木造建築物の各部構造部位と用語

木造建築物の各部構造部位と用語に関して記載します。

 

実際の建築物の構造体の状況は、こちらの記載をみればわかるかと思います。

木造平屋住宅 構造補強(神戸市北区) | 高橋建築事務所 (report-takahashi.com)

 

1⃣基礎土台

1.基礎

基礎の寸法は、厚み120mm以上 トップ鉄筋D13 12φ以上
D10@300
布基礎に設けた換気口は、地震時には構造的に弱点となることがあるので、換気口廻りは径9mm以上の鉄筋で補強する。

2.土台

土台は柱の脚部を緊結し、桁や胴差、及び筋交いとともにトラス構造として軸組を形成するために必要な部材で、布基礎に緊結する。
① 樹種は、耐腐朽性、耐蟻性のあるヒノキ、ベイヒノキ、ヒバ、ベイヒバ、クリを用い、十分な防腐 防蟻措置を行う。
② 断面寸法は、100×100mm以上 かつ柱と同じ寸法以上とし、多雪区域においては105×105mm以上とする。
地上1mまでの部分は、防蟻、防腐措置を行う。なお、心持材は、辺材にくらべて耐腐朽性 耐蟻性がある。

3. アンカーボルト

1) 役割 柱 筋交いから土台に伝わる力を基礎に伝わるようにする。
2) 水平力により、建物が基礎からはずれたり持ち上げられたりしないようにする。

4. 土台の継ぎ手 仕口

① 土台の継ぎ手は腰掛かま継ぎ、腰掛あり継ぎとする。
② 土台の仕口は十字部は大いれありかけとし、隅角部は片ありかけとする。

2⃣小屋組み

1. 洋風小屋組み

1) 構造

洋風小屋組みはトラスで屋根荷重を支える構造であり、各部材には軸方向力が生じ、比較的大きな梁間のとき有効である。
部材相互の接合は、軸組が一点で交わるようにする。振れ止め、小屋筋交いは小屋組み相互を連結し、小屋組みの面外方向の変形を抑えるために入れる。合掌の断面は、陸梁の断面と同寸以上となり、最も大きな断面となる。陸梁の継ぎ手位置は、梁間の中央部付近が望ましい。

鼻母屋
母屋のうち最も軒寄りにある母屋。和小屋では、軒桁と同一部材で、洋小屋では陸梁を介して軒桁の上にのる。
棟木
母屋とともに垂木を設け、小屋組みを桁行方向につないで固める機能をもつ。
転び止め
合掌の上に母屋を取り付ける際に、母屋が移動、回転しないように留めておく部材。
振れ止め
材幅に比べてせいの高い曲げ材を用いる場合、曲げ材の中間に取り付けて、振れを防止する横架材の総称
合掌
トラス部材で母屋を受ける斜め材。圧縮力と曲げモーメントを受けるので、最も断面が大きい材になる。
眞束
小屋組みの中央に位置する束。棟木をもち、合掌、方つえを受け、陸梁を吊るもので引っ張り力をうける。
陸梁
小屋組みの最も下にある梁。和風小屋組みにおける小屋梁にあたる。

2) 継ぎ手 仕口

洋風小屋組みの部材の仕口には、引っ張り力が働く場合があるため、接合金物を有効に使用する。

2. 和風小屋組み

 

 

1) 構造

小屋梁などに小屋束を立て、屋根の荷重を支える構造で、小屋梁には、曲げモーメントが生じる。スパンが大きくなると曲げモーメントも増大し、大きな部材が必要になるので、住宅など、間仕切り壁が多くスパンの小さい構造物に用いられる。なお、梁は曲げ作用をうける水平材である。
小屋梁の断面寸法は、荷重の状態、スパン、梁間隔などを考慮し適切なものとする。組み方に、京呂組と折置き組がある。

小屋筋交い 風圧力により小屋組みが倒れないようにするために、小屋束相互を連結し、
屋根骨組みの剛性を高める部材である。

火打ち   小屋組み 床組みにおける水平面において、斜めにいれて隅角部を固める部材である。

隅木  寄棟屋根の母屋の交点にかけ渡し、配付け垂木の端部を支える部材である。

飛梁  寄棟などで隅木を受ける出隅交差部を支える小屋束をたてるために、軒桁と小
屋梁の間にかけ渡す部材である。

2) 継ぎ手 仕口

① 小屋梁の継ぎ手

受け材上で台持ち継ぎボルト締めとする。
小屋丸太の所要断面寸法は、末口寸法で表す。小屋梁の断面寸法は、荷重の状態、スパン、梁間隔等を考慮して適切なものとする。

② 小屋梁と軒桁の仕口

かぶとありかけ羽子板ボルト締めとする。

 

③ 母屋の継ぎ手

束心より150mm内外持ち出し、腰掛かま継ぎ、または、腰掛あり継ぎとする。

④ 垂木の継ぎ手

母屋上でそぎ継ぎ釘継ぎとする。

 

ひねり金物
屋根の棟や軒先などには、局部的に大きな吹上力が作用することがあるので、垂木の軒先部の留めつけは、垂木と軒桁との仕口に ひねり金物を用いて補強する。

3⃣ 床組み

床を構成する骨組みを床組といい、1階と2階では架構方法がことなる。

根太 大引又は床梁の上に直角方向にかけ渡し、床板を受けるために用いる横架材

際根太 大引きに直角に柱や間柱の側面にとりつけ、床板の端部を受ける部材。

根太掛け 大引きに平行に柱や間柱の側面に取り付け、根太の端部を受ける部材。

根がらみ 床束などの束の下方を連結して、構造的に固める部材。
大引き
根太を支える角材の横木。床束の上にかけ渡し、その上に直角方向の根太をとりつける。

雇さね
2枚の板をはぎ合わせる時に、相互の板材の側面の溝に、接合の為にはめ込む細長い材。

4⃣屋根

1. 屋根の形状

 

2. 軒廻りの部材

 

登り淀
切妻屋根のけらば部分において、屋根の勾配に沿って軒先から棟まで傾斜している部材

面戸板
軒桁の上部と垂木の間において、野地板と桁との間にできる隙間をふさぐ板。

広小舞
垂木の振れ止め、軒先の瓦の納まりを目的として、垂木の先端に取り付ける幅広の横木

鼻隠し
軒先において、垂木相互の連結や害虫などを防ぐために取り付ける長い板材。

5⃣接合法

継ぎ手や仕口を接合部という。従来、継ぎ手や仕口には様々な方法が考えられ使用されている。いずれも木材だけでは、曲げや引っ張りに対して、十分な強さが確保できない為に主要な接合部には金物を使って補強する。

 

❶継ぎ手 仕口

継ぎ手や仕口は、その種類により力に対する抵抗性能が異なるので、接合部の応力に応じたものを採用する。また、木造の継ぎ手仕口を堅固にするために、両者を貫通する穴に打ち込む細い堅木を栓といい、大栓、鼻栓、込栓などがある。

1. 継ぎ手

継ぎ手は応力の小さい箇所に設ける。垂木などで並列する部材の接合部は、同一箇所とせず、乱に配置する。部材断面の異なる桁の継ぎ手は持ち出し継ぎとし、桁と柱との接合部は金物で補強する。

種類と使用箇所を記載する。
腰掛継ぎ 簡単な場合の土台など
腰掛あり継ぎ 土台 大引き 母屋 曲げには抵抗不可
腰掛かま継ぎ 土台 桁 母屋のど かま状の突起により接合する
金輪継ぎ   土台 柱など工作の跡が見えにくいので柱の根継ぎ、引っ張
り 圧縮 曲げに最も強い
追掛け大栓継ぎ 桁 梁 土台 胴差など
引っ張り曲げに比較的強い
台持ち継ぎ 梁を桁の上で継ぐときなどだぼを用いる。継ぎ手の下側に受け材がある場合の継ぎ手

目違い継ぎ 長押 巾木 笠木など横方向のずれを防ぐ。
そぎ継ぎ  垂木 根太など釘打ち 接着剤により接合する。

2. 仕口

 


種類と使用箇所
胴付き 同一平面上のT字仕口 補強金物を併用する
大留  2つの材が直角になる部分で継ぎ目が45度になる場合に用いる巾木、笠木など
大いれ 柱と貫
相欠き 桁や土台が直角になる接合部 ボルト締め 釘打ちにより接合
かたぎ大いれほぞさし 柱と胴差、梁、桁などの接合部
渡りあご 大引きと根太 合掌と母屋 陸梁と敷桁の接合部
かたぎ胴付き わなぎ込み 洋風小屋組みの合掌と陸梁の接合部
かぶとありかけ 小屋梁と軒桁の接合部

3. ほぞ

種類と使用箇所
短ほぞ 間柱 束の上下端など
長ほぞ 柱の上下端や小屋束の上部など
重ねほぞ 柱の上に梁と桁をかける時など折おき組
ありほぞ 土台のT型部分や土台と大引きの接合部など
小根ほぞ 土台の隅の部分など
まちほぞ 柱と敷居の接合部など
えり輪小根ほぞ 土台の隅の部分など
2枚ほぞ    道具の組み立てなど
さおほぞ 縁側の桁を継ぐときなど
わなぎほぞ 洋風小屋組みの眞束と棟木の接合部
扇ほぞ 隅柱の下端など

❷接合部の補強

主な金物と実用例
アンカーボルト
埋め込みボルトともいい土台と基礎の緊結にもちいる
ボルト 合掌と陸梁 火打ち梁と陸梁、火打ち土台と土台の接合部などに用いる。
箱金物
眞束と陸梁 隅柱と胴差 隅柱と2階妻梁の接合部などに用いる

羽子板ボルト
引っ張り力が生じるところに用いる。柱と桁、小屋梁と軒桁の接合部など

かねおり金物
隅柱と土台 通し柱と胴差などの接合部に用いる

短冊金物
通し柱と胴差、管柱と胴差、合掌と眞束の接合部などに用いる

ひねり金物
垂木と軒桁または母屋の接合部などに用いる

梁受け金物
大梁と小梁の接合部に用いる

ジベル
接合した材のずれを防ぐ

角金物
隅柱と土台など引っ張りをうける柱の上下の接合部などに用いる

シャープレート
ジベル同様に部材間にはさんで用いる。木材と鋼材及び木材と木材の接合に用いる

スプリットリング
ジベル同様に部材間に挟んで用いる。木材と木材の接合に用いる

メタルプレートコネクター
木造トラス部材の接点接合用に用いる。木材同士のとっつけ部分を密着させて用いる。

ホールダウン金物
隅角部の柱と基礎や1,2階の管柱の接合用に用いる。

筋交いプレート
筋交いを柱、横架材に接合する

ラグスクリュー
大断面木造建築物の接合用に用いる。

ドリフトピン接合
ドリフトピン接合は、木材と木材または木材と鋼板を緊結する際に用いる接合で、木造ドーム、大規模木造建築などにも用いられる。

ドリフトピンと先孔との間に隙間がある場合、構造部に支障をきたす変形を生じるおそれがあるため、各材の孔径とドリフトピンの径を一致させることが大切である。

ラグスクリュー接合
ラグスクリューの埋め込み有効長さは胴部直径の8倍以上とする。
ラグスクリューは穴にレンチなどで回しながら挿入する。ハンマーなどで打ち込んではならない。挿入を容易にするために適当な潤滑剤を用いてもよい。

異種接合を併用した接合部の耐力
同一接合部に、力学的特性の異なる接合法を併用する場合、原則として、両者の許容体力を単純に加算することはできない。

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