建築士会神戸支部 特別講演会(横内敏人氏)と建築見学会の開催

当方は、建築士会での建築活動をおこなっております。2023年度は、横内敏人先生を お招きして、講演会を行って頂きました。

講演会を行う前に、事前に横内先生が設計された建築見学会を行わさせて頂きました。

 

建築見学会の様子

料亭 丹 とゲストハウス 川 外観

建物前面は、小川に面しており、とても綺麗な川です。8月には蛍がでるようで、とても風情のある川です。

料亭 丹 と ゲストハウス 川が 並んでいます。どちらも、古い木造家屋であったものを改築して再生しています。二階部分から、うまく 前面の小川が見れるように設計してあります。

料亭 丹

朝食と昼食が中心の和食の店舗です。戦前に建てられた木造家屋のリノベーション。質の高い食を提供するお店のイメージを内外装で表現できるようにつとめたということです。

丹の入り口部分です。床は 鉄平石で味のある感じになっており、屋外との連続性もあります。

その他ポストなども目立たないように、壁面に存在させています。

店の前に流れる白川の風情を店の中でも感じられるように、白川に面する開口部は、季節が許す限り開け放して使用できるように考えられていました。

 

平面図です。一階は道に面した店舗になっており、奥に坪庭があります。中心に暖炉が存在するのがわかると思います。既存家屋は、屋根と両妻壁はそのままにし、正面と坪庭側の外壁及び内装をすべてやり替えている。壁は耐震壁を1,2階揃えて配置し、2階床は店舗として大人数があがるため、梁を十分に補強してあるようです。

入り口の開口部上部には 暖房が仕込んであり、入り口近くに座っても3月時点での寒さを感じない仕組みになっていました。夏場、日差しが強い場合は、すだれを下すそうです。窓際の天井をおり上げて、空調吹き出し用ブリーズラインを仕込み、エアカーテンとなるようになっていました。

建具にも丁寧に仕事されています。硝子戸の施錠は電気錠であるが、停電時にあけれられるように、建枠の内外にシリンダーとサムターンを操作するための隠し小扉がありました。

客席の様子です。アフリカ産の木ブビンガの無垢を使ってテーブルを作ったとのことでした。奥に存在するのは暖炉で、二階まで通じています。店舗らしい雰囲気というよりは、あえて住宅に招かれて食事をしているような空間としたとのこと。仕上げは、木部にベニヤにオイルフィニッシュ。

収納とレジ部分です。照明の温かみがでるように設計されていました。

料亭の天井です。よしの天井であり、よく吸音するため、店舗の天井としても効果を発揮するようです。照明は、イタリアのナローという照明だそうです。

暖炉です。奥に坪庭が見えます。

この坪庭はもともと存在していたようでした。

奥から食卓部分を見ています。上部の空調がうまく機能していました。

階段をあがり二階に向かいます。壁は珪藻土で 珪砂をいれての施工です。

二階にあがりました。二階窓から、外の景色がとてもいい感じでうつります。開口部は低めに設定してありました。

椅子に座った位置から、窓を通して外の景色が良く見えるように、高さの設計がうまくなされていました。談笑するのにとても良い空間となっています。

 

 

天井は1階と同様でよしの天井です。

外がとても良い感じで見えます。

ロールブラインドの納まりは隠ぺい式となっていました。窓際のカウンターに座った時に余分な空が見えずに、意識が自然と白川にいくように開口高さを1500mmに抑えていました。また、景色をきりとるのに枠がきにならないように3方を塗回しとしています。硝子戸は2本ひきですが、2本を左に1本と網戸を右に引き分けると全開でき、春夏秋と常時開けた状態で使用します。

手摺は、避難器具をかけるために建築基準法的に鉄製でなければなりませんが、北山杉丸太を面取りしたうえで鉄のプレートをとりつけているとのことでした。

二階に下りますが、階段降りた部分にもアイストップと照明が配置されていました。

 

ゲストハウス 川

川の外観です。現状にはめ殺しの窓が存在しています。

室内にもはめ殺し窓が存在しており、外観のはめ殺し窓と連続しているのがわかるかと思います。

天井に自然光が良く反射するようになっていました。

天井と壁には廻り縁は存在しておりません。

改築前の川の状況です。

平面図です。敷地一番奥の坪庭を囲むように2層分の塀をたてることで、プライバシーを確保し、1階を寝室に、2階を居間、食堂に、屋根裏が予備室になっっていました。長期滞在も可能なように、台所を設けるなどの住宅と同じ機能を持ったプランです。丹と同様に、妻壁と屋根は既存のまま、その他の内外装をやりかえていました。

1階部分は寝室です。床は絨毯仕上げです。

天井と壁は、自然光を反射させるだけの空間となっていました。これといった装飾も存在していません。坪庭の前には北欧家具がおいてあります。

坪庭の廻りの壁が統一されて、室内に 心地よい自然光を導くように設計されていました。

雪見となる障子のつくりでした。

障子はこの場合は、寒さ対策としての二重窓のような役割も果たすかと思います。

浴室手前の物入です。

洗面台廻りです。横内先生の説明付きです。

石張りの浴室です。宿泊施設の浴室は、非日常性が求められます。

浴槽は、コンクリートブロックとモルタルで下地をつくり、そこに断熱材をはり、FRP防水を施し、さらにモルタルで成形して 石目調の大判タイルを張っていました。

小さくても露天風呂のような雰囲気が楽しめるように 石目調タイルで仕上げた浴槽を床より下に埋め込み、坪庭に面した建具を壁に引き込んで全開できるようにしていました。

 

洗面台廻りです。洗面所と浴室双方の狭さを解消するために、間を強化ガラスの扉と窓で仕切り、洗面所は浴室から採光をしていました。

壁は檜で仕上げているようでした。浴室の洗い場には床暖房を施し、天井には浴室暖房機を設けて木製のガラリで隠していました。

一階部分に坪庭があるだけで、とても居心地の良い空間に仕上がるのがわかるかと思います。

二階の川側です。川がうまく眺められるように、床が一段下がって存在しており、椅子からとてもうまく川が眺められるようになっています。2階の東西の開口部は、硝子戸、網戸、障子の合計7本の引き戸でいずれも戸袋に収納すると全開できるようにしてありました。

戸にも細かい仕事がなされていました。収納です。

窓枠廻りです。

建具も丁寧に作られていました。

川側の部屋の天井部分です。

真ん中の柱は、大黒柱ではなく、オーナーが気に入った柱をおいたとのことでした。彫刻もそうです。

二階部分の坪庭の上のデッキです。

坪庭の木は沙羅の木とのことでした。

建具も明快で、居心地の良い感じになっていました。

川の1階

川の屋根裏部屋

若王子のアトリエ

若王子のアトリエ東側外観です。単純な切妻屋根に、玄関部分を平入にして、入りやすい印象を与えています。傘立ても存在していました。

アトリエ内観です。ペアガラスの規格サイズが1800ほどのため、そのサイズの間に柱を立てて、柱のスパンとしています。小屋梁部分は登り梁形式です。横内さんがアトリエを建てられた25年ほど前に2000万ほどでたてたようです。所員の教育のためにも、軸組がわかりやすく、自分たちがどのような架構の中で働いているのが明快にわかるように構造体を見せたとのことでした。コストをさげるために、床はベタ基礎のスラブに床暖房の温水配管を打ち込んでいました。

構造体はシンプルでした。南面には、壁がないため、壁量としては、少し少ないかと思います。

棟部分の梁は間に登り梁を挟んで2重となっていました。構造的に安定するようです。

 

建築士会と横内さんで写真を撮っていただきました。

横内さんは、日本の木造建物と相性が良いとのことで、北欧家具をよく好んで使われるようです。

 

建具がしまえるように工夫されていました。

吹抜けに面した大きなガラスの開口部は、ペアガラスを柱や梁に直接取り付けたはめ殺し窓で 開く部分は、隙間風が入りにくい四周隠し框の1本引きガラス戸を3か所のみもうけ、コストを削減しているようでした。開口部にはロールスクリーンをもうけて、寒さ対策としているとのことでした。

 

講演会

さて、令和5年度4月に 建築士会神戸支部青年委員会にての 横内敏人先生の講演会を行いました。 当方は、青年委員会にて 講演会の司会を担当しました。講演会は、おかげさまで、会場60名以上 WEB 約100名程 と大盛況となりました。

タイトルは 「日本の住宅の変わるところと変わらないところ」 端的に言うと、日本という国の 伝統や歴史、美意識を変わらないものの軸として、技術等の変わるものを身にまとって設計活動をおこなっているというものでした。

森林面積が多い日本においては、木造の建築が適しており、雨の多い日本の気候は 屋根が大切であり、また庭に面していて開放的であるということが 変わらないものの軸としては大きい と考えている。 とのことでした。

私なりに、横内建築を学習してきた感想です。

まとめ

・本当の豊かさ  自然の豊かさを建築に取り入れる

その土地にあった植物や地元の素材を用いて町の中や住宅地であって
も森とともに生きていけるような世界をさりげなく作る。

・日本の伝統
自然の豊かさ 森 木の文化 稀有な素晴らしい庭園文化

庭と建築の関係 庭は室内空間の延長

具体的には、(庭と LDK との段差を10cmほどにして、一体感をつくる
(内部にいても庭の中にいる感覚)植栽の計画を充実させる。庭 家具 建築を一体的につくる)

・ プランニング
階段の位置 室内空間を面白くする要素。

家の中にどこか遠くへの視線の抜けを意識して計画。

洞穴と木下の感じを一軒の家に存在させたい。
閉鎖的な部分(寝室などプライベートスペース)と開放的な部分(リビングダイニング)

非日常性を演出する 暖炉と浴室 平面や断面が魅力的な空間になるかを検証していく。

 

・屋根が美しい


住み手が家に求める安心感と生活の豊かさを象徴する。
ボリュームにどのような屋根をかけるか地域性の配慮

具体的な設計手法

(屋根材 勾配 軒の出 母屋垂木を見せるか見せないか。屋根の形を室内に取り込む ボリュームの組み合わせ。登り梁 背の大きい垂木を用いた架構(水平梁をなくす)二階よりも平屋の勾配を5分緩くする。雨樋を軒先と一体化して見えるようにする。樋の下端と鼻隠しの下端が揃うように垂木のせいを先端で絞っている。)

・構造的秩序そのものが建築の本質

・ 環境工学的な風の流れ
家の中の空気をどう循環させるか

具体例(外断熱 RC 外壁 暖炉 開口部のディテールパッシブな計画 コンクリートスラブに 温水通す)

風が南庭から 2 階に抜ける計画 断面図の面白さ

・構造と風や光の感じ方を同時に考える。

基本を丁寧に積み重ねて 横内建築ができあがってくるのだろうな と感じました。より一層基本的なことを大事にしながら 設計活動に臨んでいきたいと思います。

横内先生 ありがとうございました。

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