住宅の設計手法③(窓 立面の計画)

家を人に例えるなら、窓は、人の目鼻に相当する重要なものです。窓は、見栄えの良し悪しはもちろんのこと、知覚される明るさや広さを変えるデザインの要であり、温熱環境や居心地を変える性能の要です。

しかしながら、家づくりの際は、間取りが決定した後に、部屋の中央に部屋の用途にあった窓を設けるという安直なルールで、家づくりが行われているのが実情です。これでは、美しい街並みができるとは思われません。窓の計画は、間取りに先行して、検討していくことが必要といえるでしょう。

LDKや中間領域に面するメインの開口部は、大きく開口するとよいようです。絵のように窓の開放方向が増えてくると、縁側だけでなく、窓に囲まれた空間全体が周囲の環境と一体となった中間領域に感じることができます。一方で、寝室や水回りなどの窓は、風を抜くための窓として小さくとるとよいという考え方もあります。

窓は、設ける位置がとても重要です。位置を間違えると、光、風、眺望はとりこめませんし、プライバシーの確保もできません。道路に面する窓などは、プライバシーから、雨戸やカーテンが閉めっぱなしというのも良くあります。開かずの窓を作らないことは、窓の計画の基本です。敷地周囲に、公園、河川、緑道など公共のパブリックスペースがあるならば、大きく開口してみましょう。

窓は、隣家と向かい合わないように設けるのが基本です。視線を避けるように設定しましょう。

覗かれる危険性がある場合は、隣の家の窓の配置、隣の家までの距離、目隠しのあるなし、植栽の位置など、道路からの見え方などを入念に調べ、どこからの視線を気にするのかをヒアリングしておきます。

 

南側の2階建ての隣の家まで、3-4m程度しか離れていない場合は、冬場一階のリビングには、陽があたりません。こういった場合はNGなので、対策を考えるか、配置計画を練り直す必要性があります。

立面を作るときもゾーニングを行うことが重要です。立面を窓のゾーンと壁のゾーンにわけて、壁と窓をできるだけ単純な形にレイアウトし、複数の窓はできるだけ大きな一つの窓にまとめていきましょう。

 

 

左は、間取りを立ち上げただけの立面図、右は、窓のゾーンと壁のゾーンを意識して、複数の窓を一つにまとめた立面です。整った立面のゾーニングができれば、間取りの骨格も整理されていくことがあります。

高さ方向を上中下に3分割するのが立面ゾーニングの基本となります。1,2階小屋裏の3つに分割すれば、プライバシーに対応した窓の計画も可能です。

 

高さ方向の分割がうまくいかないときは、横並びの分割も検討します。窓、玄関、バルコニーなどの開口部ゾーンと壁のゾーンに2分割して、ストライプ模様をつくります。

分割したゾーンに窓を設けるときには、ゾーン全体を窓にするか、ゾーンに一つだけ窓を設けると立面はきれいにまとまります。

家の外観は、平屋を基本にして考えるとよいです。しかし、総二階で計画する必要がある場合もあります。そんな時は、壁面を上下に分割し、平屋を積み重ねたように作れば、デザインは整います。

1階と2階で、材料や色を変えると、境界が強調され、立面にメリハリが生まれます。

 

階の境目に庇をつけたり、オーバーハングで段差を設けたりすれば、分割ラインが強調され、外観が間延びして見えるのを防ぎます。

2階建ての時は、2階の窓は腰窓にするのが基本です。ゾーニングとしては、2階腰窓、2階腰壁、1階窓 とし、窓出ない部分は色や素材を変えて、分割ラインを強調します。

 

 

窓の周囲があまって、腰壁や下がり壁があると立面がひきしまらず、デザイン的によいものとはなりません。

窓を縦に揃えると引き締まります。

 

色だけでゾーン分けをすると、あまりよくないものができます。

多くの窓を設ける場合は、すべて正方形とか、すべて同一プロポーションの長方形とか、窓の形をそろえることで、統一感をはかります。

プロポーションの異なる窓が並ぶ場合には、大き目の窓と小さめの風抜き窓といった形にしていくのも手法の一つでしょう。

窓は断熱のかなめ

床、壁、天井、窓、換気の熱の収支計算をすると夏は、7割の熱が窓から侵入、冬は6割の熱が窓から逃げていく計算になるようです。住宅の外皮のうち、窓の占める割合は1割以下と小さいですが、出入りする熱の量は大きいです。

2階建ての場合、南側に軒を出せば2階の窓の庇は不要になりますが、1階窓には影ができないため、1階には庇などを必ず設置しましょう。遮熱型LOWEガラスなども検討材料にいれるとよいです。温熱環境を考えた場合、窓は南面に集中したくなりますが、1方向だけだと、室内は暗く感じます。家の反対側まで光がとどかないことと、窓と壁のコントラストがあって、暗いようです。光は、できるだけ、多方向からとりいれるように窓を計画しましょう。

 

窓を部屋の中央ではなく、天井や壁の入隅によせると、寄せた側の天井、壁に光がうまくあたり、部屋全体が明るくなります。南に大きく窓を設けるときは、東や西に縦スリット型の窓を設けると効果的です。

風車状に窓をつくれば、理想的な明るい部屋をつくることができます。

 

 

南側に隣家が迫るときは、2階やその上のハイサイドライトから採光して吹抜けで光を落とすのがいいです。ハイサイドライトは前面に障害物がないので、小さくても十分な採光が得られます。

 

 

あえて、北向きに設ける手法もあります。

毎日無料相談実施しています!

弊社では住宅診断、耐震リフォーム、デザインリフォーム、新築注文住宅等、幅広くご相談に対応させていただいております。相談は一切無料です。また弊社では、個人のお客様だけでなく、リフォーム等される法人の工務店様へ構造的な側面からお力になれます。お気軽にお問い合わせ下さい。