木造の構造の変遷と令和5年度時点における改修時の構造計画のまとめ

木造の構造の変遷と令和5年度時点での耐震構造計画のまとめを記載したいと思います。

 

木造の構造の変遷

 

昭和25年(1950)~34年(1959)

昭和25年に建築基準法が制定されます。昭和23年に発生した福井地震の調査結果をもとに 壁量設計の規定が設けられました。主要な柱の下部に土台を設置し、土台は基礎に緊結することが規定されています。主要な継手仕口は、ボルト締め かずがい打ち、込み栓打ちなどで緊結することが定められました。込み栓は、伝統的構法の定番のようになっていますが、一般の住宅で多く用いられるのは、昭和30年代以降、電動ドリルが普及してからです。ほとんどの柱は、単なるほぞ差しでした。

 

昭和34年(1959)~46年(1971)

昭和34年に建築基準法は改正されました。防火規定が強化されました。壁量規定が改定されました。昭和25年に比べると2階建ての1階、3階建ての1、2階の必要壁量が大幅に増えています。軸組などの倍率についても改正が行われました。土壁、木刷り壁の倍率が引き上げられました。継手仕口などの規定について大きな変更はないですが、この時期に羽子板ボルトやかすがいが普及したようです。昭和40年代から50年代は、ほとんどの住宅が公庫融資をうけており、その仕様により、建築基準法を補完しました。その仕様書には、アンカーボルトを2.7m内外で設けること、柱と桁の接合部には羽子板ボルトまたは両面かすがい、柱と土台には両面かすがい打ちが記載されています。

 

昭和46年(1971)~56(1981)年

 

昭和43(1968)年の十勝沖地震の教訓をもとに、昭和46年(1971)に建築基準法が改正されました。基礎が、一体のコンクリート造または鉄筋コンクリート造の布基礎とすることが定められました。コンクリート造の基礎がようやく普及してきました。ただし、ほとんどが無筋コンクリート基礎でした。

 

昭和56年(1981)~平成12年(2000)

十勝沖地震をうけて、耐震設計法の抜本的な改正が行われました。木造に関しては、壁量規定の見直しが行われ、2階建て、3階建ての必要壁量が大きくなりました。日本で構造用合板が普及するのは、昭和40年代の後半以降です。

構造用合板が耐力壁 床板 屋根野地に多用されます。平成4年に準耐火建築物、木造三階建て共同住宅の基準が制定され、木造に耐火被覆をした準耐火建築物が創設されました。その結果耐力壁は従来よりも耐力の高いものが求められるようになり、3階建て用に開発された壁が2階建てに用いられるようになりました。

 

平成12年以降(2000)

兵庫県南部地震の研究結果をうけて、建築基準法が改正されました。木造に関しては、各部構造の仕様が定められました。①有筋基礎の義務化②偏心率等耐力壁の配置の確認法の導入③接合部(筋交い端部 柱頭柱脚)の仕様の規定

これらにより、現代の木造住宅の性能は格段に向上しました。

 

兵庫県南部地震により大きな被害をうけた住宅 調査概要

①古い構法の建物

②筋交いなどの耐力壁が不足するもの

③南面に開口部が多く耐力壁が北側に偏っているもの

④接合部に補強金物がないもの

 

架構や構造計画の変容

1995年の兵庫県南部地震を契機として、構造計画に対する認識が高まりました。

ツーバイフォー構法などで以前から使われていた耐力壁線という概念が 軸組構法にも用いられるようになり、偏心率や、構造グリッド、構造ブロックなども用いられるようになっています。こうした傾向をうけて、架構に対する取り組みも構造計画に関する工夫が増えてきています。

 

架構や構造計画の具体的な動き(改修工事)

 

・べた基礎の一般化

べた基礎を一般採用するところが増えてきています。かっては、軟弱地盤対策などで用いられてきたが、最近は布基礎よりも一般的です。布基礎でも防湿コンクリートをうたなければならないことや、排出残土が少ないことも採用の理由になっています。

 

・床組み 剛床化と厚板の利用(水平剛性の強化)

厚板とよばれる厚24-28mmの構造用合板を使用して、根太や火打ちを省略する方法が増えています。材料のコストアップを差し引いても省力化と構造面で有利です。

 

・耐力壁

壁を構成する多くの部材を統合し、各部材の機能を高倍率の構造用面材に肩代わりさせ部材点数を減らす傾向にあります。大壁の外壁耐力壁では、木摺はほとんどみられず、構造用合板を直貼りする仕様が普及しています。筋交いは広く使われていますが、構造用合板と併用するものも現れています。筋交いを使わずに、構造用合板のみでこれまで以上の壁倍率をだそうという試みも盛んです。構造用合板による耐力壁の釘打ち間隔を小さくする方法を推奨しています。壁の耐力は、釘打ち間隔を小さくすればおおむね反比例して高くなります。また内装下地の石膏ボードも、準耐力壁として認定を取得した釘 ビスとし、さらにその間隔を半分にすることを推奨します。そうすれば、外周の無開口壁はすべて実質的に5倍以上の耐力壁になります。

 

・筋交い

「筋交いの耐力壁は壁倍率がでない」という研究者は多い。筋交いは圧縮力が加わると座屈してしまい、剛性が少ない破壊モードとなります。耐力壁の評価法は、2000年の改正時に靭性による特性値も考慮して、4つの特性値の最小値で決めるように変更されました。筋交いは靭性による特性値によって決定されてしまうために、2000年の評価法以降倍率がでないということになっています。熊本地震で倒壊した建物のほとんどが筋交いを主要な耐力要素としていました。筋交いの靭性が小さい点を破壊の理由と考察する研究者は少なくないです。筋交いは、合板より小さい変形で最大荷重を迎え、座屈により耐力が下がっていくことが判明しています。

 

・耐力壁配置の外周化

高倍率の耐力壁を外周周りに配置して、内部は基本的に非耐力壁とするものが増えています。耐力壁には、構造用合板がよく使われるが、合板は原則として、上下の横架材の側面に打ち付けなければなりません。しかし、内部の納まりで、それが困難な場合も存在するため、耐力壁は外周のみに配置し、外周周りで所要壁量を満足しようとする計画です。作業しやすいだけでなく、将来の間仕切り壁の配置の入れ替えも自由になります。内部壁は、天井勝ちの非耐力壁とします。計算手法で4分割法でも偏心率の計算でも、周辺に耐力壁を配置するほうが合理的であります。

 

・柱頭柱脚の接合部の強化

接合部の強化が改修工事においてもあげられます。

 

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