、記念室にて改修工事の状況を見学。

■改修工事の状況

・遮音対策

2階の床から1階に大きく音が漏れないように、フローリングの下にインシュレーション材を敷き、構造用合板を2重貼りにする。天井裏にグラスウールを敷き、吸音効果を図る。机と椅子の足に保護キャップを設置。

・冬の寒さ対策

ストーブをやめ、廊下の吹きさらしを防ぐ

旧状では吹きさらしであった教室廊下に建具を設置して内部化。エアコンを各室に設置して、廊下の天井裏に機器をつけ、ダクト式を使用。教室南面のガラス窓にインナーサッシをいれて隙間風を防止。校舎全体の断熱効果をはかる。

(西脇小学校記念室の掲示板からの引用)

上が教室の1年間の温度であるが、冬期にはストーブをつけていても、10-17度程度の気温となり、20度に達することなく寒い状態である。

■耐震工事(おもに構造の話)

(西脇小学校記念室の掲示板からの引用)

梁のたれ下げ防止のため、張弦材が使用されていました。当時からよく考えられています。

西脇小学校木造校舎保存改修工事の様子/西脇市 (nishiwaki.lg.jp)

基礎コンクリートを増し打ちするために、鉄筋を入れている状況です。

(西脇小学校記念室の掲示板からの引用)

基礎の補強の話です。基礎は、独立基礎であったため、鉄筋の入った基礎を増し貼りし、金物でつなげて荷重がうまく基礎に伝わるようにしています。従来の基礎は無筋コンクリート基礎となっているようです。

(西脇小学校記念室の掲示板からの引用)

教室と教室の間の間仕切り壁は構造用合板と金物でしっかりと補強し、従来の木造の耐震仕様と同じ手法で補強しています。

西脇小学校木造校舎保存改修工事の様子/西脇市 (nishiwaki.lg.jp)

スケルトンの状態。根太も細かいピッチでいれています。

西脇小学校木造校舎保存改修工事の様子/西脇市 (nishiwaki.lg.jp)

間仕切り壁補強の様子です。

 

 

表面は耐火ボードにておおっているようです。

小屋組みはトラスとなっており、梁はほおづえで二重に挟んで柱に荷重が伝わるようになっています。

西脇小学校木造校舎保存改修工事の様子/西脇市 (nishiwaki.lg.jp)

既存の小屋組みですが、所々火打ち材が入っている場所があります。改修は基本的には水平ブレースを使っています。

 

 

水平ブレースをいれて補強しているのですが、そのブレースの補強のために梁下で木枠を作成して、ボルトで梁につなげる工法としていました。小屋組みの水平構面を固めるのに参考になる手法かと思います。またトラスは、雲筋交いにて補強していました。

(西脇小学校記念室の掲示板からの引用)

外壁の下見板材を取り去った後、下地に構造用合板をいれて、さらに下見板材を張るという方法で構造補強をおこなっていました。

南棟のエントランスは、設計当初の状態に復元されていました。瀟洒なデザインとなっています。

■シンポジウムの内容

その後、見学を終えて、シンポジウムへ向かいました。

内容は主に、この小学校の保存と活用について でした。

 

東大の腰原教授(以前お世話になりました)と藤森先生と神戸大の足立先生による話と対談となりました。

・足立先生の話

足立先生の話は、この小学校は、取り壊されずになぜ残ったのかということでした。

3棟とも建て替えたり、1棟だけ残して、他は建て替えようという話もありましたが、校舎3棟という配置的な都合が大きかったのではないだろうか というお話でした。また、重要文化財になったものの、生徒の数はどんどん減っており、これからの運営もとても大切ですという話でした

・藤森先生の話

藤森先生は、日本の木造小学校の建築の歴史の話でした。

江戸時代の識字率は、3割程度であったため、日本が明治時代に入り近代国家として、しっかりと存在していくためには、小学校をしっかりと作ることがとても重要な政策であったということでした。当初はアメリカの小学校を模範として、縦長の校舎が作られたが、その後、孤の字型になり、木造校舎の設計仕様書みたいなものが作られて、西脇小学校のような横長の校舎がつくられていくことになったということでした。

・腰原先生の話

腰原先生の話は、大まかには、西脇小学校のような良い建物をどう残し活用していくのかということでした。

文化財にもなっていないのに、地元の人が残して使用する古い木造の建物がいくつか存在しています。少子化で小学校という用途ではつかえなくとも、地元の人が自分たちで面倒をみてその建物を使っていこうという意思のある建物もあるようです。現存して使われていない良い建物を、みんなから愛され、地域のシンボルとなる建物に再生して、地域を盛り上げるような活動を地方は行っていく必要もあるのではないでしょうかという話でした。文化財ではなくとも、個性的なのこぎり屋根の工場(織物工場)が西脇市には残存しているが、どんどん壊されて行っている状況もあり、もっとみんなで考えたいとのことでした。

久々に腰原先生にもお会いでき、有意義なシンポジウムとなりました。

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