鉄骨造の基本的な考え方

鉄骨造の基本的な考え方を記載していきます。

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①H型鋼

鉄骨は、曲げる力が働くとき、形状は力の向きに長いほうが有利で、上端と下端が最も抵抗します。よって、フランジだけを残し、それ以外の部分をそぎ落として、薄く残した形(ウエブ)が重量も減り最も合理的なため、この形をしています。

柱にH型鋼を用いる場合は、強軸方向と弱軸方向で断面性能の差が大きくなるため、設計時の方向性に注意を必要とします。ブレースの配置が必要な場合は、弱軸方向とブレースの方向を合わせると経済的で合理的な設計が可能となります。小規模建築で、柱にH型鋼を用いる場合は、強軸方向と弱軸方向を交互に並び替え、建物全体でバランスをとることにより、経済的な建物とするケースもあります。

②形鋼の種類

その他、アングル、角パイプ、I型鋼と呼ばれるものもあります。

上記の鋼を有効に組み合わせることで合理的な架構が形成されます。

③鉄骨造の基本構造

上から

折板

水平ブレース M16-20程度

H型鋼小梁 スパンの1/15程度

外壁ALCパネル 100-150程度

押出成形セメント板 15-25mm

スラブ デッキプレート+コンクリート 50+80=130

片持ち梁 2m程度

角形鋼管柱 200×200ー350×350程度 6-22㎜

a  ベースプレート 柱幅+200 基礎柱型 ベースプレート幅+100程度

 

 

 

 

アンカーボルト

アンカーボルトベースプレートに通す。

b  柱脚の状態

 

ベースプレートの穴は一つでもずれていたら、建て方がストップしてしまう。

c 柱脚の断面

 

 

露出柱脚

柱の下にはベースプレート その下には無収縮モルタル で基礎とアンカーボルトでつなぎ

座金とダブルナットでつなぎます。

ナットをダブルにするのは、繰り返し荷重によるナットのゆるみを防止するため。

ベースプレート上端からアンカーボルトの余長はナット3個以上が原則。

柱とベースプレートは突合せ溶接。

④仕口の仕組み

 

上記部分 角型鋼管の柱にH型鋼の梁が取り付く部分で名前を仕口といいます。

 

 

柱の廻りについている節がダイアフラム。

 

鉄骨の梁は、力学上柱にそのまま付けられないので、ダイアフラムという鉄板で仲介します。鉄骨の内側にも鉄板が入っています。

 

 

角パイプの柱に直接H型鋼の梁を溶接すると、地震などで梁が柱を押したときに局部変形をおこします。

それを避けるためにダイアフラムという鉄板をいれることで梁から柱に流れる力がスムーズになります。

ダイアフラムを25mmだします。これがないと地震時に具合が悪いです。

外壁材と柱部分は、ダイアフラムの出を考慮したクリアランスを確保します。

柱と梁をつなぐ通しダイアフラムは、柱面から25mm程度出すのが一般的です。

鉄骨柱と外壁の間の寸法は35mm必要です。

 

柱と柱の間にダイアフラムを挟んで溶接します。

 

仕口は、短くカットした柱の上下にダイアフラムを溶接して、あらかじめ箱をつくります。鉄骨の柱と梁は、このサイコロを介してつながっていきます。

⑤ボルト接合と現場溶接

仕口の根元についている鉄片は、エンドタブ

 

 

切り欠き部分はスカラップ

 

 

上記はブラケットといいます。

ブラケットは梁となるH型鋼をもってきてボルトで締めて固定します。

ノンブラケットは柱と梁のウェブに直接ボルト接合をして、フランジの方は現場で溶接します。

通しダイアフラム

梁の応力を柱や他の梁に伝達したり、仕口の局部変形を防止するために柱の仕口に取り付ける鋼板。

内ダイアフラム(鋼管内部)

鋼管内部にダイアフラムを溶接する形式のもので、1つの柱に梁せいの異なる梁を取り付ける際などに用いられます。

エンドタブ

溶接個所の両端部で、全断面を確実に溶接できるように取り付ける鉄片。溶接の始端と終端では、溶接不良がおきやすいため、捨て板として、母材の溶接線の両端にとりつけます。

スカラップ

梁のウェブをまたいで裏あて金を取り付けられるように また 溶接が1筋にできるようにウェブに設ける楕円形の欠きこみ。

開先

開先角度は35度。開先角度が広すぎると溶着金属量が増えて溶接部の収縮量が多くなり、変形しようとする力も多くなります。逆に狭すぎても十分に溶け込まなくなります。

最近はノンスカラップタイプのものが増えています。ノンブラケットの場合は、ウェブはガセットプレートを介してボルト接合し、フランジは、ダイアフラムに溶接します。

⑥鉄骨の2次部材

アングルピース

外壁材の下地をとめるためにこれを鉄骨に溶接します。

 

 

エレクションピースは、建て方の時に柱どおしを仮とめする部材です。

柱を現場で溶接するときには欠かせません。

小梁や根元に使われる補助部材として、ガセットプレートがあります。

所定の位置に所定の大きさで取り付けて貫通孔に必要な強度を確保します。梁にあける穴は、給水管や排水管の通り道あるいは排気ダクトの通り道となります。

⑦柱脚の設置

鋼製フレームによる固定方式

アンカーフレームが動かないように固定するため、捨てコンクリートにボルトをセットするか、プレート溶接用の鉄筋を埋めておきます。

 

木製型枠による固定方式

コンパネや桟木にボルト穴をあけて差し込み、ピアノ線などを用いてアンカーボルトが動かないように固定します。

埋込柱脚は、鉄骨コンクリートの根元を基礎コンクリートの内部に埋め込む柱脚をいいます。

鉄骨柱を基礎に埋め込む場合は、基礎の鉄筋が鉄骨にぶつからないようにする必要があります。

鉄筋の外側からコンクリートの仕上がり表面までのかぶり厚さも確保する必要性があります。

施工が大変であるというデメリットがあります。

 

 

露出柱脚

鉄骨柱と鉄筋とのとりあいが楽になり、コンクリートをうつ回数も減らせます。

露出柱脚の既製品

既製品は、精度を確保しやすい。製作ものの柱脚に比べて基礎コンクリートの定着性がよいため、基礎の根切深さを浅くできるという利点があります。

 

このあと、基礎の配筋をして、コンクリートの打設を完了すれば、建て方の準備は完了します。

⑧露出柱脚の納まりと注意点(柱サイズが200mmの場合)

外壁とベースプレート 基礎柱型の位置関係

 

柱芯と梁芯をあわせると基礎柱型は出っ張ります。外壁面から基礎柱型が50-100mmぐらい出っ張ります。

露出柱脚の場合、柱脚を固定するアンカーボルトやリブプレートは、ベースプレート上にそのまま露出して取り付けられますが、

これらの出っ張りは床レベルの設定に関係してきます。

 

ボルト頭に1FSLを設定しても、リブプレートがつきでる場合があります。

⑨高力ボルト摩擦接合

高力ボルトです。

ボルトでとめるとスプライスプレートは鉄骨の母材との間に摩擦力を発生させます。

締め付けが正常に完了すると先のピンテールがねじ切れるようになっており、ボルトとナットの線がずれていれば、ボルトが正しくしめられたとわかります。

高力ボルトの締め付け順序

フランジは接合部の中央から端部、ウェブは上から下に向かって締め付けます。

⑩ブレース

ブレースというのは、四角いフレームに引っ張り力をかけることで、フレームを高める働きをする部材です。ブレースをいれることで、柱や梁の断面を小さくできます。

 

どのブレースを使用するのかは、設計者の判断によりますが、住宅では断面の小さい丸鋼や平鋼、山形鋼、溝形鋼がつかわれることが多いです。

内装壁を作成するために取り付ける胴縁がH型鋼梁の外側につく場合は、丸鋼にターンバックルといった厚みのあるブレースを使用しても壁の中に納められます。しかし、壁厚を薄くするために、胴縁を上下の梁の間に納めるような場合は、フラットバーのような厚みのないブレースにしないと胴縁に干渉してしまいます。

 

ブレースの断面方向の厚さは端部のボルトやターンバックルの厚さで決まります。胴縁の位置は、ブレース厚さ、クリアランスを考慮して決めます。

ブレースの設計で大事なことのひとつに根元の強度があります。

 

 

ブレースは、地震時にブレース材そのものが破断するよりも、根元のガセットプレートが破断することのほうが多いです。

 

H鋼であれば、ガセットプレートに補強リブをつけます。

 

角型鋼管柱なら、裏側にプレートを貫通させるなどの対策をとります。

 

 

角型鋼管柱をガセットプレートに取り付けるときは、ガセットプレートを反対の柱面まで貫通させて溶接します。柱表面を溶接すると耐力的に弱いです。

水平ブレースの納まり例

母屋を梁上に設置した納まり

母屋は梁上に載せたほうが部材数が少なくて済むため、施工も容易です。母屋取付用のガセットプレートの数も少なくなるため、鉄骨加工工場での製作も容易になります。

母屋とブレースを梁の高さ内に揃えた納まり

水平ブレースをH型鋼の下フランジに取り付ける場合は、ブレースが取り付く先の梁の位置を確認することです。

ラーメン構造の仕口

ブレース構造の仕口

ブレース構造とした場合は、柱は軸力だけ、梁も長期荷重だけになることが多いので、ラーメン構造より断面サイズを小さくできる可能性があります。

 

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