リノベーション 事例研究(木造編)

■不動産的な視点でのリノベーション

➀つつじが丘の家 設計長坂常 門脇耕三

この先期待される住宅の在り方として、家の一角を使ったカフェやケーキ屋などの小さなお店があることが重要のようです。1~3人家族を視野に入れ、家で事務所やお店を構えたいというニーズに応えるべく、南面に玄関とアプローチを新たに計画しています。

外観

居間

改修後に土間が存在していることが特徴です。

改修前平面図

 

改修後 平面図。アプローチ空間が長いのが特徴。

転売を考えて改修を行う計画のため、コストを抑えて、市場ニーズに合う改修方法を調査 模索 検証した結果のようであります。こういった店舗付きの住宅がこれからの市場に必要とされているようです。

 

 

⓶西荻窪の家 設計 宮部浩幸

中古戸建住宅を再販するためのリビタのリノベーションプロジェクト。すべてをつくりきらないハーフビルドリノベーション。ストックの活用が期待されて久しいが、中古住宅の再流通はまだまだ広がりをみせていない。そのことにアクションを与える事業。

購入に際しては、自分たちの暮らしを思い描きながらカスタムできる住間つくることを目指したようです。よって、余計なものは極力省いて、耐震性と断熱性の改善を現行新築基準相当までしっかりと行い、空間の分節を緩やかに計画しています。

改修前平面図

 

 

 

 

③柱の間の家 設計 藤田雄介

リビタが展開する 空き家を社会資産ととらえ、リノベーションにより、改めて市場での価値をもたせることを目的とした事業 HOWS Renovation の一環のようです。

中古住宅をリビタが買い取り、改修後に販売となるが、その際に検査済証が存在する状態にすることにより、買主に安心感を与え、ローンの条件を整えるという役割も果たします。

昭和56年建築以前の建物に対して、建築確認申請を今一度通す作業を行っているようです。

一階土間部分

二階ダイニング

二階リビング

二階

 

お客さんの想定としては、30、40代の夫婦であり、汎用的かつ可変的な構成を用意する必要があります。

ほとんどの柱間に敷居と鴨居を設け、どこでも建具を設置できる構成とした。

改修前平面図

改修後平面図

■構造的に趣向を凝らしたリノベーション

➀Yhouse renovation 設計 阿曽芙実

外観

二階内観

間口1.5間 奥行6.5間の住宅の改修。

 

 

密集地によくある、一階が暗い状況のため、1階に寝室、2階にリビングダイニングを配置する計画としています。1階は耐力壁をいれてしっかりと耐震性を確保しています。1階に反して2階は、ワンルーム化して、南側の太陽光を北側まで導き、南側の屋根面を持ち上げることにより建物全体の空気の流れを作っています。二階は間口方向の壁を無くし、外壁と間口方向の方杖補強による空間としています。断面で建築を考えていくということが重要であるということがわかります。 

80mm角のヒノキ材による方杖補強を半間間隔で配置した。軸力抵抗型であり、壁倍率に換算すると0.5倍相当であります。

一階平面図 土間を設け、寝室と水廻りを中心に配置しています。

二階はリビングダイニングと 室を一つ設けてあります。

 

■その他デザイン上優れたリノベーション

➀法然院の家 設計 森田一弥

耐震設計は 限界耐力計算をもちい、土壁の耐力を適正にみて壁をバランスよく配置。

人間味のある環境は近い過去の出来事を次々に記念していき、人々がその中に自分の成長痕跡をしるすことを許してくれる とあるように豊饒な時間の積み重ねが感じられる空間においてこそ、人間は自分の存在を時間の中に位置づけ、未来を建設することができる という概念の基に設計されているようです。

木造建築物は、構造 下地 仕上げなどの様々なレイヤーが重ねられて構成されるために 時間の積み重ねが可視化されやすい。木造の既存建物を木造で改修する建物は、最も豊かな時間を感じられる空間 といえるかもしれない ということのようです。今回の設計では、土壁の竹小舞下地の片側に塗るだけに留めたり、下地を隠さないようなディテールとしています。

完成させられたようにみせるのではなく、改修後の空間も新たな時間の痕跡が塗り重ねられていくためのキャンパスであるとすれば、完成させない勇気を持つべきだと設計者は語っていました。

 

 

法然院の家 / House in Honen-in – 森田一弥建築設計事務所 (morita-arch.com)

 

二階リビングからの眺望のため、窓を二階にしっかりと設置。

法然院の家 / House in Honen-in – 森田一弥建築設計事務所 (morita-arch.com)

1階寝室 壁は土壁を見せて残す。

法然院の家 / House in Honen-in – 森田一弥建築設計事務所 (morita-arch.com)

二階からの眺望を重視するため、二階にリビングダイニングを配置し、一階に寝室等を配置しています。

森田一弥『法然院の家』 – re|d (dezain.net)

浴室を除き全て木質の建具を使用しています。

⓶吉備中央町の家 設計 神谷昭雄

玄関から裏庭に抜ける通土間の動線、田の字型プランの開放的な造り、力強い伝統的な骨組み等空間構成をより魅力的なものとし、民家の良さをうまく引き出している設計となっています。古い時間をどのように見せて、新しい時間をどう加えるのかが設計の鍵となっています。

外観

通り土間部分

リビング

接客の間

既存平面図

改修平面図

 

二階平面図

 

 

京町家が宿泊施設に変わるリノベーション事例である。

③京温所 設計 中村好文

東側庭を中心として、台所とダイニングが配置されています。

床は栗の無垢フローリング 壁はPBの上聚楽壁

庭に存在する読書スペース 床はモルタル砂利散らし

軽やかな階段

卵型浴槽を据えた浴室 床は砂砂利洗い出し 壁は檜縁甲板

など、京町家が現代的にリノベされ豊かな空間が展開されています。

天窓から降り注ぐ陽光を演出した通り土間の吹き抜け空間を表現しています。

以前の町家の状況です。設計 中村好文

改修図面

④川 SEN

こちらも小住宅を宿泊施設にリノベした事例。設計は横内敏人

 

川 SEN

横内敏人建築設計事務所|T. Yokouchi Architect & Associate|京都市の住宅・建築設計事務所 (yokouchi-t.com)

白川の清流とその両側に植えられた柳の美しい状況が目前に見受けられるため、それを見下ろしながらくつろげるようにリビングダイニングキッチンは二階に配置されている。

川(sen)  | B-GeneRATEd コラム | 京都の北欧ヴィンテージ家具・雑貨のお店

 

川沿いの涼しい風が建物内を通り抜けれるように窓を配置している。一階は玄関と寝室があり、奥の坪庭に面して浴室と洗面室が配置されている。坪庭にはヒメシャラが植えられ、浴室と二階のテラスから楽しめるようにされています。土地面積30m2程、延床面積70m2ほどであるが、十分に快適な家が存在している。

間口2間奥行き5間

改修前の平面図

改修後の2階平面図

改修後の1階平面図

改修は、布基礎を補強の上べた基礎にしています。床材は桐無垢フローリング。

壁と天井はシルタッチSP工法(珪藻土)リビングの天井は、小舞天井よしベニヤ突付張り

エンハウス 設計 平井充

庭が住空間と街路を繋ぎ、双方にとって豊かな要素になることができないかという模索により設計が始まったようです。

 

改修前

一階部分は室の中心にキッチンを配置し、一階部分の外壁面を半間道路より後退させて、濡れ縁を作っています。二階部分は床をくりぬいて大きな円形の吹き抜けを設け、上下の一体感を演出しています。

以上

住宅にお店や事務所のできる土間スペース等コミュニケーションができうる場所を人は必要としていること、耐震性と断熱性を配慮したリノベーションが重要であること、検査済証があればローンを通しやすいこと、リノベーションも断面で考える必要性があること、以前の建物とリノベ後の建物とで時間を感じさせること、ディテールにこだわれば上質な空間ができあがってくることなど、構造的な要素以外にも様々なリノベーションのかたちが考えられることが見えてきました。この事例を糧に今後の設計を検証していこうと考えています。

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