鉄筋コンクリート造3階建て地下1階(RC造)調査 耐震診断と 補強計画 (構造計算を中心に)
RC造 3階建て地下1階の建物の 耐震診断と補強計画を記載します。
前回記事の 主に、診断と補強計算の過程を記述します。(工事内容が前回記事では 多く記載しているため)
改修以前の状況。2階のスラブと梁が切断されています。
■調査
既存図面が存在していましたが、現状と異なるところが存在していましたので、しっかりと調査を行う必要がありました。
地階、1階、2階平面図です。2階の床を取り去り、吹き抜けになっているのがわかるかと思います。その他梁を取り去っているのもわかるかと思います。
梁も2箇所取り去り切断されていました。驚きものです。
今一度現状を写真で振り返りますと、梁とスラブが大きく切断されていたことがわかります。
梁の切断面です。上端筋でD22が6本 下端筋でD22が4本となっており、丸鋼でした。
スラブの切断面です。スラブの厚みは150 鉄筋は D10@200という形で入っていました。補強時はこれを復旧し、厚みも揃えます。
東側の壁の位置がずれていました。が、これは、耐震の数値には影響を与えることはないです。
3階は がらんどうの部屋となっており、屋上はペントハウスからあがって、陸屋根の状態でした。
断面図です。天井高さは2550となり、西側面には窓が存在していたようですが、現在は、ブロック等で埋めていました。
地階、1階、2階の伏図です。これで、各柱と梁のサイズをはかって、状況を確認します。
切断された梁は、400×650のものでした。
3階屋上の 伏図も 作成します。
東西方向に切断した軸組図です。
これを見ると赤の部分と黄色の部分の階高さが異なることがわかりました。赤の正方形の部分には、近接して2階、3階に桁が2つ存在していることがわかります。所有者に聞き取りを行いますと、以前は、隣に同じ建物が存在していて、それを解体してしまったため、桁が2つ存在しているようでした。ということで、以前は、存在していた建物を撤去して、片側だけ存在する建物で、なおかつ、床と梁を切断しているという建物を構造補強するという業務になることが発覚しました。
赤の梁と黄色の梁が同一階に存在しています。
その他、通りに沿って、南側も軸組図を作成します。
南北方向の軸組図です。こちらの東側桁行方向の軸組図をみれば、2階、3階に梁が2本通っているのがわかるかと思います。
以上
調査では、軸組図と伏図と部材寸法をとり、建物の現状を正確に把握します。
■耐震診断
①建物概要
昭和42年築のRCの建物です。建築面積は45.80m2 延べ床面積は141.56m2(2階がないため実際は180m2程存在)地上3階 地下1階 塔屋と屋上が存在しています。RCラーメン構造となっております。意匠図は、所有者が保持されていましたが、現状と異なり、構造図、構造計算書は、もちろん存在しません。よって、耐震の1次診断にて、壁の厚みとサイズと、柱のサイズにて耐震診断を行い、補強計画を検討することにしました。
地盤は良好、地形は平坦地です。経年劣化は、築60年の建物のため、外壁部分はだいぶ劣化していますが、それほど、大きな損傷はないです。不同沈下や柱、壁のひび割れも存在していません。
②構造床面積
1階の壁柱図です。南北方向は、壁がしっかりと存在していますが、東西方向は1階に壁がありませんので、柱の断面積を計上して計算します。
X方向が東西方向、Y方向が南北方向となります。南北方向には、北側に片方だけ柱につく壁が存在しているため、その部分のみAW3としています。X方向は柱の断面積にて計算します。X方向で0.32となり、NGとなるのがわかります。Y方向は4.22と強い数字がでています。(0.8以上が最低限の評点を満たすとされています)
2階壁柱図です。
2階もX方向は 柱の断面積にて耐震要素を計上して計算します。一部、南側の壁は計上できます。X方向は0.49 Y方向は3.35となり、2階も1階と同様に耐力要素が足りていないことになります。
3階壁柱図です。
こちらは、X方向に壁は少ないですが、ほとんど上階の重量の負担がかからないため、X方向は0.89という数字がでており、最低限の耐力が存在するということになります。Y方向は、5.71となり高い評点がでています。
集計表です。1階と2階のX方向でNGが出ているのがわかると思います。
壁の量と柱の量の判定によるグラフです。赤部分をみてもX方向の黒丸が足りていないことがわかるかと思います。
よって、3階は、最低限の強度は満たしているため、1階と2階のX(東西)方向の壁量を増やしてあげれば、NGは解消されると考えればよいかと思います。また、切断された梁と2階の床の復旧をする必要があります。
これで耐震診断が終わりましたので、補強計画を考えます。
■構造補強
補強の計画を示します。
耐震診断により、1階の東西方向の壁の量が足りていないことがわかりましたので、図面の赤部分に耐力壁を増設します。また撤去されていた梁を復旧し、2階のスラブを打設する計画とします。
耐震改修前の1階2階の評点は、X方向で0.32と0.49でしたが、
改修後は、1階で1.04 2階で0.8となる計画をしています。
グラフとしても。安全値によっており、問題ない数値となっているのがわかります。
赤の部分が1階の耐力壁の量です。柱と柱の間にある大量壁のため、AW2として、厚みと幅を検討し、入力しています。
現場で、南側トイレ部分の壁が 厚み100㎜とせざる得なかったため(トイレの位置の関係)当初の計画を少し変更して計算しなおしており、そのため、変更前と記載しています。1階は、壁量を計算しても問題ない範囲となるのがわかるかと思います。
2階も壁量を増やします。
数値としては、X方向で、1階、2階ともにIs値0.8以上を確保できたことになり、補強計画としては、NG→OKとなります。
壁率、柱率による判定グラフとしても、安全値に、評点がよっており、数値上問題ない範囲となりました。
補強の詳細図です。逆梁にしています。その他、梁と壁を増設しています。
地下に下りるコンクリートの階段と1階から2階に上がる階段の補強詳細図です。
既存階段に関しては、チェッカープレートを作成し、6点で既存階段に補強し、幅を広げています。